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無口で清楚なコーニャお嬢様、実は落語の話になるとグイグイくる  作者: 春風亭吉好
俺とコーニャお嬢様、オチケンを作ろうとする
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第12話 コーニャお嬢様、顧問を探す

「部活を作りたいならば必要な条件が3つあります」

「3つ……?」

「まず顧問の先生を置くこと。次に部室がある事。そして部活を作って1ヶ月以内に部員を3人以上にする事」

「なるほど……」


 生徒会長の示した条件は至極当然のものだった。

 まず部活をするのは生徒でも責任ある大人の顧問は必要だろう。

 次に部室。放課後の教室で語り合っているだけなら部活である必要はないし、それ以前に教室はみんなのものだ。

 そして部員か……。コーニャの人気を考えればすぐに集まりそうな気がするが、コーニャ自身というより落語に興味ある生徒を集めなくては意味がないと思う。もちろん後から興味を持ってもらってもいいんだろうけど。


「わかった、なんとかしてみるよ。な、コーニャ」

「はい……。がんばります……」


 コーニャが小さく拳を握る。コーニャなりに気合いが入っている様だ。


「ふん……。まぁ、顧問、部室はともかく、どうしても、どうしても部員が足りませんってなった場合は……」

「なった場合は……?」

「わ……フン! なんでもありませんわ。とくにかくまずは顧問と部室を探す事ね」


 生徒会長は何かを言いかけてから赤面しソッポを向いた。一体何を言いたかったのだろうか。


 それから生徒会長とコーニャはまともに話す事なくそのまま生徒会室を出た。2人の関係性はあまり突っ込まない方が良さそうだ。


「よし、とりあえずは顧問だな」

「……どうしましょう?」

「んー、とりあえず明日担任のスズセンに聞いてみるか」


 俺たちは翌日のホームルーム後に担任のスズセンこと鈴木先生に声をかけた。


「先生!」

「んー、上戸うえと神宿かんじゅくか。どうしたー?」

「単刀直入に言いますけど、オチケン……落語研究会の顧問になってくれませんか?」

「落語ー? 俺、落語なんて殆ど聞いた事ないぞ。あ、上戸の家が寄席よせなんだっけ。それでか?」

「ま、まぁそんなところなんですが。難しいですかね?」

「詳しくない先生が顧問やるのもどうかと思うぞ。そもそも俺はバスケ部の顧問があるし、それに今は部活が多くて殆どの先生が何かしらの顧問してるからなぁ」

「そうですか……。落語好きな先生っていませんかね?」

「さぁ、聞いた事もないな。力になれなくてすまん。おっと、次はB組で授業だから。じゃっ!」


 そう言ってB組へ向かうスズセン。ダメだったか。確かにうちの高校は先生の人数に近い部活動の数がある。顧問の掛け持ちも大変だろうし、仮に顧問をしてなかったとしても……。


「落語を詳しい先生か……。やっぱり何も知らない人が顧問なのはダメかなぁ」

「……できたら落語の好きな先生ともお話したいです」

「だよなぁ」


 生徒なら落語の布教の意味をこめてこれから興味を持って貰えばいいかもしれないが、顧問となると最低限の知識や興味は必要か。好きでもない先生に無理やりやらせるのも悪いし。


「しかし落語を好きな先生なんていたかなぁ。一人一人に聞くのも大変だし」

「……落語が好きってわかる合図とか……?」

「なんだそりゃ。落語が好きってわかる合図……あ!」

「……!?」

「あ、ゴメン。大きな声を出して。いい事思いついたんだ」

「いい事……?」


 それから1時間目の授業が始まった。その最中に俺はスマホの画面を()()()タップした。


 チャラチャン、チャラララ、チャラララチャンチャン♪


「おい、誰だー。スマホの音を鳴らせたのは?」

「あ、俺です。すいません。マナーモードにするの忘れて」

「まったく。スマホ持ち込みは校則で禁止されていないが、ちゃんと音の出ないようにしておくように」

「はーい」


 俺がわざと流した着信音は梅歌ばいか師匠の出囃子だ。

 そう、落語家の出囃子でばやしを流して反応するかで落語好きかどうかジャッジしようと思ったのだ。

 今の先生は特に触れなかったから落語に興味なしと……。


「……梅歌師匠……」


 隣のコーニャがポーッとしている。お前が反応してどうする。

 俺は続く2時間目、3時間目も同じ様に出囃子を流した。


 チャラチャン、チャラララ、チャラララチャンチャン♪


「スマホの音は切っておけー」

「はーい」


 チャラチャン、チャラララ、チャラララチャンチャン♪


「なんだ、この変な着信音は?」

「俺です。すいませーん」


 2時間目、3時間目も出囃子に対しての反応はなかった。うーん、そもそもこのやり方が遠回りすぎるかな。

 ちなみにクラスのみんなには授業中に毎回スマホを鳴らすからスルーしてくれと言ってある。俺のささいなイタズラと思っているんだろう。

 授業の邪魔をするのは悪いなと思いつつ4時間目も試す事にした。


「ういっすー。今日は仮定法について勉強するね。仮定法ってなんだかわかるー?」


 このノリの軽い4時間目の先生は英語の小須芽衣子こすめいこ先生。通称コスメ先生だ。元ギャルで見た目も中身もまだその面影が残っている。

 ただ外語大出身で大変優秀らしく教え方も上手い。その親しみやすさもあり男女問わず人気の先生だ。

 まぁこの先生は落語とは無縁そうだが一応流してみるか……。


 チャラチャン、チャラララ、チャラララチャンチャン♪


「おっ、梅歌師匠の出囃子じゃん! 渋いねー。でも授業中はマナーモードにしなきゃダメだよ」

「……!」


 目を見開いて俺を見るコーニャと目が合う。まさか元ギャルの先生が落語に興味があるかもしれないとは……。

 昼休みに早速アタックしてみよう。

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