異世界回帰。循環する魂。
突然現れたニコラは軽く会釈したあと、まるで自慢げに僕の疑問に回答するように話した。
「この世界で死ぬと魂は元の世界へ帰るのは当然だが、では肉体はどこへ行くのか」
「ヒグチの肉体というか……脳みそは消えたと言うけど」
「元の世界へ帰った……とは言い難い」
それは、元の世界へ帰れる可能性を薄々諦めていた僕にとってはトドメと言える一言だった。
死んでも元の世界へは戻らない。
「そもそもの話、呼ばれる異世界人ははるか昔にこちら側からお前の世界へ逃げ延びた血族達だからな」
「元々この世界の物だから、この世界の一部として回帰する……と?」
「Exactly。魂はマナへ帰り、帰り道を失った肉体はこの世界のものとしてもあちらの世界のものとしても受け入れられず、狭間へ消える」
「ま、まってどちらのものでもない、って?」
「逃げ延びた血族達が、いつかこちらへ戻った時に呪いのように呪いをかけた。あちら側の情報を残さぬよう、どこでもない狭間へ消えるように」
「でもあちら側の知識でこの世界は発展したんじゃ」
「彼らの恐れたのはそこでは無い。血だ」
ああ、ここに来てまた血統の話へ戻るのか。
「テオ、お前をはじめこちらに招かれる人間はいわばこちらとむこうのハーフだ。そして、お前の代ではおそらくはこちら側の血はほとんど薄いだろうな」
「……ま、まってよ。こちらの世界から逃げたのに、神への対抗策は無くそうとしたってこと?」
「彼らは神が施したそれに気づけなかったのだろうな。皮肉なことに、逃げることも子を残すのも神の想定内だったってことだ」
「血」が残ることが問題であり、今のスーベルニカなら間違いなくヒグチの遺体等から血液を採取し、そこからクローンなりなんなり作ることは容易だろう。
だが、神としてもそれは面白くない。
彼らに気付かぬよう、あちら側の人間がこちらで死ぬと、どこでもない場所への回帰をするように施した……と。
「全部、神の手のひらの上……と」
「それほどまでに怖いんだよ、人間の反逆性が」
神は人間を作る時、ループを作る時、反逆を恐れた、ということ……?
「なおさらこの状態は詰みに近いんじゃ……?」
「いいや、詰ませない」
「何故そこまでして……」
「神がこのまま俺たちをループに陥れ続ければ、この世界には「その先」がない。それは、人類にとって苦だ」
ある地点で全てがリセットされるループ。
だからこそ、ループを乗り越えた先、「その先」がない。
だが、それはきっと人類をもっとも苦しめるだろう。
どれだけ頑張っても、どこかで頭打ち……それが分かってしまえば、ループなどせずともいずれ諦める、に行き着くだろう。




