第13話 一難去って、また一難
ひと悶着ありダイさんと新人店員のリオンは大人しくしていた。
そう、初めのうちは…
喉元過ぎれば熱さ忘れるというヤツだろうか。
彼らの態度はものの3日で直っていた。
「これ、向こうの郵便局まで出してくれ、ダッシュでな」
「オレにあんま命令すんじゃねー」
ダイさんはいつものテンションだし、リオンはまた…生意気になった。
ちょくちょく僕の命令にも従わなくなった。
まあ、奥の手(激写画像)をちらつかせれば嫌々ながらも従うが…
しかし彼はダイさんには敬意を払っていた。
というより彼の強さに恐れをなした、というところか。
そしてダイさんもリオンが気に入ったのか少々彼には甘くなっている。
器の違い?
なんでそんなこと言うんだ!
最近は発作こそないが、みんな僕の心がガラス製だってこと覚えてる?
頭は強いが心はすっっごく弱いんだぞ…
…と、ともかく僕とダイさんにはそんな感じの対応なんだ、アイツは。
でも遥さんには……
「なあ、付き合ってくれよ~」
ナンパをしていた。
しかも営業中なのに。
…おかしくね?
初対面では一言も発さなかった男が僅か3日でナンパだと!?
僕が教えた礼儀作法はどうした?
せんせーい、コイツ全く反省してませーん!!
そんな僕をよそに彼女は頭を下げた。
「あの、ごめんなさい…」
「え~?」
なおも食い下がる金髪碧眼イカ野郎。
しつこいぞ、諦めろ…ゲソ脚が!!
しかしだリオンはこの際置いといて
…丁重に断ってはいるけど、遥さん…
なんで…
なんで、まんざらでもない顔してるんですか!?
そんな奴こっぴどく振ってやってくださいよ!
「…イカの分際で、気易く私に話しかけないでくれる?」
ぐらいのセリフを言わなきゃソイツは諦めません!
…おい、リオン。
顔がいいからって調子に乗ってると、本気で例の画像をばらまくぞ!!
僕が唯一の切り札を込めた怒りの目線を送ると、彼は渋々、業務に戻った。
「あらー今日もリオン君はイケメンね~」
「あざっす、皆さんもおキレイっすよ」
客にはきっちり顔を使い分けていた。
…そうだ、そうやって奥様方に愛想振りまいてりゃいいんだ。
ああ、でもお客様それ以上ソイツを褒めないで…
すぐつけあがるんで、すぐナンパ始めるんで。
「はあ~…」
僕は特大のため息をついた。
◆◇◆
リオンは思った、なかなか地球も悪くねーなと。
確かに最初はハプニングの連続だったけど、タコ野郎はムカつくけど、筋肉のオッサンは怖ぇけど…
今になってみればそれもどーでもいい。
出会っちまった、運命の人ってヤツに…
きっと地球人化の影響なんだろうが、初めての対面時は何つーか…
やっべー……これが一目ぼれってゆーのか?
顔立ちから佇まいから全てがオレの好みだった。
しかも、なんかスゲーいい匂いがするし…
以前に部下の女が「アナタに一目ぼれしましたッ!!」って来たこともあったが
自分はされても、自分がするとは思ってなかった。
性別ちげーけど、アイツもこんな気分だったのか…?
こう、なんてーか胸の奥が苦しい、みてーな…
そんなことをフワフワ考えてたら、いつの間にか彼女は視界から消えていた。
代わりにウぜぇタコが何かを喋ってきたが、軽くスルーした。
「僕が先だ」とか言ってたよーな…ま、いいや。
とにかくオレ様は心に決めた、
あの女をぜってーオレの嫁にする!!
◆◇◆
オレ様はすぐに行動に移るタイプだ。
けど今回だけは一応慎重になっておこーか…
なんたって地球人への告白なんて初めてだから。
オレは3日待った。
フツ―に話せる仲にはなった、もう十分だろ。
そして俺は遥に話しかけた。
「…なあ、付き合ってくれよ~」
結果は…
オレ様は結果とか気にしねー主義なんだ。
でも遥のやつ、意外といーカンジの反応だったし?
途中でムカつく邪魔が入んなきゃ、ぜってーオチてたぜ、アレ。
チクショー、アイツ…
画像さえなけりゃ…力さえ戻れば…すぐさまにでもタコ殴りにしてやんよ!!
前からの態度といい、アイツも遥のこと狙ってやがんな?
ザコのくせに生意気な…
ま、あんなやつ敵でもなんでもねーけど~
今はお前もザコだと?
うっせー、黙れ!
つーか誰だ、オレ様の心に話しかけてくるヤツは!?
…いや、そんなことはいーんだ。
次の作戦を考えねーとな。
…やっぱり直球過ぎたのがダメだったのか?
次はもう少しギコウ?ってのを凝らしてみっか!
そう思うとオレ様は仕方なく業務に戻った。
こっちの注文おねがーい、
そう聞こえて見てみれば、昨日にも見たオバサン連中だ。
ま、客は客だ…
オレは笑顔で対応する。
「あらー今日もリオン君はイケメンね~」
…悪い気分じゃねーな、そしてオレはすぐに返す
「あざっす、皆さんもおキレイっすよ」
その一言で彼女たちは見事に湧いた。
単純だな~オイ…
タコ野郎の言うとおりにすると客受けが良いのが癪な気もすっけど…
それにしてもチョロ過ぎんだろ、この仕事…。
笑顔の裏で彼は微かに毒気づいた。




