4話 私の家~
ギルドへの納品とか家についてとかの説明をちょうど聞き終わったくらいに、ギルドの職員さんがミントさんに、出発の準備ができました、と声をかけた。
「準備ができたようですね。それではアイリスさんの家へご案内しますね。荷物がかなりたくさんあるので、冒険者ギルドへ手配をして、荷物を運んでいただく人をお願いしておいたのですが、ちょうど来ていただけたようです。」
「荷物を運んでいただけるんですね。」
「はい。食料や、苗などもありますので、荷車で運びます。馬車で運ぶほどのものではないので、冒険者の方にいつもお願いすることになっているんですよ。」
「わぁ~、助かります。ありがとうございます。」
「さぁ、行きましょう。」
ミントさんに連れられて、薬師ギルドの裏手にまわった。
あ、荷車がある!そこまで大きくはないけど、確かに、私が運ぶのはちょっと無理そう…
ギルドの職員さんたちも、こういう力仕事はあまりしないのかもしれない。
冒険者さんだったら、熊みたいな身体なのかな~
「こんにちは、ミントさん。」
「あ、ルシアンさんが来てくださったんですか?」
「はい。ちょうど手が空いていたので。」
「すみません、高ランクの冒険者様なのに。」
「いえいえ、ギルド同士の手伝いは、ランクは関係ないですよ。」
「そうなんですけど、ちょっと申し訳ない気がして。」
「どうぞお気になさらずに。」
「そうですか、それでは、せっかく来ていただきましたし、お願いいたしますね。ルシアンさん、こちらがアイリスさんです。神殿から来られて、これから薬師としてお仕事をしていただきます。」
「アイリスさんとおっしゃるんですか?ルシアンです。冒険者をやっています。よろしくお願いします。」
……え……何このイケメン…司教様もイケオジだったけど…やば…
…ちょっとマジで…この世界って顔面偏差値高すぎるぅ~~~~~~…
ミントさんも可愛いし、ギルドにいた薬師さんたちだって、みんな整った顔だったけど、
うわぁ~異世界ってすごいわぁ…まぁ…こういうイケメンは、眺めるだけに限るって思ってるけどね…
「アイリスさん?アイリスさん?何か俺の顔に?」
「はっ!あ、すみません。いえ、いえ、いえいえいえいえいえ、なんでもありません。あーえーと、あ、そう、その、薬草とか、初めて見たので、ちょっと何かなーと考えたりしてまして、すみません、ちょっとぼーっとしました。」
「そうですか、確か神殿から、ということは異世界から、ということですよね。」
「ええ。はい、はい、そうです。そうです。」
「アイリスさん、大丈夫ですか?」
ちょっと深呼吸しておこう。
こう、キラキラ系というかイケメンばっかり見ていると、目が疲れるわ…はぁ…
何かそういえば、顔とか思い出せないけど、イケメンの彼氏の愚痴を聞いていた記憶が…
その話聞かされて、相手して、慰めて、すんごい疲れた記憶がなんかある…
イケメンは鑑賞対象として見るに限る。これ鉄板だよね。
それよりも、苗!これが苗なのねーー。モギーって……これ、絶対ヨモギだわ…ギザギザ感もよく似てる。
そういえば、ヨモギ摘んでヨモギ餅作った覚えあるわ。うーん、一緒に横にいた人たちの顔とかは覚えてないけど、ヨモギ餅の色や形や作り方は鮮明に覚えている…って…うん。知識がちゃんと残ってるってある意味すごいわ。
「はい、大丈夫です。ちょっと薬草に興奮してしまいました。これはモギー…ですよね?」
「はい、そうです。扱ったことは?」
「モギーは初めてです。これは、家に着いたら植え方や育て方、収穫について教えていただけるんでしょうか?」
「はい。そのほかにも家の使い方などお教えしますので、詳しくは到着してからにしましょう。」
「はい。」
「それから、途中、お店などが見えると思います。自由に来ていただいてもよいのですが、初めのうちは、こちらでご用意した食材で食事をしていただき、薬草の生育状況はできるだけ様子がわかるまで畑を離れずに観察しておいた方が良いです。薬草の育て方に慣れたところで、我々ギルドのほうでも、お店や他のギルドへのご案内をいたします。我々がお声がけするくらいのタイミングまでは、薬草の生育観察を中心に生育スキルを上げておくほうが後々良いと思います。」
