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“界”の残響(リフレイン)  作者: 黒っぽい猫
魔術基礎入門

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第6話 天界ショッピング日和


神書界にあるユナの工房は、今日も静かだった。


壁一面に並ぶ魔導書、机の上に散らばる魔石や魔紙。

どこか古びているのに、不思議と落ち着く場所。


その中心で、うちは小さな魔術具を作っていた。


指先で魔紙に魔術陣を描き、中央に小さな魔石を置く。

最後に、ほんの少しだけ自分の魔力を流し込む。


淡く光ったあと、魔石は静かに沈黙した。


「……うん、これでいいかな」


何に使うかはまだ内緒。

でも、役に立つ。


うちは一息つくと、机の上にあった通信具を手に取った。


魔力を流し込むと、すぐに応答が返ってくる。


「——あ、もしもし。お久しぶりね」

『おお、久しいな』

『あぁ……ユナ様の可憐な声がまた聞けるとは……僕は今、とても感動しています』

「はいはい……本題に入るわね」


軽く流しながら、うちは言った。


「ちょっとお願いがあるのだけれど……」

『なんじゃ?』

「明日、人間を一人連れて天界に行くの。だから——」



翌朝。


神書界の聖堂で朝食を食べていると、優奈が突然宣言した。


「本日の訓練はお休みです!!」

「……なんで?」

「今日はちょっとしたお出かけです」


嫌な予感しかしない。



しばらくして、俺は見たこともない服を渡された。


中世ヨーロッパ風の、いかにも貴族っぽい服。


「これを着ろって?」

「正解です。天界ではその格好だと悪目立ちしますので」

「……俺の服、そんなにダメ?」

「めちゃくちゃ浮きますね」


即答だった。



着替え終わると、さらにイヤリングとブレスレットを渡された。


「このイヤリングは言語を自動翻訳…天界に住む住人の言語を訳すためのやつで、こっちのブレスレットは認識阻害…目立たないように調整してくれるやつです」

「……全部魔術具?」

「昨日作りました」

「作ったの?!」


もう驚くのも疲れてきた。



そして、巨大な十字架の裏。


そこに現れた扉をくぐった瞬間———


世界が変わった。



そこは、白い世界だった。


地面も建物も白。

空は澄みきっていて、風は少し冷たい。


ところどころにある植物だけが、鮮やかな色を持っている。


「……ここが天界?」

「そうですよ」



しばらく歩くと、大きな屋敷に着いた。


「ここ、天界にあるユナの家です」

「……でかすぎない?」

「ほとんど使ってませんが」


無駄に豪華だなこの人。



中に入った瞬間——


「そやつが例の人間か?ユナ」

「うわぁ?!」


背後から声がした。


振り向くと、猫耳の女性がいた。


白い髪、しっぽ付き。


「おや、すまんのぅ」


笑っている。


めちゃくちゃ余裕だ。



さらにもう一人。


銀髪で、角のある男。


「突然だと驚きますよ」

「この人達は?」

「うちの友達。猫耳の方がルミ、角が生えた方がエルです」

「今日はよろしくな、小僧」

「よろしくお願いしますね」

「えぇ…」



その後、エルはピアスに触れて——-


ユニコーンになった。


「?????」

「本来の姿です」


理解を諦めた。



俺はユニコーンの背に乗せられ、

優奈とルミさんは空を飛んでいた。


「優雅すぎない?」

「飛行具のおかげですね」

「ちなみに開発者はユナじゃ」

「……怖い」

「ちなみに僕が人型になれるのもユナ様のおかげです。」

「怖っ」



服屋に着いてからは、完全にお任せ状態だった。


「何がいるんじゃ?」

「とりあえず外出着と狩猟服は絶対。あとは一応正装をいくつか。」

「ふむ。なるほど…どうしますか?ルミ」

「最近は割とシンプルなものが流行からのぅ」

「普通の外出着と狩猟服ならそこまで気を張らなくてもいいデザインがいいですね。」

「それならこれとかどうじゃ?」

「んーデザインは良いですが着るとちょっと重いかと」

「ふむ……ならこれとかはどうじゃ?」

「悪くはないですね。あ、こういう色合いやデザインは浮かないのでは?」

「おぉ……確かに素晴らしいな」


そう言いながらエルとルミは話し合いながら選び終わった。


俺の意見、ゼロである。



全部終わった頃には、普通に疲れていた。


採寸などをいろいろやられたせいでお腹空いた…


「……腹減った」

「ご飯にしましょうか」

「それなら、最近できたお店があるのじゃ」

「ではそこに——」


その瞬間だった。


ドォン!!


遠くで爆音。


「魔物だ!!逃げろ!!」


人が一斉に走る。


いや、人間ではないか。


いろんな動物の耳やら生えているから。


優奈はため息をついた。


「まじか……」

「どうするんだ?」

「ちょっと仕事行ってきます」


そう言って、飛び立った。



残された俺たち。


するとエルが肩に手を置いた。


「熊川くん」

「……はい?」

「ユナ様の魔術を、見に行きましょう」

「おぉ、素晴らしい案じゃな」

「えぇ…」


連れて行かれたのは崖の上。


風が強い。


「ここならよく見えます」

「なかなか悪くない場所じゃな」


そして——


見えた。


空に“立っている”優奈。


魔導書が開かれる。


その瞬間、空間に魔術陣が広がった。


「……すげぇ」


氷の柱が、無数に出現する。


しかも連続で。


「今のは氷柱を大量かつ連続で出す魔術ですね」

「そうじゃな。だか、流石はユナ。氷も純度が高くてとても美しい。」

「それにあのような大量で連続で出す攻撃魔術は莫大な魔力や高度な魔術式の理解が入りますからね…」


美しかった。


ただの戦いじゃない。


芸術みたいだった。



「ユナ様は、神が作りし存在です」


エルが静かに言う。


「復活まで、何千年も待ちました」

「……何千年?」

「3654年3ヶ月24日もの間魂の状態で彷徨っていたようです」

「覚えてるのかよ」

「毎日数えておりましたので」


怖い。


「こやつ、『あぁ…本日で何年何ヶ月何日が経過しました…ユナ様は復活するのでしょうか…』と毎日ぶつぶつ唱えていたから覚えてしまったぞ」

「えぇ…」


一体、この人たちは何歳なのだろう。



最後の一撃。


魔術陣が一斉に輝き——


魔物は消えた。


「……終わったのか」

「素晴らしかったのう」

「あぁ…今日まで生きていて本当に良かった…」

「こいつの戯言は無視していいぞ」

「そうですね」


——


「いや、いつから見てたのよ」


 後ろから声。


「うわぁ!?」


いつの間にか優奈がいた。


「ほぼ最初からだぞ」

「エルでしょ絶対」

「正解です。嗚呼…素晴らしい魔術を繰り広げるユナ様は神々から生み出し、最高傑作で——」

「ご飯にするぞ。こいつを置いて」

「申し訳ございません。ユナ様の魔術に感動するあまり…」

「なら早くユニコーンの姿に戻り、人間を運べ」


扱いが雑である。


その後、何事もなかったかのように食事へ向かった。


見たことない料理だか美味しかった。



帰り道。


天界の空を見ながら思った。


(……なんか、すごい世界に来たな)



でも——


「楽しかったな…」

「でしょ?先輩」


そう笑った優奈の顔は可愛らしい少女の笑顔だった。


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