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自由研究の終わり方  作者: さいべり屋


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12/30

11. 田舎つかえねー問題

 帰宅した秋山は、父のパソコンを借りて電源を入れた。ブゥン、と音を立ててファンが回る。

 父の仕事用ではあるが、家に一台しかないため半ば共用となっており、居間の隣の和室に置かれている。初めて家に届いた時には感動したものだが、最近では立ち上がりにだいぶ時間がかかる気がする。


「あら、調べもの? 十一時以降にしてよ、電話代高いんだから」

「かーちゃん、今はもうダイヤルアップじゃねーのよ。時代はADSLなんです」

 廊下を通りかかった母に小言を言われる。

 母はいまいち電化製品に疎いが、パソコンを買った当初、家族全員で弄り回して電話代が万を越えた時のことを、いまだに根に持っている。

 テンテロテン、と甲高い音を立ててパソコンがやっと立ち上がった。ブラウザを開き、検索窓に「コペンハーゲン」と入力する。地図を選択すると画面に大きく航空写真が映し出された。

 今年サービスが開始されたばかりのバーチャル地図サービスだ。


「おお、すげえ」

 コペンハーゲンは美しい街だった。意外と緑が多い。太い河が街を通ってケーエ湾に流れ込み、まさに「水の都」という感じだ。星形のような形に刈り取られた庭園。中心部から放射線状にまっすぐ伸びる道。屋根はオレンジ色が多く統一感があるし、水色の大きな建物はまるでお城のようだ。

 初めて知った土地の異国情緒に惹かれマウスを動かしていると、陽菜が後ろから首に絡みついてきた。


「兄貴、何見てんの? ここどこ? 外国?」

 人の物を借りていて文句は言えないが、この家のプライバシーはどうなっているのか。

「知らねーのかよ、コペンハーゲン。デンマークの首都だよ、北欧の。」

「北欧知ってるし! 葉っぱの模様のカーテンがあるとこでしょ!」

 食い下がる陽菜をあしらいながら、遊び心で自分の住所を入力してみた。グルグルと少し考えるそぶりをしてから、ブラウザは町の景色を吐き出した。


「おお、思ってたよりずっと田舎だった」

 とにかく緑色が多い。段々畑が面積のほとんどを占め、申し訳程度に民家が点在している。陽菜が「あーちゃんちどこ?」と聞いてくるが、そこまで詳細な写真ではないようだった。

 マウスをスライドする。回線が重いのか、歩くようにゆっくりと山道を移動する。駄菓子屋のある分かれ道の所まで来て、秋山は指を止めた。


「ない……」

 その先は何もなかった。森はモコモコとした雑な雲のような形のテクスチャで覆われ、桜ヶ丘会館や七堂記念民俗資料館があるはずの場所も、ガビガビした緑色で塗りつぶされていた。

「まさか……田舎すぎて、航空写真が撮られていない……?」

 秋山は陽菜と顔を見合わせ、二人そろって畳に倒れこんだ。


「田舎つかえねー!」

 パソコンの冷却ファンが、「ゴォーー」と笑い声を立てていた。


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