本日の主役。
シュンッ
「ここが……あの大陸?」
目の前にはポッカリと空いた空間に海が滝のように流れ落ちている。
この穴が海の底になるのも時間の問題だ。
「……!母さん、なんか光って見えるよ?」
「ハルにも見える?魂の光が。」
「えっ……?じゃあこれ……みんな人の魂なの……?」
夥しい量の光。
いったいどれほどの魂が、どれほどの人が……
「ハル、Qちゃんの魂分かるかしら?……ハル?どうしたの!?」
「……っ……涙が止まらないんだ。こんなに大勢……」
「ハル……ごめん、ごめんね……」
そう言って母さんは俺を抱きしめてくれた。
母さんは何も悪くない。
それでも、この悲しみを向けられる相手がいなくて。
「母さん何も考えないで……ごめんね、ハル……」
「ありがとう母さん……Qちゃん探さないとだよね……どこかな……」
見回すと、一段と大きな光が見えた。
この光は……
「母さん、これだよ!この光が……」
「これね?……よし。」
小さなカプセルのような物を取り出し、Qちゃんの魂に近づけた。
すると光はカプセルに吸い込まれていった。
「これでとりあえず魂がどこかいっちゃう事はないから大丈夫よ。ヒロに渡しましょう……ハル?」
「……この光はどこへ行くの?」
「多分また政府が回収して使うんじゃないかな……こんな使い方したから半分はこのまま消滅しちゃうと思うけど……」
「……」
『ハル様……』
シュンッ
「ハル!……」
シュンッ
「……その花は?」
「これ、俺が種から育てたんだ。まだ咲いたばっかりでこれだけしかないんだけど……せめて、この人達に何かしてあげたくて……」
「……母さんも一緒にいいかな?」
「うん……何もしてあげられなくてごめんね……ここにいた事を、俺は忘れないから。だから……今はおやすみ。またいつの日か…………」
言葉に詰まる。
足りない分はこの花と共に。
数輪の花が穴の中へと落ちていく。
その様を、ただ眺めるだけしか出来なかった。
「ハル……」
「……行こっか。」
……
……
「ただいまー……」
「ハルちゃーーん!!」
「ルイ───」
ルイが走りながら俺に抱きついてきた。
支える気力もなく、そのまま倒れ込んでしまう。
「ハルちゃん……辛かったね……えーん……」
「な、なんでルイが泣いてるんだ?っていうかなんで知ってるの……?」
「だって……二人ともずっと中継されてたんだよ?ほら、見て。」
《───ですので、世界中が大混乱となっていますが……はい、そうですね、あの場にあったのは数百もの人間の魂。つまりあの球体は数百人の命を燃やして動いていた、という事になるでしょう……となればハルるんはその者達に対して涙を流し、花を添えたと……音声拾えた?じゃあもう一度見てみようか。》
【──これ、俺が種から育てたんだ。まだ咲いたばっかりでこれだけしかないんだけど……せめて、この人達に何かしてあげたくて──何もしてあげられなくてごめんね……ここにいた事を、俺は忘れないから。だから……今はおやすみ。またいつの日か──】
《…………なにがどうなっているのかはこれから調査される事になるのでしょうが、誰がどう見ても、このハルるんの涙は……ハルるんの言葉は…………ハルるん!俺は何があってもハルるんの味方だよ!大丈夫、俺も忘れないから!だからハルるんもゆっくり休んで、また可愛い笑顔見せてね!ハルるーん!あっ!ちょっとなにすんだよ!おいっ────》
「ね?ハルちゃんの思い、きっと届くよ。」
「ルイ……」
「今日はお肉買って別荘でバーベキューでもする?あなた火起こし好きでしょ?頼んだわよ。」
「私はイカ派。」
「……ははっ、みんなありがとう。みんな……大好きだ。」
