第11話 続 オレ様主義のイカれた野郎
◆◇◆
早朝の鉄アレイ直撃直後
僕はベッドに横たわる黒衣の男に目をやりながら考える。
この男の素性は彼の持ちモノである日記から確認させてもらった。
―――過激組織『黒の彗星』第四師団長―――
リオン少佐(彼らの言語は地球人のものと類似点が多く、活字で表せる)
年齢は…
地球年齢であらわすと14歳。ちょうど中2に相当する。
擬態能力により
地球人の姿をしている現在では二十歳の金髪碧眼の白人青年だが…
まあ、精神年齢が中2だと考えるのがいいかもしれない。
戦闘に秀でたスルメール族の出身で、幼少期にその破壊能力を買われて組織に入る。
その後組織でも頭角を現していき、師団長まで上り詰めた。
そしてこの度、地球征服のために部下を率いて進撃するも、
何らかのトラブルで仲間とはぐれ、
流星にしがみついた彼一人だけが地球にたどり着いたらしい。
彼の通信機の履歴には部下と思しきメンバーからの連絡があったようだが、
破損しているのか今は受信も送信もできない様子だった。
ふむ、
僕は情報を思い返す。
スルメール人か…
外見上は僕の種族をタコとするならば、
スルメール人はイカといったところだろうか…
しかし、この種族、性格から文化まで何から何まで我が種族と異なる存在だ。
赤くて丸いものを好む我々に対し、白く鋭くとがったものが好きだし、
ウチでは縁起のいい数が8なのに、向こうは10だし…
何より頭脳派の我らと違い肉体派が勢ぞろいだ。
彼らは宇宙最強と謳われる戦闘民族である。
強靭な肉体に高い攻撃力…
だからダイさんの剛腕が放つ鉄アレイを受けて気絶程度で収まった。
常人はもとより、僕を含めた多くの生物はあの一撃で昇天してしまうことだろう。
我に返ったダイさんもこればかりはヤバいと思ったのか
珍しく取り乱していて救急車を呼ぼうとする彼を説得するのが大変だった。
先ほどのやり取りから分かったが、病院なんかにこのリオン少佐を連れていけば
何をしでかすか分からないのでそれだけは阻止しなければならなかった。
結局僕が、
「病院で事情を聞かれて、鉄アレイを投げましたって言えますか?」
と言ってなんとかなだめた。
流石に彼も警察沙汰は嫌らしい。
心なしか顔色が悪かった。
「大丈夫です、血も出ていませんし幸いにも当たり所が良かったみたいです」
「ただ、目が覚めていきなり加害者がいたら驚くと思うので、外に出てもらっていいですか?」
と僕が言っても
いつもみたいに、なんで分かるんだ?
の一言もなく、ただ、まかせる…とだけ言って部屋を出て行った。
まあ、これに懲りて少しは力の加減を学んでくれただろうか…
そう思っていると、
「ってッ!!」
彼が目を覚ました。
体を起こした際に痛みが走ったのか頭を押さえている。
僕は彼に話しかけた。
◆◇◆
そして現在…
僕は、またベッドに横たわる彼を看ている。
…ダイさん、さっき学習したんじゃないんですか?
彼に禁句を言ったリオン少佐にも非はあるが…
このペースだと本当に殺人者になってしまいますよー。
ま、今回の場合地球の法律では裁けないか。
しかし流石、宇宙最強の名は伊達じゃない、復活直後にアイアンクローをかけられるという
荒技を食らったにもかかわらず、リオン少佐の生命活動は維持されていた。
もっとも、彼が有する衝撃波や催眠波などの能力は全て機能停止してしまったが…
これで彼もめでたく自らが蔑むザコエイリアンの仲間入りを果たした訳だ。
そう思うと、気の毒ながらもいい気味だった。
む、因みに僕はザコではないぞ…知は力なり…
この頭脳には…
あ、しつこい?
うん、じゃーやめる。
そうこうしているうちに彼が再び目を覚ましたようだ。
「二度目のお目覚めだな…気分はどうだ、リオン少佐?」
僕は皮肉をこめてそう言った。
因みに手にはデジカメを持っている。
何、その理由は後でわかるさ…。
今度は彼は無理に起き上がらなかった。
「う、うるせー、…何なんだあの化けモンは?」
反抗的ではあるもののその声は微かに震えている。
「ここの住人のダイさんだ、れっきとした地球人だよ…まあ、力は強いけど」
「地球人!?」
彼は青い目を見開いた。
「ウソだ、このオレ様が…地球人に…?」
動揺っぷりが面白かったので、からかってみた。
…宇宙船の借りだ。
「随分なやられようだったね、宇宙最強の名が泣くんじゃないか?」
すると、彼は苦虫を噛み潰したような顔をした後、言い放った。
「…フン、お前らから記憶を奪えば問題ねー」
彼がそれを言い終えるまでにこう付け足した。
「その能力も使えないよ?」
「…え?」
彼の表情が凍りついた。
その光景は、今朝の彼の全ての無礼を許せるんじゃないかと思ったほどだ。
僕は待ってましたとばかりに、カメラのシャッターを切った。
カシャ!
うーん、最高の出来だ。
僕は確認画像を見て、満足した。
◆◇◆
その後彼の処遇については迷ったが、
僕の宇宙船も壊れている今では、能力を失った彼が自力で帰ることは叶わない。
かといって野放しにするわけにもいかなかったので
結局僕が面倒をみることにした。
つまり僕の部屋に同居させることになったのだ。
この一連の決定には彼の意思は無視し、僕が独断で行った。
ダイさんも加害者としての罪悪感からか、いっさい口をはさまなかった。
もちろん後で故郷の本部には報告するが…
しかしタダで居候させるつもりはない。
日曜日の昼下がりウチには少々場違いな店員が採用された。
名前はリオン
外見は金髪碧眼の西洋人の青年、中身はオレ様主義のイカれた野郎だ。
「オレはぜってーやらねーからな!」
そうぐずる彼に僕はあるものを見せる。
デジカメだ。
「これを画像を本部に頼んで宇宙中にバラまいてもいいのかな~」
そこにはさっき激写した画像があった。
因みにバックアップは万全だ。
エリートをなめるなよ?
「ち、チクショー!!」
「はっはっはーー!」
地球に来て初めて、優越感に浸れた一瞬だった。
珍しく、ちょとドSなユーマです。
いつもイジられている彼にとっては良い発散になったんじゃないでしょーか。




