運命の1球。
この世界に来てから、俺はいつも誰かを、何かを守る立場だった。
だから強がっていたし弱音なんか吐かなかった。
おかげて気を張れていたっていうのもあるんだけれど。
まさか俺の事を物理的に守ってくれる人が出てくるなんて思わなかった。
「はっはー!そんなんじゃこのリアちゃんには当たんないよー!ホレホレッ!」
『リア様ー!そこだー!やれやれぇー!』
にしてもこの二人、なんとなく似ているな。
「これでっ───7体目っ!!」
母さん渾身の拳がアンドロイドの腹を突き破る。
破った腹の中で即座にイクスを爆発させ再生出来ない程に粉々にする。
『リア様ー!後ろ後ろー!』
「分かってる……よーん!」
背後から襲ってくるもう一人の攻撃を防壁で守る。
防壁にイクスを溜め込んでいた為攻撃した奴は地雷に触ったかの様に爆発する。
母さんの動きを見ていると本当に無駄が無い。
動きは大袈裟なんだけどね。
「そこだー!リアちゃーん……デストロイヤー!!」
戦争映画でも見たことのない様な爆発が起きる。
母さんは派手なのが好きらしい。
「ふー……流石に久々だから疲れたわー。」
「大丈夫?ほら、俺の力を送るよ。手を貸して。」
母さんの中にありったけの力を注ぎ込む。
いやいや、吸われすぎだな……
俺の分が無くなっちゃうぞ?
「ハルの温かいのが母さんの中に入ってくるよ……母さんの中、ハルでいっぱい♪」
「誤解を招くような言い方しないでよ……」
「あら、嫌だった?」
「嫌とかじゃなくて……恥ずかしいし……」
「もー♪ウブなんだから。って事はハルはまだそういう事してないのかなー?」
『リア様!ハル様の処女は私の物!!この戦いが終わったら竿付き美少女アンドロイドに転生しハル様の全てを私が頂くのです!!』
「じゃあその後ならいい?」
『それはそれは、どうぞどうぞ。たっぷり鳴かしてあげて下さい。』
「キャー♪楽しみ楽しみ♪よーし、とっとと終わらせるぞー!」
『おー!!』
「俺に権利は無いんだな。っていうか親としてそれはどうなの?」
……
……
「さて、残るはストル地区とラーシャ地区ね。」
「母さん、Qちゃんには手を出さないでよ?」
「大丈夫よ、一時間しか持たないんでしょ?この辺で時間でも潰そっか。はい、そっち持って。」
「何これ?」
「なにって、レジャーシートよ?」
「それは分かるんだけど……こんなの広げて何するの?」
「ランチよ!母さん張り切って作ってきたんだから♪チェフー!聞こえるー?一緒にどう?」
【貴様達なにをやっている!?まだ敵が残っているだろう!!】
「なにってランチよ!私の作ったサンドイッチ食べる?」
【なっ……リアさんの手作り……いや、しかし……】
「あー、アイツ素直になれないタイプだな。俺連れてくるよ!」
シュンッ
「あっ、お茶忘れちゃった。取ってこなきゃ……」
シュンッ
シュンッ
「あれ?母さんは?」
シュンッ
「ごめんごめんお茶取りに行ってた。」
「もー、母さんったら。」
「ふふっ、ごめんね。」
「「はははっ!」」
「…………自由だな!!!!イクスだぞ!?世界大会だぞ!?何を呑気にピクニック気分を出している!!!」
「ほらチェフも座って。お手拭きそこにあるからね。」
「そうだな……頂くとするか。うん……うん……美味しい!ってなるか!!!」
「オッサン行儀が悪いぞ?大声出すなよ。」
「そうよチェフ。それとも私の作った物が食べれないの?」
「何故だ!?私が悪いのか!?」
「ほらみんな、カメラ来たわよー。笑って笑ってー……はいチーズ。」
「ニコッ」
カシャッ
「おー、オッサン良い顔だな。全世界に送られたぞ。」
「終わった……全てが終わった……」
「はいチェフ、あーん。」
「あーん……」
「美味しい?」
「……この味も、貴女も、変わらないですね。」
「チェフが変わったのよ。」
「……」
「チェフ、あの時の仲間で残ってるのは私とヒロだけになっちゃった。みんな、殺されちゃったの。私達が何か悪い事をしたのかしら?ただ……取られたものを取り返しただけなのに……」
「わ、私は……」
「チェフも辛かったよね。あなたは素直になれないから……政府側に付いた。それも正解だと思う。でもね……」
「リアさん!私は──」
直後俺達の視界は爆炎に包まれた。
張っていた防壁に亀裂が入る。
「なんだこの威力!?強くない!?」
『これは……人の力による物ではないですね……』
「母さん!大丈夫!?」
「大丈夫よ!チェフ、また後でね。」
「私は───」
シュンッ
「ん?なにか見えたぞ?なんだあれ?」
球体……?
