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夢見の良い枕  作者: 劇鼠らてこ
前章
47/59

46話 『金銀財宝より家の鍵の方が価値が高い』  

はっぴーにゅーおめでとうございます。


「猫がこの家に明確な目的を以て来た2回目ってのはいつだ? 目的は?」

「今日よ。 目的は逃避。 ジェシカ・ライカップに用済みと判断された所を逃げてきた、って感じね」

「……」



 用済みとロザリアが言ったところで、猫の身体がビクっと跳ねる。

 やっぱり話わかってんだな……。


「逃げてきた? ……その前に、なんでお前そんなこと知ってんだ? 俺と一緒の存在だってんなら、こっから動けやしないだろ?」

「この子が話してくれたのよ。 心が純粋じゃないと動物の声は聞こえないの」

「……そういう魔法があるんだな」


 コイツの心が純粋であるはずがないのだから。

 

「ま、そんなトコね。 それで、他に何が聞きたいのかしら? このロザリア先生が答えてやらない事もないわ」

「その猫が用済みと判断された理由はなんだ? いや、そもそもこの猫は何が出来るんだ?」

「んー、物質を透過したり、長距離を一瞬で移動したり、大きな魔獣の姿になったりかしらねぇ。 ほら、エリザの夢の中のスクアイラが言っていたでしょう? 尾行していたのにいつのまにか撒かれていたって。 あれ、どこかの侍女だったかしら?」

「誰でもいい。 それがコイツの能力、って事か?」

「ええ、そうよ」



 物質透過に瞬間移動(テレポート)ね……。 魔法ってより超能力だな。



「そんな……あー、便利っつーと道具みたいで嫌な言い方になっちまうけど……そんな能力を持ってるコイツを用済み扱いするのはどういう了見なんだ?」

「さぁねぇ。 このコが言うには「さからったから」らしいのだけど……私ならこんなかわいい子、捨てたりしないわ。 ねー?」

「なぁぅぅ」



 ロザリアの腹に頭を擦りつける猫。

 ……おかしいな、羨ましいぞ。 



「逆らった……何か命令されて、それに背いた結果……あのでっかい鳥に追われて俺のトコまで来た感じか?」

「なぅ」

「そうだってさ」



 いつのまにか、という他ないのだが……体の傷が癒えてきている猫が頷く。 ロザリアが治しているのか?

 


「このコは魔獣よ? 魔獣が死ぬまで暴れ続けるってのは嘘じゃないの。 何故なら、完全に命が停止するまで傷が癒え続けるから。 コレも私が治してるわけじゃなくて、このコが勝手に治ってるのよ」

「はへー。 魔獣ってすごいんだな」

「なーぅ!」



 これは自慢か? ……いや、違-ぅ! って言っているように見える。

 猫の言葉わかるコンニャクが欲しい。



「この子は元々魔獣じゃなかったらしいけどねぇ……。 その辺りは本人……本猫? から聞くか、夢で見るしかないんじゃないかしら?」

「じゃあお前が聞きだしてくれよ。 俺は猫の言葉わかんねーんだ」

「なんでアンタの為にそんなことしなきゃなんないのよ。 エリザにお願いされたなら、やってあげない事もないけどぉ~?」



 こいつとエリザ嬢を引き合わせる……?

 

 危険な予感しかしない。 キケンな予感もするゾ。



「ん、じゃあいいや。 猫、お前が魔獣になった経緯を見せてくんねぇ?」

「なーぅ?」

「ほら、あっこにあるスクリーンに念じてだな」

「なぁお」



 あっれー?

 スクリーンがピクりとも反応しない。


 なーんでじゃろか。



「そりゃ『夢見枕(あんた)』で寝てないからよ。 あくまで『夢見枕(アンタ)』は寝た人間の夢を再生して、使用者を魅了するってマジックアイテム。 だからこの空間にいるだけのアンタ自身や私の夢は見れないでしょ? このコにしても同じこと」

「はー。 シルバーアイズのは?」

「あれは多分、そのまま使えば『安全な場所で保存された記憶を付与する』とかいうものでしょうねぇ。 アイツにとっても『夢見枕』の存在はイレギュラーだろうから……。 ま、いい感じに噛み合った結果じゃない?」

