第12話 干されたイカも恋を知る
な、なんでオレ様がこんな格好に…
そう嘆くのは元宇宙最強のエイリアンことリオン少佐であった。
「よく似合ってるじゃないか(笑)」
目の前でこう言って笑うアイツを消せない自分が憎い。
うるせーよ…
そして反抗できない自分に歯噛みする。
こんなカッコ、部下には死んでも見せられねーや…
彼は鏡に映る紅色の前掛け姿の自分に、再度深いため息をついた。
この彼の呟きは意外なところで意に反することになるのだが…
それはまたのお話。
◆◇◆
ふふふ…
僕は満足だった。
昨日の一連の事件には多少驚いたが、何はともあれ
かの悪名高き戦闘民族のスルメール人に勝利を収めたからだ。
この星ではメディアのスクープで地位を失うことを
『干される』と言うようだが、
今回はまさに
僕の巧みな策略で生意気なイカを干してやった!
そして今、その敗者は自分の指示に従って店の掃除をいる。
おかげで昨晩は久々に有意義な報告ができた。
報告書
コードネーム:黄 悠馬
宇宙船を流星から漂着した外敵に破壊される。
至急、代用品もしくは設計図を送られたし。
犯行は『黒の彗星』の構成員のスルメール人によるものである。
因みにこのスルメール人は既に私の手によって拘束済みである。
特筆
なお、捕縛したこの犯人は強制送還のめどが立つまで
エージェントであるこの私が責任を持って監視下に置くことにした。
とまあこんなところである。
ふふん、僕の活躍ぶりがよく分かる報告だ。
え?
拘束なんかしていない?
お前は弱みを握っただけ?
…まあ、実際に統制下に置いているんだしいいじゃないか。
こっちの方がかっこいいし…
だ、誰だ!卑怯者とか言ってるのは!!
…違う、そりゃ確かに狡猾な面もあったけど…
ゴホン、
…彼には地球での基礎知識、もとい礼儀というやつを教えてやった。
それと栄林庵での接客なども…
リオンも流石に堪えていたのか罵詈雑言は吐かなくなった。
少佐の肩書無しに名指しで呼んでも文句ひとつ言わなかった。
意外と物分かりはいいらしい。
…少しやりすぎたかな…?
そう思っていると、
「おい、ユーマ…そろそろ暖簾あげてくれ」
渋い声が厨房から響く。
あの一件以来、ダイさんは少し大人しくなった。
いつもならこうして僕が考えごとで作業が止まっている時には
怒号か拳が飛んできたものだったが。
彼なりに考えさせられることがあったのだろう。
おかげで昨日は僕が根気よく慰めるまで、
「俺はただの筋肉バカだ…」
しか言わなかった。
そんな言葉を発することも、彼を励ます機会が訪れたことも僕にとっては意外過ぎた。
ことさらリオンとの面会は大変だった。
リオンはリオンで震えているし、彼は彼でうつむいたまま黙り込むし…
お互いがまともな会話をするまでに小一時間はかかってしまった。
ガラッ…
開店してから30分、本日最初のお客様に3つの声が重なった。
「「「栄林庵へようこそ!」」」
お辞儀、やれば出来るんじゃないか…
僕はリオンの姿に少し感心した。
◆◇◆
新人店員リオンの客ウケは意外にも良かった。
ことさら女性客には人気があった。
確かに言われてみれば、中身はアレでも外見は金髪碧眼のイケメン外人青年だ。
目鼻立ちははっきりしてるし、笑えば揃った白い歯がキラリと光る。
僕が教えたように接客していれば、自然と人気は出るのだろう。
微笑ましい事なのだが、一つ僕には懸念があった。
そしてそれは見事に的中した。
◆◇◆
その日の夕暮…
夜の部に備えてソファーで休んでいると
ピンポーン♪
勝手口からインターホンの呼び鈴が鳴り響いた。
これはまさか…
先に立ち上がろうとしたが遅かった。
「じゃ、オレさm…オレが行ってくる」
そういってリオンが駆けていく、
「待て、リオン!」
急いで僕は追いかけたが
腐ってもスルメール、彼のフットワークに敵うはずもなかった。
そして事件は起こった。
息を切らして勝手口に着いた時には遅かった。
リオンが呆然と立ち尽くしている。
そしてその目線の先には…
愛しの美少女、山川 遥さんの姿があった。
彼女は最近、表口から入ろうとするとやけに男性客の注目を集めてしまうので
こうして勝手口から出勤することになっていた。
「あ、ユーマさん、こちらの方は…?」
リオンが一向に喋らないので困ったのか僕の存在に気付いた彼女が質問した。
「えーと、彼は…」
とりあえず彼女を中に入れて僕はあらかじめ考えておいた彼の身の上を語る。
因みに彼の戸籍に関しては僕の大事な催眠装置を再び使った。
「そうだったんですか…国際結婚の後にご両親が離婚…」
随分と苦労なさったんですね、と遥さんは心から同情の意を示す。
そこには恩着せがましさのかけらもなかった。
「リオンさん。私は山川 遥です、これから宜しくお願いしますね!」
そして彼女は深々とお辞儀をして更衣室に向かった。
「おい、リオン…」
「…………」
しかし、当のリオンは当惑、いや恍惚の表情をしている。
話しかけても上の空だ。
そして頬が僅かに赤い。
リオンよ、やはりお前もか…
僕はため息をついた。
彼女の魅力はどんな種族も抗しがたい。
僕の予感が当たってしまった。
裏口開けてその間5秒、
最強種族も地球の可憐な少女に惚れた。
まあ、お約束の展開ですよね。
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