「わかりました。ミントさんのアドバイスの通り、最初のころは薬草を育てるほうを頑張ります!」
がしっと、力こぶ…はできなかったけど、腕にぐっと力を入れてミントさんに見せたら、ミントさんは楽しそうに笑ってた。イケメンは…なんか目を丸くしてるけど、何、私何も変なことしてないけど。
「あ、もうすぐです。あそこに見える少し小さい家がアイリスさんの家になります。ポピー様が、アイリスさんの魔力などを見て、相性の良い土地のある家をご指定されました。」
「え、ポピー様って、そんなことできるんですか?」
「はい。ポピー様は、土と薬草の相性だけではなく、薬師の持っている魔力と土の相性を感じることができるようです。」
「すごいですね~。薬師の皆さんってそういう能力ってあるんですか?薬草を育てるとか、調合するとか以外の?」
「それほど多くはないと思います。ポピー様のような能力はレアスキルですので、お持ちの方は多くはおりませんが、国全体で見れば割合は少ないですが、それなりの人数がいらっしゃると思います。」
「そうなんですね。他にもスキルってあるんですか?」
「そうですね。職にもよりますが、薬師の中には、治癒魔法や、鑑定スキルを持つ者もおりますよ。」
「え、治癒魔法、それはまさしく医者…」
「薬師で治癒魔法を使えるようになるのは、普通は上級になってからですね。」
「え、上級なんだ…」
「はい。それから、神職では中級以上で発現可能ですね。」
「そうなんですね。ふーむ…」
治癒魔法か…せめて治癒学とか無いかなー。治癒魔法っていうのはまだよくわからないけど、治癒学っていうのはあるっぽいから、それはちょっと知りたいなー。
うーん…治癒魔法ってどういうのなのかな…でも女神様、なんか、今は、みたいなこと言ってたよね…
薬師やれって言ったけど、今は、って言ってたんだよね…
薬師やってて上級とかになったら、私にも治癒魔法使えるようになるのかなー
人体構造とか、骨格とか、内臓の位置とか、そういうの、こっちの世界の人たちどこまで知ってるんだろう…
はっ!っていうか、人体構造同じなのかなー…女神様は、だいたい同じ的なことを言ってた気がするけどさー、それに、私の医療知識役に立つのかな、って気がするんだけど、何せまだ何にもわからないしなー
まずは薬からだよね…薬剤師だったわけじゃないけど、まぁ基本的な薬学はやってた途中だし…
うんうん考えながら歩いていたら、ミントさんが楽しそうに笑っていた。
ルシアンさんは、なんか私をじーっと見てる。
まぁ、まだ今日こっちの世界に来たばかりだし、今後のことは今後考えよう!
そう考えたところで、ちょうど家についたようだ。
「アイリスさん、こちらが今日からアイリスさんの家になります。」
案内された家は思っていた以上に、異世界メルヘンだった!
「わあーーー、思っていたけど、思っていた以上だったーーーーー!」
「アイリスさん?」
「あ、すみません、ミントさん。こんな感じかなーって思ってたら、こんな感じだったので、つい。」
さっそく家の中に入ってみた!
確かに風呂、トイレがある。どちらも日本にいたときに使っていたものと形がほとんど同じだ。
他に寝室と、ダイニングキッチン、調合室のような作業用の部屋もある。
「トイレとお風呂って本当に、普通にあったー」
「このトイレとお風呂なんですが、アイリスさんと同じように異世界から来られた方が、これだけは絶対に、っていうことで普及したそうですよ。」
「えーそうなんですね。トイレとお風呂は生活の快適さを大きく左右しますもんね!」
「あ、ルシアンさん、すみません。こちらのダイニングキッチンに、食材などをお願いします。調合室には調合用の道具セットをお願いします。それから寝室には、着替えセットの袋と、マットや毛布などの寝具一式をお願いします。」
ルシアンさん、熊じゃないのに力持ちだわー。いわゆる細マッチョ…というほど細くはないけど、絶対鍛えてる系だ!絶対、脱いだら腹筋割れてます!!!ほら見てみろ!!!系の人だよね。
均整とれてる身体だし、長身だし。8頭身なのか?すごいな…日本人は平均7頭身ないっていうからな…そうすると、やっぱり腸は短めなのかな…解剖するとどうなる???
