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4.能力―4


 このテストには被験者の誰が生き残るか、人類、宇宙人のどちらが勝利するか、誰がテストに合格するか、誰が一番宇宙人を倒すか、どの宇宙人がより多くの人間を倒すか、更には、誰がどの宇宙人の能力を手にするか、等の多数の条件設定の元、この事実を知る人間の間で賭け事が行われている。これが、テストならずゲームである。

 このゲームにはテレビメディア等で名や容姿まで取り上げられる為政者や一部の権力者までもが参加しており、人の想像の出来ないような莫大な掛金が動く。掛金一つで、国一つ動かせる程の、である。

 そんな大金を持っている人間等世界中探しても限られて数える事が出来る程度しかおらず、日本国内だけ、となると、尚の事数が限られる。

 世界中の問題だ。それぞれの国で、それぞれのゲーム参加者が出現する。が、時折、他国のゲームにも参加する人間は、いる。

「追加だ。成城悟に四」

「俺もだ」

「私も」

「私もだ」

「同じく」

「かしこまりました」

 こういう、展開。

 能力の有無は大きく展開に関わってくる。

 が、しかし、このゲームもとりテストでの、被験者に設定された倍率は、最初のままから動かない。それは、当然、能力はテストの中で手に入れるモノであるからである。

 だが、しかし、今回ばかりは例外がいた。今までで、初めての例である。

「……俺は成城悟に二。砂影玲衣に追加で一○だ」

 一○、という数字を聴いた皆がその一言を放った男に視線を向けた。

 砂影玲衣。

 この最期のテストとされる一件には、思わぬイレギュラーまでもが混じっているという事である。

 テストクリア済みの霧崎ともう一人の参加。今までで最強とも言われる宇宙人の参加。人間を殺す人間清瀬の参加。そして、砂影玲衣の参加である。

 彼は、最初から強すぎた。目覚めたのが一番最初、という事は偶然であるにしろ、最初の宇宙人との接触から、今までが、努力がありつつも、うまく運びすぎた。

 それを、ただ見ている人間は、その全ては、運だ、と片付けた。運と、才能。才能だけではどうしようもない状況であったが、そうだ、と。

 だが、事態は一変した。

 砂影とあの本来の姿を晒したレーザーを放つ宇宙人が戦闘した時の事である。

 その光景を見た人間は、その全員が砂影は能力を使用した、と判断していたが、理解できていない人間もいた。

 当然である。砂影の能力幻影は、一定の範囲に幻覚を及ぼす作用。例えとして、砂影を中心として幻覚を見せるガスを発生させるため、一定範囲の人間まで無座別に巻き込んで幻覚を見せてしまう、というが、正確には、違った。

 一定の範囲にその幻覚を見せつける。幻覚を及ばせる、が正解であり、島のあちこちに隠されているカメラでその様子を見る人間の多くもまた、砂影が望んだ通りに映し出される幻覚を見せられているのである。

 故に、ゲーム参加者の多くが、砂影はテスト中に手に入れた何らかの能力を使い、相手をどうにかして逆転し、殺した、という認識しか持っていない。

 これが、まず、違う。

「かしこまりました」

「はいよ。さんきゅう」

 砂影の倍率は最初から低かった。当然だ。彼にはセンスがある。詳細はその倍率を設定した人間や、テストを仕掛けた人間のみが知る情報ではあるが、倍率の設定等がある以上は当然、その生い立ちや生活の情報が、漏れている。知られている。

 砂影は、その素性が、今回の参加者の中で一番、素晴らしい。そう判断されていた。いくら能力を奪って身体能力を向上させようが、戦闘等では結局のところセンスが生死を分けるし、素体が素晴らしければ能力を得た後でも当然、その素体にプラスされる、という考えから強くなると容易く予想が出来る。