空に浮かび上がるソレは黒い……とも言えない、禍々しい色をしている。
『……えっ?』
「サクラ?どうした?」
『こ……この星の技術ではあんなもの作れないはず……』
シュンッ
「あら……Qちゃんって球体のQだったの?」
『リア様、ふざけられる状況では……』
「そうね……ちょっとやっかいね。」
『ハル様、あの中には何百もの魂が入っています。勿論Q様もあの物体の動力の一部として取り込まれて……』
「……どうすればいいんだ?壊すわけにもいかないし……壊せるかもわかんないし……どうしよう、母さん……」
「ふふっ。」
「なっ、なんで笑ってるの?」
「困ったらすぐ私に頼ってくれてるのが嬉しくて。大丈夫よ、ハルを悲しませたりなんかさせないんだから!」
「母さん……」
「チェフ!チェフ聞こえる?ヤマトにアンドロイドってある?」
【私は……私は……】
「もー、使えないわね……ヒロ!見てるんでしょ?入れ物、出来たの!?」
【なっ、なんだね急に……まだ出来てないよ。】
「まったく、使えないハゲね。仕方ない──」
【あっ、とりあえずベースは出来てるから魂だけなら入れられるよ。】
「もっと早く言いなさい!準備しておいて!」
【ヒェー、間に合うかな……】
「さて……やってみますか!」
「……母さん?」
「繝代ヱ縲∬◇縺薙∴繧具シ溽ァ√h縲√Μ 繧繧茨シ�」
母さんは聞いたことのない言葉を空に向かって話している。
『翻訳可能な言語です。自動翻訳します。』
「パパ!聞こえる?私よ、リアよ!」
パパ?パパって……
「……うん、そう!一回分でいいよ、そんなにしたら……うん、分かった!」
そう言って母さんは手のひらを空にかざした。
すると母さんの手のひらには小さな、綺麗な光が集まりだした。
「よーし……サクラ!実況をお願い!」
『さぁ九回の裏ツーアウト満塁。カウントはフルカウント。一打出れば同点、長打が出れば逆転サヨナラのこの場面。ピッチャーのリア選手、ここまで一人で投げてきました。流石に疲労は隠せないでしょうか。』
「なんで野球!?っていうかこの世界に無いだろ!?」
『リア選手首を振る、2回、3回。ようやくサインが決まりました。おーっと、ここでリア選手、間を嫌いました。一度汗を拭います。』
「いや、投げるなら投げてよ!よく敵も待ってるな……」
『さぁ、運命の1球!リア選手、振りかぶって……投げたー!!』
「秘球!!こーーんちくしょーーーーっと!!」
母さんの投げた光の玉は球体にめがけて飛んでいった。
「ハル、逃げるよ!ホラッ。」
「えっ?ちょっと───」
シュンッ
光が球体に触れた瞬間、あの大陸は消滅した。




