ニコラと世界の神。古の契り。
昔、俺は人間と神のハーフとして産み落とされた、はずだった。
だが、実際の俺は「創造神・デウス」がこの世界のループを設定する際に生まれてしまったバグだ。
本来はループを設定し、その世界に産み落とされるはずの俺が同時に発生した結果、俺は世界に弾かれた。
弾かれた、というのは物理的なものではなく、いわばこの世界のものとして認識されない存在、になったのだろう。
この世界の物は俺を避けるし、俺からもある程度の干渉までしか許されない。
「ああ、何故お前のような……」
神は俺の存在を嘆いたが、産み落とされた事実は変わらない上に、放っておいても何も出来ない故にそのままにした。
デウスによって設定されたループは一定の技術の発展を遂げた際、まるでブレーキのように崩壊へ導くように世界が認識し、そうなるように自然が、世界が仕向けるようになる。
だが、俺は干渉できない。
無力なのだ。
やがて、本来は俺がそのポジションを担うはずだった神と人間のハーフは別のやつが役割を継いだ。
デウスは彼をマキナと名付けた。
マキナはやがて、神の意思に背くようになり、自らの血族を必死の思いで異世界へ飛ばした。
それが、こちら側で言う「異世界人」がやってくる世界。
だが、デウスは最後の抵抗でマキナの血を引く血族は皆、世界のリセットに巻き込まれるようにして召喚されるように呪いをかけた。
そこからは、俺は見ているだけだった。
人間は、自力で技術の発展と繁栄をした。
人間たちの技術が神の設定するルールに触れた際、「歪みが生じた」。
本来は「こちら側」の技術の発展をブレーキするように設定されたそれと、「リセットの付近で異世界人が呼ばれる呪い」はやがて、混ざりあっていく。
そう、最初のリセット時に呼ばれた異世界人によって、「異世界の技術」が持ち込まれたのだ。
本来の想定ではない為、デウスは焦ったのだろう。
異世界人はみな、こちらで戦争に巻き込まれて死ぬように、そう仕向けて、彼が世界を壊すために技術を与えた、と嘘の情報を散布した。
そうしてデウスの支配とマキナの最後の抵抗がぶつかり、肥大化を続ける中、それは起きた。
「スーベルニカの台頭」だ。
デウスは人間を、他国の王たちを使い、このスーベルニカの目的を全力で潰そうとした。
そして、この時に呼ばれていたヒグチという男。
この存在もまた、ひとつのバグを生み出した。
「スー、義体があればニコラはこちらに干渉出来るのではないか?」
「ふむ……確かにニコラはその肉体が反発作用を起こしこちらとあちらの狭間にその存在が長年の蓄積で固定されてしまっているからな」
「あちらの技術とこちらの技術の粋を集めたこれは、いわばその中間とも言えるんじゃないか?」
ヒグチは優秀な男であり、スーベルニカという男の思想を、力を、全てを理解し、共に歩む友として生きることを決めた。
その男が、俺をどうやらこの世界に固定する為の楔を作れる、そう言い切ったらしい。
「ニコラ、マキナって人の血は俺にも流れてるんだろう?」
「そりゃな。こちらに呼ばれてる時点で血縁であるのは否定しようがないだろう」
「……居るんだよな、こっちにも、マキナから繋がる血筋が」
「……ぬ!ヒグチ、そういう事か」
そして、その研究がまずかった。
デウスの逆鱗に触れたのだ。
ニコラ、俺をこちらで活動できるようにするには不都合が多すぎたのだ。
「デウスの血から繋がる血族たち……マキナへと終着する血、間違いなく、ヒグチ。君の次に呼ばれる存在は「デウス=X=マキナ」として存在することになるだろう」
「それって本来は機械仕掛けの神だよな?出てきたら全部が終わるっていう」
「そうだ。機械仕掛けではないが、きっとその存在はこのループする世界を否定し、破壊し、この世界の先へ進むための存在になるだろう」
ヒグチはデウスの最後の抵抗時に生まれたマキナから連なるこちら側と血がこの世界の空気に触れることで発現する記憶を読む力、これをヒグチが完全に使いこなすことを恐れたのだ。
ループの記憶を後世に残せば、後世の人間が確実にループを無くすために動くだろう。
だから、ヒグチを殺したのだ。
だが、それが唯一の誤算であった。
俺の義体を作る過程で、バイオ技術が発展。
スーベルニカは非人道的と非難される覚悟で、ヒグチの脳を培養基で保存、そして記憶を読む力も能経由で擬似的に使えるようにした。
過去、ここまで科学が発展したことはないだろうし、これほどまでに天才が生まれたことはない。
だから神は次はスーベルニカを殺そうとしたのだろう。
神の手がスーベルニカに届きそうな瞬間、異世界人召喚が起きたのだ。
そして……俺はヒグチのいうその男こそがこの世界の「デウス=X=マキナになる」その言葉を信じ、ふたりとの約束を果たすため、彼をスーベルニカに辿り着かせる為、暗躍した。




