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無口で清楚なコーニャお嬢様、実は落語の話になるとグイグイくる  作者: 春風亭吉好
俺とコーニャお嬢様、オチケンを作ろうとする
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第13話 コーニャお嬢様、顧問を見つける

 昼休み。俺とコーニャは早速コスメ先生と話すために英語研究室へ行ってみた。


「失礼しまーす」

「……失礼します」

「はいはーい。おっ、上戸っちに、コーニャっち。うぃーす」


 相変わらず軽いノリの先生だ。コスメ先生は生徒の苗字が名前に『っち』を付けて呼ぶ。

 この軽いノリを煙たがる先生もいるが、授業内容はいいし生徒人気も高いので黙認されているようだ。


「どしたーん? 今日は」

「単刀直入に聞きますけど……先生は落語、お好きですか?」

「へ? なんで?」

「いや、さっきの着信音の反応を見て。あれだけ聞いて梅歌ばいか師匠の出囃子でばやしって好きじゃないと気付きませんよ」

「なる。逆にさ上戸っちは落語好きなの?」

「俺は好きっていうか……。先生だと担任にしか言ってないんですけど寄席よせ席亭せきていの息子なんですよ」

「へ、誰が?」

「俺」

「マジでー!?」


 そう言うとコスメ先生が目を輝かせて立ち上がった。その興奮した様子は落語の話をしているコーニャの様だった。


「どこどこ!? どこの寄席?」

「えっと……上野の喜雀亭きじゃくていなんですけど……」

「ウッソ!? ヤバ! アタシ結構行ってたんだけどー。受付とかで上戸っちと会った事あるのかな?」

「いや、俺は殆ど手伝ってないので……。本当に好きなんですね」

「そーそー、アタシが高校生の時にさ学校寄席があったのよ。ウチの高校に来てくれてさ。その頃はバリバリのギャルで落語なんて知らなくて、サボろうかなと思ってたくらい」


 なるほど。普通だったら寄席に行かなそうな人も、学校に授業の一環として来る学校寄席なら聞くことになるだろう。サボらない限り。


「じゃあ聞いたんですね」

「そー。その時聞いた落語に感動しちゃって。それから寄席にも通ったなー。友達は若手の前座や二ツ目がカッコよかったとかしか言ってなかったけど」

「ちなみにその時の真打はもしかして……」

「さっき上戸っちが出囃子を流していた梅歌師匠。見た目は普通のおじさんなのに落語は超セクシーでさ。すっごい良かったの!」

「……」


 ふと脇にいるコーニャを見ると黙ってフルフルと震えていた。もしかしてこれは……と思っていた矢先にコーニャがコスメ先生にグイッと詰め寄った。


「ですよねー? 先生もわかりますか? 梅歌師匠は色っぽいですよね? ちなみに先生のお好きな梅歌師匠の演目はなんですか? 『紺屋高尾こうやたかお』? 『明烏あけがらす』? 『芝浜』ですか?」

「うわっ、ビックリした。いきなりグイグイくるじゃんコーニャっち」


 無口だと思っていたコーニャがいきなりグイグイ来たから流石のコスメ先生も面を食らっている。わかる、俺もそうだった。


「えーと、梅歌師匠だったら『厩火事うまやかじ』がいいかなーって」

「あー、あれもいいですねぇ。『厩火事』のおカミさんの可愛らしさも出ていて他の師匠とはまた違った味わいがあって。それからそれから……」

「コーニャ、落ち着けって。コスメ先生ビックリしてる」

「あ……ごめんなさい……。私は夢中になるとつい……」


 コーニャは一歩下がり、赤面した。まぁ相手は落語好きだから驚きこそすれコーニャに悪感情は持たないだろう。


「コーニャっちって落語の話になるとこんな感じなんだ。ウケるー」

「はぅ……」


 すっかり赤面して俯いたコーニャ。まぁコスメ先生も笑顔で言っているので悪い雰囲気ではない。とりあえず話を戻そう。


「それでオチケン……落語研究会を作ろうと思ってまして……」

「へー、落語するの?」

「いや、どちらかと言うと落語を聞いたり、感想語ったりするような」

「面白そー。それで?」

「それで、コスメ先生に顧問をやっていただけないかと……」

「うぇ? アタシ? そっかー、そういう流れかー。うーん、オチケンは面白そうだけど顧問は責任がなー」

「喜雀亭の割引券5枚付けます」

「え」


 コスメ先生の眉がピクっと動いた。もうひと押しだ。


「割引券10枚に限定手拭いと扇子もセットで!」

「やるー!」


 コスメ先生が立ち上がってOKサインをした。割引券も手拭いも扇子もうちの倉庫に転がっているものだ。まぁ常連さんへの還元と思って親父に内緒で渡してしまおう。


「ま、顧問になるのはいいとして。まずはどうしたらいいの?」

「あ、まだ正式に部活としてスタートするには条件があって。な、コーニャ」

「は、はい……。あと部室と……部員3人……」

「にゃるほど。部員はあと1人ね。それは後で集めるとして部室ねー」

「部室に心当たりありませんかね? 確か部室棟は一杯で入る余地が無さそうで……」


 そうなのだ。うちの高校には校舎とは別に部室棟という建物があるのだが既にある運動部、文化部で一杯になっている。どこかの部活が無くならない限り空きはできない。

 生物部なら生物室、化学部なら化学室と顧問の先生の許しがあれば専門教室も部室として使えるが……。


「いやー、この英語研究室は他にも英語の先生が使うからさー。流石に部室にするってわけにはいかないのよねー」

「そうっすか……」


 一縷の望みだったのたがダメらしい。他に方法はないものだろうか。


「……あの!」

「どうした、コーニャ?」

「えと……校舎の4階に……開かずの部屋が……」

「あー、あったな」


 開かずの部屋。校舎の4階。実質は屋上なのだが屋上へ出る扉の手前に生徒が誰も入れない小部屋がある。授業にも使わないし何の部屋かと思っていたんだけど。


「あそこって使えないのかな?」

「あー、あそこねー……」


 するとコスメ先生がバツが悪そうに切り出した。


「あそこのカギ……アタシが持ってる」

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