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瞳。


「あれから3日経つけど……ハルちゃんまだ出てこないね……」


「ハル……」


「そのうち出てくるわよ、今はそっとしておいてあげたら?」


「でも……私とマクシルちゃんが声かけてもダメで……会長さんは心配じゃないんですか?」


「……」


「もうあれしかない。」


「うん、あれしかないよね。」


「何よ、あれって。」


「会長さんの……おっぱいです!」


「おっぱい!」


「なっ!?何言ってるのよあなた達……フザケてるの?」


「真面目です!私のおっぱいでもマクシルちゃんのおっぱいでもダメでした……だからもう会長さんのおっぱいしかないんです!」


「おっぱい!」


「あのね……関わってほしくない時だってあるでしょ?あの人だって──」


「一回だけやってみて下さい!」


「おっぱい!」


「はぁ……そういう強引な所、誰に似たんだか。一回だけよ?」


 コンコン


「入るわよ?……もう、部屋が暗いままじゃない。あなたいつまで布団に包まってるつもり?」


「……」


「……布団引っぺがすわよ?ほらっ!」


「……」


「なによ目が開いてるじゃない……」


 おかしいわね、この人の心の声が聞こえない。

 まさかプロテクト?そんな訳ないか。

 にしても覇気が無いわね……


「ちょっと、大丈夫?」


「……」


 ……心を閉ざしている?

 違う、何かもっと根本的な……

 

 得意じゃないけどやってみるしかなさそうね。

 ……もっと、より深い読心。

 失敗したら私も飲み込まれてしまう。 

 大丈夫、私なら出来る。

 

 あなたの為なら、出来る。


 ─────


 ─────


 この空間は……

 まるで森の中ね。

 あの人の原点がここにある……


 !この子は……

 5歳くらいの男の子かしら?


「────?」


 これは……異国語……

 大丈夫、聞き取れるはず。


「お姉ちゃんは誰?」


「私は……誰でしょう。」


「……お母さん?」


「ふふっ、お母さんに見える?」


「分かんない。お母さんもお父さんも見た事ないから。」


「……あなたはここで何をしてるのかしら。」


「分かんない。誰か待ってるのかな。お兄ちゃんなら分かるかな?」


「お兄ちゃん?他にも誰かいるの?」


「……呼んだ?……君は誰?」


 目の前の子供が急に大きくなった……

 私と同い年くらいかしら?


 もしかしてこの人達は……


「人を探してるんだけど。ピンクの髪をした人、知らないかしら?」


「あぁ、いるけど今は無理だな。壊れてるから。」


「壊れてる?」


「あ、そうだ。お茶でも飲む?お菓子もあるし。ホラッ。」


「ふふっ、流石あの人の中ね……あれっ、このお菓子……」


「コレ、美味しいんだ。勿論味だけじゃなくて……なんて言うんだろう。俺達に無いものがこれには詰まってる。俺達のお気に入りなんだよ。」


 私の焼いたクッキー……

 あの人の中で……


「……こっちに来なよ、見せてあげる。」


「?……あっ──」


 目の前には木陰に佇んでいるあの人がいた。


「あなた……こんな所で何してるの?帰らなきゃダメでしょ?」


「……」


 返事もなく、目の中に光がない。

 まるで感情がどこかへと……


「な、壊れてる。俺達じゃどうしようも出来ない。」


「そんな……どうすれば……」


「……兄ぃなら何か分かるかな。なぁ兄ぃ───」


 目の前の彼はさらに大人になった。


「……なんだよゆっくりしてたのに。ん?君は……」


 この瞳、間違いない。

 あの人の瞳。

 

「……そうか、俺を助けにきてくれたんだね。ありがとう。せっかくだしお茶でもどう?」


「ふふっ、さっき頂いたわ。」


「えっ?そうなの?じゃあお気に入りのお菓子があるんだ。これなんか──」


「それも頂いたわ、ありがとう。」


「……これ、君が作ってくれたんでしょ?」


「えっ……えぇ、そうだけど……」


「ははっ、やっぱり。君を見てるとなんだかそんな気がしてね。」


 この笑い方……

 どんな体になっても、あの人はあの人ね……


「……この世界、いいでしょ。とっても落ち着くんだ。」


「えぇ、あの人らしいっていうか。」


「……俺達は臆病なんだ。この……未来の俺は、俺達らしくない事をしてるみたいだね。こんなにボロボロになって、傷ついて。本当はやりたくないはずなのに。」


「……」


「それでも、やらなきゃいけない何かがあるのか……辛いな、俺。このまま投げ出してもいいんだ、俺達は責めないよ。」


「でも……この人がやらなきゃ……世界が──」


「いいんだよ、世界がどうなろうと。俺はこれ以上傷つく俺を見たくない。当たり前だろ?こうして傷つく度にここに来て……俺達は説得するんだけど、でも俺はそれを拒むんだ。」


「……」


「まぁ、もし俺が逆の立場だったらやっぱり最後までやり遂げるんだろうな。」


「えっ……?」


「俺は傷ついてもいいけど、他の人が傷つくのは嫌だ。この世界だとなんだか矛盾してるけどね。俺はそういう人間なんだ。バカなんだよ、俺って。ごめんな、こんなバカが相手で。」


「……いいえ、私はそんなあなた達が好きだから……」


「!……いやー、こんな可愛い子にそんな事言われるなんて……幸せだな俺は。」


「ふふっ、あなた達モテてるわよ?」


「ははっ……ここに来れたのは君だけ。受け入れなきゃ普通は来れないんだ。だから、君なら出来るんじゃないかな。壊れてるはずの未来の俺が、この世界に君を受け入れたんだから。」


「私を……受け入れてくれた……ちょっと二人きりにさせてくれるかしら?」


「あぁ、頼んだよ。えーっと名前は?」


「ラウラ。忘れないでね、男のあなたも素敵よ。」


「ありがとうラウラ、俺を頼んだよ──」


 そう言って彼は消えた。


「さ、二人きりよ。あなたはどこが壊れてるのかしら?」


 ────


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