赤子。
「……」
返事は無い……
でも微かに動いているわね。
「……あなたの事、みんな心配してるわ。大丈夫?」
「……」
瞳はこちらを向いたけど……
どうすれば……
正解が分からない。
「……」
「……こんなになるまで頑張ってくれたのね。あなたは……誰も傷つけないように、みんなが笑えるように……気づいてあげられなくてごめんなさい。いつもあなたは笑顔でいてくれたから、それに頼ってしまって……まるで映画に出てくるヒーローみたいな、私も含めてみんなそう思ってた。でも、あなただって、私と同じ人間……そんな事すら忘れてしまう程、あなたは輝いていた。」
「……」
「……この世界に受け入れてくれてありがとう。昔のあなたも……ふふっ、恰好いいわよ?あなたの本当の強さは……きっとこの世界にあるのね。折れても折れても上に向かって伸びていくこの木々のように……」
「っ……」
少しだけ口が動いた……
何かを伝えたいのかしら?
「……この世界のあなたが言ってたんだけど、あなたどこか壊れちゃったんですって。どうする?壊れたまま頑張れる?」
「……」
手が動いた……
こんなになってもまだ立ち上がるつもりなのね……
こんなにも……
「……そうね、いつも全力なのがあなただから、、そんなあなたが好き。あなたの心の一つが無くなってしまったなら……私がその穴を埋めるから……今度この前みたいになっても、私離れない……あなたといる。喜びも悲しみも──」
「……っ……っ゛……」
「大丈夫……私があなたのそばにいるから……だから……もう一回立ち上がれるかしら……?」
少しずつ体が起き上がってきた。
この人が闘っている。
自分自身と……
「ダメだ!今動いたら二度と元に戻らないぞ!少しは……自分を大切にしろ!動くな俺っ!」
目の前には再び大人のあの人が。
「えっ?でも……」
「君、未来の俺が好きなんだろ?答えがあるはずなんだ。この世界にも、君達のいる世界にも。このまま目が覚めたら心が無いままになる。この世界もなくなるだろう。君の言葉に反応して……君の為に動こうとしている。本当にバカだよ。」
「……」
「多分、君にしか出来ない。頼むよ、ラウラ。」
「私にしか……」
そう言って彼はまた消えた。
答えがある……
私の世界とこの世界……
思い出すのよ、今までの事を。
────
────
そういえば最近、無言で見られる事が多かった……
どこか困っていたような……
何故?
……
【あなたの気持ち、まだ聞いてないんだけど?】
あなたの気持ち……
あれだけスキンシップが多かったのに……
……
あれ?もしかして……
【お母さんもお父さんも見た事ないから】
【俺達に無いものがこれには詰まってる】
無いもの……
【俺ってどんな存在?】
なんでそんな事を聞く?
理解していない?
【自分を大切にしろ!】
自分は傷ついても……
もしかして、初めから壊れかけていた?
この人に足りなかったもの……
確かに……あの子達の言う通りだったのかもしれない。
意を決して、生まれたままの姿になる。
恥ずかしいけど……
その姿のまま、優しく抱きしめる。
「……あなたは、愛情に関する部分が欠落している。私が作ったクッキー……あなたの事を想って作ったの。だから、私の愛情が詰まっている。あなたは……私達が何かしらの行動を取るから、私達の好意を認識出来ている。でも、自分からは伝えられない。あなたの心の根底に、愛情が無いから。」
「……」
「だから甘えるのが下手なのね。愛情が無いから表現出来ないのよ。限界がくるといつも爆発しちゃうんじゃない?」
「俺は……」
……!
「俺は……みんなが好きだ……」
「……あなたは優しすぎるのよ。もっと自分の事を考えなさい。あなたから発信するの。誰がどうとか、そんなの関係ないから。」
「俺は……」
「……ここはあなたの心の中。愛情がないなら、作ればいい。私が手伝ってあげる、ほら……」
そう言って服を脱がしてあげる。
相変わらず、綺麗な体……
「……こうしてると、暖かいわね。」
「……」
「いい?ここには私とあなたしかいないから。恥ずかしがらないで……」
目に少しだけ光が戻ってきた。
今すぐ愛し合いたいけど……今は私の気持は抑えなきゃ。
「素直になって。あなたがどうしたいか。」
手が震えている?
