13 シンの夢?
それにしても本当にシンは俳優を目指していたのだろうか?
宿屋へ向かう道中の間、ずっとリーザは首を傾げていた。
まったくもってすら納得できないのである。
いつもボサボサの頭で、無精ひげを綺麗にしようとしない。
普通、俳優を目指しているんだったら、もうちょっとくらい身だしなみに気を配ってもよさそうなものだ。
リーザはシンの顔をジロジロ見る。
「な、何?」とシン。
目つきの怖いリーザに、シンはちょっと怯えているようだ。
リーザは再び腕を組み考え込む。
まぁ、みんな主役になれるわけではない。
それにドラマにはいろんな役割がある。
ボサボサヘヤーで無精ひげの役は、以外と多いのかもしれない。
その件は強引に納得するにしても、もうひとつ突っ込みたい箇所がある。
--役者は、大衆の前で演技ができないといけないのよ。
常日頃、人目を忍ぶように屋根裏に隠れているような者が、どうしてまた役者になろうとしているのだろう? 華やかな舞台に憧れているとか、もっと目立ちたいといった欲求から来ているのではないのだろうか?
ただここは、デリケートなところかもしれない。
もしかして以前、俳優のオーディションとやらに出て、何か傷つくことを言われたとか?? それとも役者としての厳しいトレーニングの中で、一度挫折を味わい、人間不信にまで陥ったのでは??
もしそうなら、下手なことを言うと傷つけてしまう。
折角勇気を出して挑戦しようとしているのに、心無いことを言ってやる気を潰しては絶対にダメだ。
だけど……
そもそも論なんだけど、今回の旅行は1週間程度。
もしオーディションに受かっても、すぐに帰らなくちゃならないのよ。
どうすんのよ、シン?
ご、ごめん。
私、どうせオーディションに落っこちると思って、その前提で承諾しちゃったけど、もし万が一、受かっちゃったら本当にどうすんのよ?
一人で生きていけんの?
リーザは頭を抱える。
……また私の悪い癖が始まった。
彼のことを勝手に決めつけて、狭い世界に閉じ込めようとしていた。
シンの人生は、シンが決めなきゃ!
リーザは両手を握りしめて、
「頑張れ! シン! 私、心から応援しているから!」と熱いエールを送る。
そして、その目は涙ぐんでいた。
「え? え?」と戸惑うシン。
いつもの如く、適当に言って逃げようとしていただけなのに、今日はわりと簡単に納得してくれたぞ? でもまぁいいかと、シンはそれ以上深く考えなかった。
日が変わる間近、ようやく馬車は宿屋へ到着した。




