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4.能力―3

 単純な事だった。宇宙人から奪う力の話しを含めて、砂影の方が清瀬よりも身体能力が高い、という、そんな、単純過ぎる話しだった。

 砂影の右腕に装備される刀が清瀬が振り下ろした刀を打ち上げるように弾いた。金属同士が衝突する時の特有の鋭利で甲高い音が炸裂し、そして、次の瞬間には、砂影の刀が清瀬の身体を上と下で二分しようと、真横から迫っていた。左から、右へと一気に流すように振るわれた刀は、そのまま清瀬の身体へとその刀身をめり込みさせ――た、その瞬間だった。

 清瀬が、消えた。

「ッ!?」

 突然の自体に、砂影の判断は一瞬遅れた。判断は遅れてこそいたが、振るった左手の刀の刀身に、僅かながら真っ赤な鮮血が付着しているのは確認していたし、何より、左手には人を斬ったという感触が残っていた。

 が、しかし、次の瞬間、砂影が気づけたのは背後にいるであろう何かの気配。

 振り返る暇はなかった。

「相手がこんな目立つ能力使ってたらよォ、そりゃ能力を手に入れた瞬間、理解出来るわなァ。……この速度じゃぁ、お前の能力も反応が追いつかないだろうが」

 言葉半ばで、砂影の腹部を背後から貫く刃が、あった。

 砂影の視線がゆっくりと自身の腹部へと落ちた。当然、見えてきたのは、自身の腹部を貫く一本の、真っ赤に染まった刃の姿だった。

「なっ……がっ、」

 理解はした。

 ――瞬間移動。

 今の一瞬、挙句、刀が肉に食い込んだその瞬間に突然砂影の背後まで移動する事の出来る能力なんて、その程度しか思いつかなかった。当然、砂影もその可能性を考えた。

「ッあ」

 砂影の膝が地面に落ちた。そこで、

「俺の目とお前の命。平等かねぇ」

 清瀬は不気味に笑いつつ、そして、刀を思いっきり、振り切るように火k抜いた。刀の振るわれた軌跡を描くように砂影の鮮血と肉片が跳ねとんだ。同時、砂影の両手から刀が落ち、砂影の口から涎混じりの粘着質な鮮血が溢れ出した。

 それでも、まだ、砂影は倒れなかった。膝こそ地に落とし、膝下に口から漏らす鮮血の跡を浮かばせるが、それでもまだ、負ける事は出来ないという意思から、崩れ落ちる事はなかった。

 だが、清瀬は言った。俺の目とお前の『命』、と。当然、殺す気しかなかった。

 砂影が首だけでなんとか振り返って背後で不気味に笑む清瀬の顔を確認した。見えたのは、宇宙人が人間を見下すのとはまた違う、人を見下し、悦に浸る場違いで不気味な笑みだった。

「俺の勝ちだ。お前の能力も発動させずにダメージにしちまえば問題ないって事」

 そう言って、清瀬は砂影の向いている方の肩に、刀を置いた。まだ、振り下ろさない。肩を叩くように数回跳ねさせた後、そして、最後に、告げる。

「……お前は殺さなきゃいけない」

 告げたのは、

「なッ!? にぃ!!」

 砂影だった。

 振り向いたまま、肩に置かれた刀に一切目線を送らなかった砂影はただ、真っ直ぐに清瀬を見上げて、嘲笑うように、また、仕返しするように、演技めいた口調で、そう伝えた。

 その言葉の瞬間、清瀬の表情から笑みが消えた。更に同時、清瀬の視界から、砂影の姿が消えていた。

 ――が、しかし、次の瞬間、砂影が気づけたのは背後にいるであろう何かの気配。

 その気配を感じたその瞬間、既に砂影は動いていた。

 清瀬は、砂影の能力を封じきれないと判断したのだろう。なにせ、砂影の能力はある程度の範囲内に無差別に影響を及ぼすモノだ。故に、高無にも誤解を生じさせてしまった。

 だからこそ、清瀬はタイミングを見計らい、自身にとって最良だと思えるタイミングで瞬発力、機動力という面で最強とも言える瞬間移動を使用し、砂影が能力を発動するよりも前に砂影に致命傷を負わせる、という作戦に出た。