 よって、砂影は最初から、条件さえ揃えばテストクリアも容易い、と思われていたのである。

 が、違う。

 砂影は橘の勘に触れられているように、彼の能力の出所は、ここではないのである。

「……俺が思うに、俺がこの能力を手に入れたのは、この島に来る前だ」

 砂影は山へと向かいつつ歩きながら、そう言った。

「へぇ。そんな珍しい事もあるんだ。考えられるとしたら、近くで宇宙人が死んで、『波長が偶然あんたに合った』。だから本当に偶然、能力を手に入れたんだと思うわね。可能性の一部だけど、まぁ、でもそれくらいしか考えられない。貴方が殺人鬼でもなけりゃね」

 砂影と一緒に並んで歩く女は、そう言った。

 一二人目の参加者である。

 砂影はその発言に眉を潜めた。歩みは止めなかった。山へと向かいつつ、ただ、隣の女を見る事もせず、ただ気にはかけつつ、こう、応える。

「正直、能力の出所なんてどうだって良いんだ。俺は……、この能力を先に持っているって状況を利用して、皆を守りたいだけなんだ」

 砂影の言葉は力強い。だが、女は嘲笑うように応える。

「本当に、タイミングが悪かったわね。これが最期のテストじゃなかったら、きっと君の力は大いに役にたった。当然、今でも役にはたってると思うけどね。それでも、今回はさっき言ったように、」

「わかってる。何度も言うな。霧崎さんとやらと――お前、がいるからだろ」

 その砂影の言葉は、少し苛立ちが見えていた。

 が、またも女、大して気にしていない様子で、返事する。

「そうそう。一回で理解してくれる物分りの良い子は好きよ」

「はぁ……」

 砂影は、隠さずとも、苛立っていた。

 山へと足を踏み入れても未だ、女は砂影の横に並んでついてくる。砂影も彼女を振り切ろうとはしていない。その理由は、砂影は、彼女から全てを聴いたからである。

 全て、そうだ。

 彼女の名は『東雲出雲(しののめ いずも)』。霧崎と同じ、テストクリア済みで、今回の最期のテストに乗り込んだもう一人の人間である。

 砂影が気にかけるのは、ただ一つ。

「……なんで、貴女は霧崎さんとやらを、殺すんだ」

 東雲の目的、である。

 東雲は砂影と合流した際、全てを話して、こう伝えた。

 ――私は、このテストに身勝手に進入した正直馬鹿を始末しに来ただけだから。

 と。

 そして、その、正直馬鹿が、霧崎とやら、だという事も聴かされた。だが、まだ理由は聴いていなかった。

 だから、問うた。

 薄暗くなった山の斜面を登る。

 三日目。事が大きく動き過ぎた。だが、東雲は一日で宇宙人に滅ぼされるテストもあったし、一ヶ月宇宙人を食って生き残った人間もいると言う。つまり、日数は関係ないと言う。日数にこだわりを持つのは、ゲームの参加者だけだと言う。

 ゲームについては、砂影は興味を持たなかった。こういう事をしている以上、そして、その真相を知ってしまった以上、そういう『くだらない事』をする人間はいると砂影は予想していたからだ。

 だから、そんな事よりも、と問うた。

 砂影が気にしているのはその一点だった。

 砂影の問いに、隣を悠々と歩く東雲は、気楽に笑んだまま、応える。

「上から命令が出たから、以外の何でもないよ。このテストが終わればわかると思うけど、大金を手にして、ある程度自由には生きられるわ。でも、当然、生きる上での最重要な事情はこの宇宙人関連の事になるの。だから、上から命令が出てばそれに従うしかないって事」

「俺が聞きたいのはそう言う意味じゃない」

 砂影は言い切る。と、東雲は察して、応える。

「わかってるよ、少し茶化しただけだから。怒らないの」

 そう言って、笑みを崩さずに、応える。

「さっきも大まかに言ったけど、『三位』のあの正直馬鹿は、手を出さなくていい事に手を出した。っていうか足を突っ込んだ。このテストの事ね。理由はわかると思うけど当然、テストをクリアした人間が参加する意味なんてない。参加を許されたのも、これが最期のテストだからであって、ついでに、馬鹿正直すぎて邪魔な霧崎を、始末しよう、って考えたんだろうね」

 その説明こそ、砂影が求めていた答えだった。

 だが、同時、それを聴いた砂影は、違和感を抱く。

(それが本当の目的だと思えるか……?)

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