うーん、うーん…
自分が、服を脱がされている状態を想像されているなんて…しかもまさか内臓のことまで考えられてるとは思ってないだろうなー。イケメン冒険者のルシアンさんは、ミントさんの指示に従って、さわやかな顔で荷物を家の中に運んでくれていた。
「ルシアンさん、ありがとうございました。」
「ありがとうございますた。」
…あ、かんだ。肝臓は強いのかとか余計なこと考えてたせいだ。
「あとは、苗の植え方などですので、こちらでもう大丈夫です。本日は」
「あ、俺はこの後予定はないので、最後までご一緒しますよ。」
「え、」
「アイリスさん、何か…まずかったでしょうか?」
「あ、いえいえ。何でもないです。」
やばい…うっかり、あれだけの荷物を運んできてくれたのに、軽く荷車を引いてたから、どこの筋肉使ってるのか考え込んでしまってたわ。
「それでは、アイリスさん、こちらに来てください。」
「あぁ、自分が運びましょう。」
「ルシアンさん、ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
「いえいえ、どういたしまして。」
ミントさんについて、庭の畑へ向かった。
「こちらが薬草用の畑です。」
「すぐ植えられそうなのは…ここだけですね。」
「はい。まずはこちらに植えてください。畑のほうは、現在、最小限の広さしか手入れしていなかったのでこの広さしかありませんが、アイリスさんご自身で畑を広げていただき、薬草を増やしてください。」
「あ、もしかして、この囲いの部分が全部薬草畑になりますか?」
「はい、その通りです。少しずつ増やしていけばよいと思います。このモギーの苗ですが、しっかりと葉が大きく育つと、株分けができるようになっています。まずはこちらに植えてみてください。」
ルシアンさんが運んでくれたスコップを使って、丁寧に苗を植えてみた。
「はい、そのような形で大丈夫です。」
「水やりとか、肥料はどうすればよいですか?」
「薬草用の畑に植えていれば、モギーは特に肥料は必要ないです。お水は、この土が乾いた状態になったところで、少し水を撒いてください。このくらいの水の量です。」
ミントさんは水魔法を使って、どのくらいの水の量をまけばよいのか教えてくれた。
あ、そういえば、私も、魔法使えるのかな?神殿に来るまでの光が教えてくれた情報では、もうすでに使えるってことだし、使い方もまぁわかってはいる。まだ使ってないから、あとで実践してみよう。
「水の量もだいたいわかりました!」
そういうと、ミントさんはにこっ、と笑ってくれた。
「あちらの畑は何でしょう。色が違いますよね?」
「はい。あちら側は食材用の畑です。薬草用の畑とは土が異なります。うっかり間違ってしまっても育たなくなるわけではありませんが、土の適性が異なるので、品質が落ちます。食材のほうは味が悪くなりますし、薬草のほうは、薬草としてはほぼ効果がなくなります。」
「うわぁ―間違えないように植えますね。」
「はい。そうしてください。」
「モギーの葉はどれくらいで収穫できるようになるんですか?」
「今回植えたのは苗ですので、3日もすれば収穫できます。収穫できるくらいに育てば、株分けはすぐできますので、収穫したらまずは株分けをして薬草を増やしてください。十分な量が取れるようになったら、ギルドまで納品に来ていただきます。ギルドでは10枚単位で納品を受け付けていますので、例えば50枚納品できるようでしたら、10枚ずつの束にして納品してください。束に縛る紐は調合室に置いてあります。」
「わかりました。3日で収穫できるんですね!すごいな~。どんどん増えて困ったりは…」
「モギーの葉は、基本の薬草なので、いくらあってもよいのです。アイリスさん、まずはモギーの収穫をお願いしますね。」
「はい!分かりました。」
「モギーの収穫スキルが上がると、他の薬草も植えられるようになりますし、畑の手入れに慣れてきたところで、食材の苗のご案内や、他のギルドへのご案内もしていきます。」
「楽しみに頑張ります!」
その他、家の使い方など、こまごまとした説明をミントさんがしてくれて、何とか一人で生活できそうな状態になった。
「それでは、アイリスさん、何か困ったことがありましたらいつでもギルドへいらしてくださいね。ここからギルドへは大体1つ時から1つ時半くらいで来れると思いますので。」
「はい。ありがとうございます。ここから歩いて1つ時半…ですね。困ったらすぐ伺います!」
「はい。ぜひそうしてください。それでは、私は仕事に戻りますね。」
「はい、ありがとうございました!」
「がんばれ!」
「はい、ルシアンさんも、今日は荷物を運んでいただいてありがとうございました。頑張ります。」
こうして、ルシアンさんは荷車を引いて、ミントさんと一緒に薬師ギルドへ戻っていきました。
ここに来るとき、あれこれ考えながら来ちゃったから、どれくらい時間がかかったか考えてなかった~。
1つ時半か…20分くらいだよねー。
さっきの神殿までの光の中で、時間概念や暦の概念の知識ももらえて助かった~。
この世界の時間とか暦って、日本と似てるけどちょっと違うんだよね…
1週間は6日で、1か月は30日。1年は300日なんだよね。
それから時間は1日20刻。2刻ごとに鐘が鳴って、鐘が鳴る間隔の2刻を10の時に分けて、1つの時とか、2つの時とかって言ってるらしい。だから1つの時は大体…うん、日本の時間換算だと14~15分だよね。刻の鐘って、日付が変わってお昼までが朝の鐘、お昼から日付が変わるまでが夕の鐘っていって、音が変わるんだって。お昼は夕の鐘が1回鳴るから、それがお昼ご飯を取る目安みたい。そういえば、もう、鐘の音って聞いてるはずだけど、いろいろ説明聞いたりとかで、全然気づかなかった。
よーし、薬草づくりから、頑張ろう!




