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男ならいいだろ

これといって趣味がない私は、2人のそばにいることがほとんどだ。


「芽衣、暇。かまって」

「これ読み終わったらな」

芽衣の読み終わったらは本当に読み終わるまで続く。

芽衣が手にしていた小説をがしりと掴み体ごと後ろにひっぱる。

「んっ!?」

いつもなら芽衣も対抗して力入れてくるのに!

芽衣の手からするりと抜けた本は空にまい、私が尻もちをついたあとぱさりと床に着地した。

頭が床についてしまいそうなギリギリのところで静止し、バランスを取り直す。

「引っ張り合いっこするつもりだったのに!」

机に肘をつけながら呆れたように見下ろした。

「犬かよ」


「今日話して遊ぶ?女子会しよ!」

「内容は?」

二人で楽しめるのがいいよね。

「彼氏について!お茶飲みながら語り合おうよ!」

「え?つむぎ彼氏できたん?」

テレビを見ていた元気君が視線をこちらに移し、目を真ん丸にする。

「架空の彼」

「なんやびっくりしたわ」

そう言い残すと見ていたテレビに目線を戻す。

興味なさそう。

なら元気君が興味持つような素敵な彼氏作らなきゃ!


芽衣にはコーヒーを、私はいつも通りミルクティーをいれ台所からこぼさないように足を進める。

「芽衣、彼氏できた?」

「とりあえず作ったぞ」

「なんやややこしいこと言っとるな」

相変わらず目線はテレビに向けたまま元気くんが話に割り込んでくる。

「今からは男子禁制だからよろしくね」

「………」

「マグカップ置いたらスタートだよ!」

ことりとマグカップを置く。

ずるずると椅子を引き、芽衣の正面に座る。

「この間さー、うちの彼氏ったら急に会いたいなんて言い出して。かわいいでしょ?」

「そうか」

「深夜だから電話だけにしよって言ったら寝落ちするまで電話切りたくないってー、かわいいでしょ?」

「そうか」

マグカップに手を付け、まだ熱いミルクティーを体に流す。

机の上にマグカップを再び置き芽衣と目を合わせる。

「…芽衣、恋バナしよ?」

「してるぞ」

「そうか、しか言ってないよ」

「そうか?」


さっきから私しか話していない。

「芽衣の彼氏も知りたいなぁ、どんな彼氏なの?」

「強いぞ」

「精神的に?身体的に?」

「両方」

質問を投げかければ返ってってくる。

しかし言葉のキャッチボールがうまくいかない。

「…芽衣の好きなタイプってどんな人?」

「強いやつだな」

「両方強い人?」

「そうだな」

たしかに両方たくましい人の隣にいると安心するよね。

「ちょい待て」

テレビを見ていたはずの元気くんが芽衣の隣にすとんと座る。

「理想の彼氏どこいったん」

確かに!!!

これじゃただの恋バナだよ!

「め、芽衣!架空の彼氏はどんな人なの?」

「ん?ムキムキだぞ」

「ボディビルダー?」

「そこまで望んでねぇよ」

……あれ?

これもしかして。

「架空の彼氏じゃなくて理想の彼氏の話してる?」

芽衣がコーヒーを飲もうとしていた手を止める。

「ひょろひょろなやつなんだよ」

真逆になった。

「身長何センチ?」

「155」

「160ないんや?」

元気君が背もたれに深く腰掛ける。

あ!

「元気くん女子会にはいってきちゃだめ!」


ぶつぶつと文句を言う元気くんをソファに座らせ、女子会を再開する。

「芽衣の彼氏顔は塩顔?醤油顔?」

「どちらかといえば醤油だろ」

「私の彼氏毎日会いたがるんだけど、芽衣はどう?」

「…適度に会えればいいんじゃねぇの?」

しんと静かな時間が流れる。

わかった。

芽衣、こういうの苦手なんだ。

「芽衣、私の架空の彼氏作るの手伝って」

「ああ、いいぞ」

コーヒーを少し口に含み机に静かに置く。

「細マッチョはどうかな?」

「現実的に考えてありだろ」

深くうなずきあう。

「高身長とかどうかな」

「なんで?」

「物理的な抱擁感」

「ありだろ、つむぎちっさいからな」

「平均的な身長だよ」

思わす口を尖らせた。

「……頭はよくて悪いことないだろ」

「マウント取られたらやだ!」

「それはそうか」

話がどんどん弾んでいく。

話したいことが溢れてくる。

「ジャンプ力高いほうがいいよね!蚊とか退治してくれるし!」

「反射神経はあって損はないよな」

「掃除してくれる人!」

「きれい好きのほうがいいよな」


ミルクティーの底が見えてきた。

そろそろ終わりの合図だ。

「まとめようよ、芽衣」

「つまり、男ならいいだろ」

深く、深くうなずきあった。


芽衣が晩御飯を作ってくれている。

「今日は何?」

「ハンバーグ」

「好き!」

台所を後にし、元気くんが座っているソファに腰を下ろす。

クッションをおなかに抱えテレビを一緒に見つめる。

「……結局架空の彼氏はどんなになったん」

「男」

呆れたようにため息をつきながら私と目を合わせる。

「ええか、男やったら俺やっていいになってまうで」

「それは大変だね」

「何時間も話し込んで出た答えがそれかいな」

少しぶすっとしながらテレビに視線を移す。

「なんか拗ねてる?」

「拗ねてへん」

「そっか」

テレビの音がいつもより大きいかな?

リモコンを手に取りぽちぽちと音量を下げる。

「すまん、ちょっと拗ねとった」

「え?」

リモコンを手から取られチャンネルをカチカチと変えている。

「性別は変えられへんからな。せやけど俺も混ぜてほしかった」

そっか。だからぶすっとしてたのか。

「ごめん。でもおもったより楽しかったかから定期的に女子会するね。でも……」

元気くんと目を合わせ小さく笑う。

「女子会した日は、それよりもっと元気くんとお話しする!」

私の言葉を聞くと安心したような、照れているような表情を見せた。

「女子会の倍は話してくれんと満足せえへんで!」

「男子会?」

「いや、つむぎは女やろ」

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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