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無口で清楚なコーニャお嬢様、実は落語の話になるとグイグイくる  作者: 春風亭吉好
俺とコーニャお嬢様、オチケンを作ろうとする
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第14話 コーニャお嬢様、部室を見つける

「あそこのカギ……アタシが持ってる」


 落語研究会の部室を探していた俺とコーニャ。

 部室候補の数少ない宛である屋上の手前にある開かずの小部屋のカギを、なんと先程顧問になってくれたばかりのコスメ先生が持っているという。


「え、なんで先生が持ってるんですか? 英語研究室はここなのに」

「えっとね……、3年前はあそこ倉庫だったのよ。しかも殆ど使わない資料をしまっていただけの。潰しておくのは勿体無いって事で前教頭から当時新人のアタシに整理を頼まれたわけ」

「なるほど。でもあの部屋って今何も使ってないですよね?」

「んー、使っていないというか……」


 なんかさっきからバツが悪そうだ。言えない事でもあるんだろうか。もうちょっと詰めてみるか。


「それで、部屋を整理してどうなったんですか?」

「言われた通り整理したはいいんだけど、それを頼んだ前教頭は転任になってね。今の教頭に部屋をどうしますか? って聞いたら何かしら考えるからちょっと待ってくれって言われたまま……3年経って」

「なるほど……」


 前教頭が空き部屋を何かに転用しようとした。でもその矢先に転任が決まって、新教頭には引き継ぎができず、部屋の使い道がまだ宙ぶらりんになってるわけか。


「じゃあ部室として使えるんですね?」

「んーと、まぁ、そうねー」

「コスメ先生、さっきから言いづらそうなのどうしたんですか? とりあえずその小部屋を見せてもらっていいですか?」

「ハハハー、やっぱそうなるよねー。……わかった、着いてきてちょ」

「「……」」


 コスメ先生の不思議な態度に俺とコーニャはなんだろう? と目を見合わせる。

 それからコスメ先生と共に屋上のある4階へ。コスメ先生がカギを開けるとそこは……。


「なんだこれは……」

「あ……」


 俺とコーニャは絶句した。

 小部屋の扉を開けると中は四畳半くらいのスペース。そこに畳が敷かれ、棚には先生の使いそうなコスメがズラッと並ぶ。壁にはイケメンアイドルのポスターに並んで貼られていたのが……。


梅歌ばいか師匠……!」


 コーニャが壁に貼られた梅歌師匠のポスターにときめいていた。

 そう、畳にコスメ、アイドルに落語家となんだかカオスな空間だった。

 よく見ると化粧直し用の鏡の脇には千社札のシールが貼られているし、アイドルのCDと落語のCDが無造作に積み上げられている。


「先生……、もしかして私物化してました?」

「アハハー、結局この部屋を何に使うか言われないまま管理はアタシが任されてさー。ちょっとずつ私物を持ち込んでたらこんな事に。たまーにここでサボってたんだよねーアハハー……。お願い、他の先生達には言わないでー」

「いいですけど……部室として使わせてくださいね!」

「もちろん! だけどたまにここでサボらせてね」

「まぁ放課後以外は使わないしいいですけど……」

「やった! ありがとう、上戸っち、コーニャっち♪」


 嬉しそうに俺達の肩を叩くコスメ先生。こういう生徒との距離が近いところがまた親しみやすい。この先生が顧問で良かった。


「よかったな、コーニャ……って何をしてるんだ?」

「あ……」


 ふと見るとコーニャが乱雑に積んである落語のCDを熱心に物色していた。


「いえ、梅歌師匠が……お祖父様が持ってなかったCDもあって……」

「お、そのジャケットは10年前に出た名古屋の独演会を収録したCDじゃん。たしか『芝浜』と『時そば』が入ってるやつ」

「あ……合ってます。このCD持ってるんですか?」

「いや、CD出た時に梅歌師匠の落語会でももにジャケット見せられた事ある。その時に一度見たきりかな」

「えー、上戸っちよく覚えてるね。そのCDはアタシが落語興味持った頃に発売したのを買ったやつから5年以上前のだよ」

「あ、そうですよね。そういえば俺とももは小学生で、ももは落語家になる前だったな」


 あの頃はももは娘として受付の手伝いに来てたんだ。CD買え買えーってしつこかったな。


「ふーん、じゃあ上戸っちこれは?」


 そう言うとコスメ先生は他のCDを俺に見せてきた。


「あー、3年前に出たCDでしょ。発売した時にうちの売店にも並んでたんでチラッと見ました。確か収録は『死神』、『小言幸兵衛こごとこうべえ』、『天狗裁き』です」

「合ってる……。収録場所は?」

「んー、ジャケットの端っこに書いてあったな。えーと……」


 俺は記憶を掘り起こし、その時に見たCDのジャケットを画像フォルダを取り出すように脳内で再生する。


「神奈川県民ホールだ!」

「あったりー。すごーい。記憶力いいねー」

「……」


 コスメ先生が親指を立てて褒めちぎり、コーニャは目を見開いて驚いている。


 そう、俺は記憶力がいい。自分で言うのもなんだが人並み外れてだ。


「はは、良し悪しですよ」

「えー、なんでさー。いい事しか思い付かないけど」

「まぁ……色々あるんですよ」


 そう、記憶力が良すぎると覚えていたくもない事も覚えていてしまう。


「ま、俺の記憶はさておき。顧問、部室は何とかなったから後は……」

「部員……です……」

「そうだな、まぁコーニャがいる部活なら普通に集まるだろう」

「そう……でしょうか……」


 楽観的に構える俺に対して、コーニャは少し不安気であった。

 確かに部員集めはそう簡単ではなかった……。

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