「私もー!」
「そうね。」
「私の愛はハルだけ。」
……
「ふっふっ、若いってのはいいな。さて、リアそのカプセルを貸してくれ。」
「……私、ハルを泣かせちゃった。駄目ね。」
「なに、よくやったさ。大丈夫、あの子は人に恵まれてるから。」
「そうね、でも私……」
「ねぇ、父さんも母さんも一緒にやろうよ。」
「いや、僕達はいいから若者で──」
「よーし!母さんいっぱい食べるよー!辛気臭い爺は留守番でもしてなさい!」
「えっ!?じゃあ僕も行くよ、ちょっと待って!」
……
今日一日で色々な事があった。
知りたい事はあるけれど、とりあえず今日は何も考えないようにしよう。
「ハル、お肉焼けたよ!じゃんじゃん食べなさい!」
「お義母様、私が焼きますから。どうぞゆっくりしてて下さい。」
「私が焼くよ!あ、飲み物とってくるね!」
「食べる専。」
『あー、またか……数が多すぎますね。』
「サクラどうした?」
『ハル様の端末に鬼の様な量の連絡が来てるので……捌くのが面倒で面倒で。あれ?これは……』
「今日はシャットダウンしとけば?」
『……そうですね!よーし騒ぐぞー!!』
「……ん?なんか騒がしいな。空から声が……」
みると飛行体が上空に見えた。
身を乗り出している人物は拡声器らしき物を持っている。
【おい!!貴様が祝勝会というから準備していたのにこの様子はなんだ!!大体なぜ連絡に出ない!!!】
「あらチェフ、お肉食べる?」
おっさんは反重力装置を使い器用に降りてきた。
「全く……礼儀というのがなってないな、貴様は。」
「人の家に空から来てる奴に言われたくないけどな。祝勝会って事は俺達勝ったの?」
「一時は有耶無耶になったんだが貴様の涙を見た世論が我々ヤマトを選んだのだ。」
「へー、じゃあ乾杯しようよ。マクシル、アレ持ってきて。」
「用意してある。はい。」
「ほら、おっさん区長なんだろ?これ被ってよ。」
「なんだコレは……」
「パーティーハット。あとこの襷もね。」
「……本日の主役?フザケてるのか!!」
「チェフ似合ってるわよー。」
「えっ……そ、そうですか?」
「この人、チョロいわね。」
「ラウラさん、聞こえちゃうよ……」
「ほら区長、挨拶頼むよ。」
「えー……オッホン。この度は我が地区の勝利という事で皆様には大変な───」
『堅いぞー!!もっとはっちゃけろー!!』
「くっ……」
「チェフ頑張ってー!」
「……貴様のお陰で勝った!礼を言う、ありがとう。」
『よっ!魔術師!!』
「フッハッハッハッハ!!……!?しまった……」
「ははっ、面白いなおっさんは。」
「……そうやって憎たらしく笑ってる方が貴様らしい。貴様が泣くとリアさんが悲しむからな。」
「素直じゃないのね。」
「大人になるってこういう事。」
「二人とも聞こえちゃうよー……」
「君ね、僕に挨拶は無いの?裏切ったくせにノコノコ現れて。」
「煩いな。大体貴方が余計な事を発見するからこんな事になったんだ。」
「なっ……なんだって君は──」
「まぁまぁ、恨んでも恨まれても誰も得しないでしょ?父さんも許してあげたら?」
「全く、君は甘いんだから。誰に似たのやら。」
「私の子だもの!ねー♪」
「ほらおっさんも、父さんと仲直りの握手してよ。」
「なんだって私が……」
「チェフ、しなさい。」
「くっ……ほら、手を出せ!このハゲ。」
「なんだと!君は口が臭いんだよ!」
「なっ……失礼な!」
「リアに色目を使いおって……ふんっ!」
「ハゲ!!」
「クッサ!!」
拗れていた分、急に手を取り合うのも難しいのかもしれない。
それでも、少しだけ前進出来た気がした。




