47話 『大切な鍵は、彼女が連れてくる』
節目です。
かなーり短いです。
そして、章終わりになります。
「……おせぇ」
「なぁ」
遅い。
何がって、エリザ嬢の帰りが、だ。
今日は非常に珍しい事に、昼間枕を使う者がいなかった。
まぁ俺に紅茶を零したことが原因なのだろうが、ユリアさえも使わないと言うのは珍しい気がする。 それが普通ではあるんだけどな、本来。
エリザ嬢の部屋には時計があって、数字こそ読めないが多分12刻み。 日の落ち加減と針の位置で大体の時間が俺にもわかるのだが……。
いつも帰ってくる時間を、大きく過ぎている。
「何かあったんじゃないのか……って?」
「心の声に出す前に言うなよ」
「もうすぐアンタと一緒になって1年なんだから、わかるわよそれくらい」
俺はお前の心全く分からないんだが?
「ま、この子がここに居て……あの鳥の使い魔が帰ってこない。 そしてエリザがフランツへの気持ちを再確認した……これだけの材料がそろってるんだもの……ジェシカ・ライカップが事を起こす可能性はバリ高よねぇ」
「やけに他人事だな。 エリザ嬢が危ないってのに……魔法でなんとかできたりしないのか?」
「私はあくまで枕に込められた精神体だしぃ? 本体だって……もしエリザが死んでいたら悲しんでこの国を壊すくらいはするだろうけど、それくらいよ。 私は生まれてから1年も経っていないけれど、本体は数万、数億を生きる化け物よ? 愛した可愛い子なんて何百人と居たし……エリザは、その中の1人でしかないもの」
「……お前の心持ちは理解したくもねぇ。 だけど、そういうスタンスでも構わねえから……エリザ嬢を守っちゃくれねぇか?」
身体を折る。
「あら? やけに殊勝ね?」
「元から無い頭を下げるんだ。 殊勝にもなるさ。 それで、守っちゃくれねぇか?」
「んー……残念だけど、今の私には無理なのよ。 さっきみたいに枕に触れてくれたら干渉もできるのだけれど……あくまで意識体、精神体でしかない私は、現実世界に魔法を飛ばすなんてことは出来ないわ」
「……そうか」
使えねぇな、コイツ。
「アンタだって同じでしょ? ……ま、別にアンタを慰めるわけじゃないけど……エリザなら、平気よ。 あの子は強いし……何より、周りに沢山味方がいるもの」
まるで幼子を撫でるかのような手つきで枕を撫でてくるロザリア。 そこ頭じゃなくて肩だがな。
「めんどくさい身体してるわねぇ……」
「好きでなったわけじゃねぇ。 ……ま、お前の言うとおりか。 エリザ嬢なら平気平気」
せめて想像の中だけでも、平穏無事にあってほしい。
だって、枕には、夢を見せる事しか出来ないのだから。
「……」
ダァン!! と勢いよくエリザの部屋の扉が開いた。
「枕さん!!」
既に日は落ち、月が高くへ登っている時間。
普段であれば絶対にしない、はしたないとされる叫び声をあげて。
エリザは、自身のベッドへと……大きくダイブする。
「エ、エリッ」
――その腕に、男の首を持ちながら。
「寝るですの!!!!」
「……」
既に寝ている……否、押し付けられた事によって、締まって落ちたという表現が正しいだろうか。
エリザに首を抱えられながら連れてこられた男――フランツは。
生まれてこの方感じた事の無い程の苦しみと温かさの渦の中に、その意識を落として行った。
寝るですの!!!!!