……
「大丈夫よ……ほら私のコレ、好きでしょ?」
……この人には親がいなかった。
だからどこか子供のようで。
だから甘え方も知らなくて。
だから愛が無くて。
だから……
「だから……あなたは胸の事をよく気にしていた……これがあなたにとって足りないものだって、なんとなく理解していたのね……」
あの子達も……なんとなく分かっていたのかしら。
ダメね、私は……
「んっ……」
まるで赤子の様に……
「ふふっ、よしよし。いっぱい甘えて?」
冷静でいたいけど、ダメ……
……っ!?
「ちょっと……そこは……あっ……」
……あれ?この感じは……
「……もう、いつから目が覚めてたの?」
「……いつからかな。暗闇の中で誰かの呼ぶ声がずっと聞こえていて。でも……本当は出たくなかったんだ。」
「……どうして出てきたの?」
「えーっと……その……」
「……ほら、頑張って。」
もう、いいわよね……
「……好きな人の前ではカッコつけたいだろ?だから──」
もう抑えられない。
「っ───ラウラ……?」
「私の事が何だって?」
「……好きだ。」
「……もう……心配……したんだから……」
「ごめん……最近、ラウラといると胸の奥がむずむずして……何だろうって考えてたんだ。」
「……それで、答えは分かったの?」
「……笑うなよ?」
「ふふっ、笑わないわよ?」
「あー、ほら笑ってる。いいよ、俺の心の中に閉まっておくから。」
「もう……それはここでしょ?ほら、教えて。」
「……恋してるんだと思う。ラウラに。」
「……」
「恥ずかしいな……ははっ……えっ?なんで泣いてるの?」
「……」
「ラウラ??もしもし?」
……私という存在が心の一部として、この人の中で息づいている。
こんなに嬉しい事はない……
こんなにも尊くて、愛しくて。
「おーい?ラウラ?」
待ち焦がれた救世主は王子様でありお姫様でもあり。
眠っていた姫を起こした私もまた同じ。
なんて、詩人みたいな事を思ってしまう程……
「あなたが好きよ……ハル。」
「……ヤバいな、凄い嬉しい。」
気がつくと部屋に戻っていた。
「あれ?ここは俺の部屋?……げっ!?なんで現実でも裸なの!?」
「いいじゃない。さっきの続き、しましょう?」
「っ……勿論──」
『くぉらぁーーーー!!それ以上ハル様に近づくな!!この泥棒猫め!!』
「あら、あなたいたの?」
『キーーー!!いませんでしたよ!!ぶっちゃけいませんでした!!ハル様がシャットダウンしてたんですから、私だってシャットダウンしてましたよ!!』
「そう、良かったわね。」
『ええ、まぁそれは……ってそこ!ハル様の秘部から手を離しなさい!!』
「イヤよ。私の物なんだから。」
『フォーーーー!!!ハル様!!言ってやってください!!俺の体はサクラで予約済みだと!!サクラ専用の穴だと!!』
「頼むから落ち着け……」
バタン!!
「ハルちゃーーん!!大丈夫!?痛くない?苦しくない?うぇーーん……良かった……良かった……」
「ルイ……もう大丈夫、心配かけてごめんな。」
「ハル、なんで裸?猫女も。」
「そ、それは……」
「やっぱりおっぱいなの?会長さんのおっぱいじゃなきゃダメだったの!?」
「おっぱい!」
『ハル様のちっぱいは私の物!』
「ちっぱい言うな!」
「ふっ、まぁ私のおっぱいがこの中で一番だったみたいね。」
「わ、私だって……柔らかいもん!」
「未使用!」
『ちっぱい!』
「……ははっ、みんな大好きだよ。みんなかけがえのない大切な──」
「おっぱい?」
「やっぱり大きさ?」
「未使用?」
『ちっぱい?』
「……ははっ。」
みんなの想いが、また俺を突き動かす。




