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第二編 第一章 その1 証拠隠滅

僕は横たわっていた。とても長い間。


僕は気付いてしまった。


すでに外が明るい。まるで昼みたいだ。

僕を今起こした叫び声は、恐ろしく絶望的だった。


とはいえ、僕はこの奇声を毎晩午前3時に聴き浴びていたから、現在時刻は午前3時で間違いないだろう。


「ああ! ほらもう酒場から酔っ払いが出てくる」


え? 外が明るい?


僕はソファーから飛び上がった。


もう、午後三時なのか、どうやら寝すぎちまったみたいだ


僕は震え上がるような寒気に襲われた。歯が飛び出して逃げ出してしまいそうだ。

それは熱病と長い夢のせいだろうか。


家は完全に眠っている。


僕は昨日、ドアも閉めず、服も脱がず、帽子すら外さずに、ソファーに吸い込まれていったんだ。

帽子は枕の近くの床に横たわっていた。


「誰か客人が入ってきたとしたら、そいつは何て言うのかな……僕が酔いつぶれたように見えんのかな、でも……」


光の降り注ぐ窓にとびついて、つま先から頭頂部までのありったけを見回した。

なんも痕……残ってないよな?

僕は身にまとう全てを脱ぎ散らかした。


僕自身すら信じず糸も切れ端も見逃さない検査を3回ほど。


でも、ズボンがほつれて房になっていた。その上に残ってた。

凝り固まった血の痕が。しかもめちゃくちゃ濃度が高そうな。

僕は折りたたみ式のナイフでそこを切り落とした。


ああ! 財布も金目のものも婆さんから盗んだもの全部ポケットに入れてたんだった!


なんで3回の検査で気付かなかったんだ。

それに隠すこと自体頭から抜け落ちていたしよ。


取り敢えず、机に並べてみることにした。

ポケットを全部ひっくり返して、何も残っていないことを確かめたら、このお宝の山を壁紙が剥がれ落ちて裂けていた奥の角の穴の中に押し込めた。


「入った! これで誰の目にも映らない!」


嬉々としてぼんやりと角を見つめていたら、身の毛もよだつ恐怖が何処知れずせり上がってきた。


「神様は僕に囁いた。『これは隠したといえるのか?』と」


幾重にも降り積もる衰弱の中で僕はまた震えていた。

機械的な動作に過ぎないが、学生時代の冬用の外套を引き寄せて、それを被った。


やはりまた、睡魔と熱病と妄想と幻想が僕を包みこんだ。


5分と経たないうちに僕は跳ね起きて、一心不乱な狂乱にて衣服へとジャンプした。


「どうして眠っちまうんだ。まだ何もしてないのに。こんなに証拠まみれじゃないか」


かつて斧を入れるのに使っていた輪を引き裂いて、枕の下の下着の中に押し込んだ。


「裂けた布切れじゃあ、疑われはしないさ。きっとそう、きっとそうだ!」


また僕は痛いほどの緊張に塗れて、辺りを見渡した。


「なんだよ、罪には罰が訪れるってか? ほら、あそこ! その通り!」


ズボンから切り落とした房の切れ端が部屋の真ん中に見てくださいと言わんばかりに屯している。


発狂。途方に暮れて。


はっ! 僕に見えてないだけで服が血の斑点で埋め尽くされていたら。

あっ! 財布にも血がついてるな。


「じゃあ、ポケットの中にも血があるな!」


ポケットを裏返し、斑点の存在を確認した。


「ああ! まだ理性は残っている! 判断力も記憶も残っているんだ! たった一瞬の熱病、虚弱にすぎなかったんだ!」


僕は裏地を全て八つ裂きにした。

この時太陽が左の靴を照らした。


「爪先が血を吸ったのか! 爪先と房とポケット、どう始末をつけようか」


僕は全てをかき集め、腕の中に半ば抱きしめる形になった。


「ストーブ? いやいやバレる? マッチで燃やすか? いやどっかに投げ捨てるのがいい!」


ソファーの上に座りながら枕の上に頭を投げ出した。悪寒が寒かったのか、僕は外套を手繰り寄せた。


「今すぐ、目の前から消えてくれ! 早く! 早く!」


やはりソファーに吸い寄せられた私は幾度も脱出を試みたけど、私の手でそれはなし得なかった。なし得てさせてくれたのは強いノックだった。


「さあ開けろ。生きてんのか死んでるのか? それとも寝てんのか? 1日中まるまる犬っころみたいに寝てやがる! 開けろ! ほら! もう11時だよ!」


ドアをぶん殴りながら叫んでいたのはナスターシャ。


「もしかして、家にいないんじゃ」


今度は管理人の声。僕は跳ね起き、ソファーに座った。心臓はドクドクしてるけど、さほど痛くはなかった。


「掛金で閉めたのか?」

「開けろ!目を覚ませ!」


僕に何の用があるというのだ。管理人まで来ちゃって。抵抗したほうがいいか?

僕はしかたなく身を起こして、前かがみになり、掛金を外した。

皮肉なことに、ベッドから出ることなく外すことが可能なほど、僕の部屋は狭かった。


ナスターシャは怪訝そうな瞳で僕を見つめていた。

僕は挑戦的かつ絶望的、つまり静かに抵抗するように管理人を見据えた。

僕はビンの封筒に入った灰色の紙切れを受け取った。


「召喚状だ。事務所からの」

「事務所?」

「警察が君を呼んでいるのだよ」

「……なぜ?」





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