 だが、砂影は超えていた。

 砂影の反応は、恐ろしく早かった。

 当然最初こそ、能力は使わないで攻撃の応酬を交した。正確には、腹部のダメージが酷く、能力を行使しきれないと判断して、戦っていた。だが、戦闘の渦中で砂影の身体はその超人的な能力により回復した。完治とまでいかなくとも、能力を冷静に、十分に行使できるまで回復していた。

 能力が使用出来る。そして、反応が間に合う。

 つまり、砂影は清瀬の姿が目の前から消えたその瞬間には既に、能力を発動していた。清瀬の能力が瞬間移動である、と推測したのはその能力を発動した後だったが、攻撃が来る、という危機感を抱いたのは最良の判断だった。

 その瞬間には既に、砂影は清瀬の目の前にはいなかった。

 砂影は清瀬が『見ているモノ』と対話し、刀を振るっている間、ずっと、彼の背後から、彼を冷たい視線で見ていた。完全に清瀬が油断仕切るその瞬間を、ただ待っていた。

 ――幻影。

 そう分類されるその能力は、単純な話し、幻覚を見せるガスをばらまく兵器、に、砂影がなる事である。

 範囲指定、目標指定して、幻覚を見せる事が出来ないのは、砂影が中心になって一定のエリア内の生物に無差別に幻覚を見せてしまうからである。それが、高無が砂影が死んだ、と勘違いした理由であった。

 砂影は容赦しなかった。

 男が振り返るよりも前に、砂影は二本の刀を交差させ、その先に清瀬の首を挟んでいた。そして、振り返る、という動作が見えたその瞬間、それを、更に交差させて戻すように、完全に、刀を横に振るった。

 肉が切断される音、鮮血が吹き出す音、飛んだ頭が地面に落ちる音、様々な音がこの静かな村に響いた。が、そんな事は砂影にとってはどうでもよかった。

 砂影は清瀬の首を切り落としたその瞬間には、すでに振り返って崩れ落ちる清瀬の死体には既に背を向けていた。

 これが、能力。敵からは生き残るための力を奪える。敵の持つ、生き残るための能力(ちから)である。

 宇宙人共は、変身能力をデフォルトで持つ。これは、『一部の人間』の間では、自らの星以外を乗っ取る際に、その星の生物に紛れて内部に容易く進入するため、と言われていたり、また、自在に変身し、その目的のため(今回の場合は殺傷)に変化するために、身に付けた能力だという話しが流れている。

 が、それ以外に更に、個々のオリジナリティとして、様々な能力が存在する。瞬間移動、飛行能力、透明化、電撃、炎化、視認能力、等々。様々なモノが存在すると言われている。一部は、実際に確認されている。

 このテストでは、それを人間が奪う事に重点が置かれている。

 そうなのだ。人間は、宇宙人の能力(オリジナリティ)を奪う事が出来る。

 その正確な条件は未だ『そちらの識者や研究者』にも解明されておらず、分かっているのは、宇宙人が死ぬ際、近くにいれば、死にゆく宇宙人の能力を、奪える『可能性』がある、という事である。

 可能性、という話しがある通り、宇宙人が目の前で死のうが、能力が奪えない場合もあり、その条件等は未だ解明されておらず、この現実を知るモノ達は、『波長が合うか合わないか』とよく比喩表現で口にしている。

 つまり、砂影も、清瀬も、成城も、霧崎も、そして、この島にいるという霧崎とは違うもう一人のテスト合格済みの人間も、皆、宇宙人の力、生き残るための力、つまりは宇宙人と戦う力を手にしている、という事である。

 砂影が清瀬を殺した。

 人間側、生存者は残り八名となった。最初の死体と、清瀬である。更にテストクリア済みである霧崎ともう一人が島にはて、挙句、まだ出会えていない人間が二人いるため、未だ人間側は一○人残っている事になる。

 つまり、未だ、宇宙人は人間側を一人しか殺していないのだ。最初の、あの手斧の持ち主の男だけだ。

 この結果に、

「今回のテストは最後だというだけあって、素晴らしい状況に陥っているいではないか!」

 歓喜するは、このテストのゲームに参加する者達である。

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