「なるほどね……」



 つまり、(こいつ)の夢を見るには一度(こいつ)をこの空間の外に出して、現実世界の(おれ)で寝かせる必要があるって事か……。

 しかしなぁ……。


 ユリアやペイティにバレずにそれが出来るかっていうと……。



「なーぉ?」

「厳しいよなぁ。 あいつらの中では『群青と白の猫(おまえ)』は完全に敵だから……一度あの2人にもこの枕で眠ってもらって誤解を解かにゃならん。 が……」

「なに? 私のかわいさに見惚れた?」

「可愛いのは認めるが見惚れやしねぇよ。 いやさ、お前とユリアって仲悪かっただろ? まともな話が出来るんだろうかと」



 少なくともペイティの夢では争い合っている姿しか見なかった。

 ペイティは抑止にゃならんだろうし、ロザリア(コイツ)ユリア(アイツ)をこの空間で一緒にしたら……まくら投げ(壮絶)が開始されかねん。



「そんなこと? 別に、私がまた隠れてればいい話でしょ? 忘れたの? 今まで私が居なかった事」

「あ? あー。 そういやお前さんずっとどっかにいたんだったな。 なんだ、隠れられるんだったら問題ないか……。 話の途中で出て来たりすんなよ?」

「んー、確約は出来ないなー。 例えばユリアやペイティちゃんがこのコに危害を加えようとしてたら……私はこのコを守りに出てくるかも」

「俺が守れ、って事ね。 しかし妙だな? エリザの事でもないのに……そんなに気にかけんのか、この猫の事」

「それはこのコの夢を見てからのお楽しみ、って所ね」



 フフフとロザリアは妖しく笑う。 言い方からしてコイツ、知ってんだな……。

 なんつーか……面倒な女って言葉が一番似合う気がしてくるぜ。



「枕にどう思われたってどうだっていいわぁ。 ほら、そろそろアンタの洗濯も終わるみたいよ?」

「ん、そりゃわかってっけど……相変わらず力つえーなぁユリア。 なぁ、こういう時の痛覚遮断みたいなことはできねーのか? 枕の機能としてさ」

「さぁ? ラン婆が創ったからにはそういう機能もあるのかもしれないけれど……私は何にも感じないし? ま、いいじゃない。 ユリアだってそれなりに美少女なんだから……10代女子にもみくちゃにされるなんて中々経験出来ない事でしょ?」

「もみくちゃってかゴキグチャなんですがそれは」



 痛いだけなんだよなぁ……。

 まぁ触覚と痛覚は切り離せないか。


 エリザ嬢達の温もりを捨てるか、毎日の浸水&痛みを我慢するか……。


 答えは決まってるな、うん。 そもそも捨て方わかんねーし。



「ってあれ? ロザリアは外の世界見えてんだっけ?」

「誰があの鳥凍らせたと思ってんのよ。 アンタと違って見える視界は一定範囲内だけだけど……しっかり見えてるわよ。 ふふ、エリザのネグリジェ姿なんて本体は見た事ないだろうし……アンタの温もりの技術だけは褒めてあげるわ」

「そりゃどーも。 お前に見せてやるつもりであっためてたわけじゃないけどな。 ……そうだ、ネグリジェといえば……この空間で取り出せる物ってのは、どんな法則があるんだ?」

本体(ロザリア)がエリザ攻略に必要だ、って思ったものかしらねぇ。 私という意識を込めた後に決めた品々だから、私は良く知らないわ。 本体(ロザリア)が知らない物や不要だって思ったものは取り出せないはずよ」

「ふーん……」



 ……。


 チャリン、という音がして、この世界に似つかわしくない金属の輪……所謂、手錠って奴が出現する、

 OK、余計な思考は捨てようか。 コイツやべぇ。



「あー、やっぱり入れてたんだ。 流石私。 なら、猿轡とか首輪とかも――」

「猿轡」

「んー!?」



 余計な事を口走ってR18に行きそうだったので、ロザリアの口元に猿轡を出現させる。

 ふ、どうだ喋れまい。 これなら魔法も使えまい。


 あれ、なんで掌をかざしてるんで――。



「んー!!!」

「あふん」



 詠唱みたいなの要らないのね……。


 黒縁眼鏡のおさげ少女が猿轡嵌められた顔で怒ってこちらを睨んでくるのはまぁご褒美だったかもしれない。


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