半分こ。
ある日マクシルと静かな森の中を散歩していた時だった。
それは突然目の前に現れた。
爆音と共に土埃が舞う。
木々はなぎ倒され鳥たちは逃げていく。
4メートルはある巨体。
顔はモアイ像の様な顔で、服は来ていない。
男か女かも分からない。
これは人間……なのか?
「なんだよコイツ……巨人ってこの世界にいたっけ?」
『……これは……』
「サクラ?」
『……アンドロイドで間違いないんですが……その……』
「ハル、これ何?5人くらいの魂が入り乱れてる。怖い……」
「5人くらい……アンドロイド……」
どこかで聞いたな……
!
「そうか!Qちゃんと似たような感じか!待てよ……って事は──」
考える前に目の前の巨漢は襲いかかってきた。
見た目とは裏腹に俊敏な動きだ。
マクシルをお姫様抱っこしながら回避する。
「マクシル、掴まってろよ。」
「うん。気をつけて。」
……スピードはメールクリオルス並か。
今までの新作共とは訳が違うな。
ちょっと試してみるか。
「おい、デカブツ!聞こえるか!」
『ハル様!やめましょう!!ここから早く──』
《デカ……ブツ。》
言葉を繰り返した……
今までとは違う。
「サクラ、こいつ……」
『……自我があります。でもハル様、これ以上は……』
やっぱりそうか。
もう少し会話してみるか。
「デカブツだ。大きい奴って事。言葉分かるか?」
《言葉……分かる。》
「俺の名前はハル。今をときめく14歳。お前の名前は?」
《ハル……俺、俺の名前……俺は……誰だ。》
「なんだよ、自分の名前も分かんないのか。何をする為に、ここにきたんだ?」
《ピンクの髪を壊す為。ピンク……ピンクって何だ?》
「ピンクってのは俺の髪の毛の色だ。綺麗だろ?」
《ピンク……綺麗。》
「ははっ、面白いなお前。」
《オマエ……俺の名前、オマエ?》
「いや、んー……いいの?」
《俺、オマエ。ピンクが壊す綺麗なハル。》
目茶苦茶だな。
でも確かに自我はある。
「ここ、いい場所だろ?静かだし、鳥も木も花も、近くに湖だってあるんだ。だから暴れたりしちゃダメ、分かった?」
《分かった。》
「よし、良い子だ。」
しかしコイツをどうするか。
この巨体だ、街中を連れ回すわけにはいかない。
センターにでも連れてけば回収されるかな?
その時地鳴りのような音がコイツから聞こえた。
これは……
「腹の音?お腹でも空いたか?」
《腹、空いた。》
「ちょっと待ってろ……ほら、サンドイッチ。ルイって子が作ってくれたんだ。俺も食べたいから半分こな。」
《半分こ?》
「こうやって2つに分けるだろ?美味しさも幸せも一緒に味わえるんだよ。ほら、食べな。」
《……美味しい。半分こ。幸せ。》
「な!その巨体じゃもっといるか……ちょっと待ってろ!」
シュンッ
《……》
……
……
シュンッ
「なっ!?なによこの巨人……こんなの見た事ないわね……」
「わー大っきい……この人にサンドイッチ作ればいいんだね?」
みんなを呼んで急遽作ってもらう。
オマエも見様見真似で手伝う。
力加減が分からないのか、手が大きすぎるのか、パンも具材もグチャグチャである。
それもまた思い出だ。
「いただきまーす……うーん、みんなで作ったから美味しいな!」
《美味しい。美味しい。》
「ワイワイ出来て楽しかったね。」
「……この巨人は一体何なの?」
「アンドロイドだってさ。5人くらいの魂で動いてるんだって。」
『……』
「マクシルちゃんもサクラさんもさっきから静かだけど……どうしたの?」
「……言えない。私からは何も……」
「ん?どうした?」
『……この者の命、間もなく尽きる事になるのです。』
「なっ!?なんだよそれ……聞いてないぞ!?何でだよ!」
『……元々無理があるんです。人の魂5人分を合わせるなんて。偶々出来た産物、それも自らの命を燃やして……持ってあと30分。』
「何で言ってくれなかったんだ!?もっと──」
『言えるわけないじゃないですか!!!』
「サクラ……」
『ハル様の……この者の……楽しそうな顔を見ていたら……言えませんよ……私だって何とかしたいんです!!でも……無理なんです。だったら、この世に生まれた意味を少しでも残して貰いたくて……』
「……」
『この者の命尽きる時、収縮されていくイクスが限界を迎え巨大な爆発が起きます。ハル様、テレポートするなり防壁で守るなりして下さい……ごめんなさい……』
「そんな……」
爆発?尽きる?
何でそんなことに……
オマエはどうなる?
せっかく仲良くなれたのに。
もっと楽しい事を教えたいのに。
分からない。
どうしていいか分からない。
「ちょっと……しっかりして頂戴……もしもの時の為にあなたの力、今借りておくわよ?」
ラウラは俺の手を握り俺のイクスを吸い上げている。
「ハルちゃん……オマエさん……」
《ピンクのハル、どうした。》
「……ちょっと悲しいんだって。どうしたらいいのかな……」
《……》
するとオマエは持っていたサンドイッチを半分にして俺に差し出してきた。
《ピンクのハル、半分こ。幸せ。美味しい。》
「っ……」
涙が止まらない。
この優しさを守ってあげたいのに。
俺は……
「……お、美味しい……な。ははっ……ありがとな……っ……」
涙で視界がボヤケている。
それでも、その涙越しにオマエが笑っているのが分かった。
『……!予定より早い……ハル様!もう間もなく爆発が!逃げましょう!』
「……お前達は離れてろ。ラウラ、みんなを頼んだぞ。」
「あなたはどうするの!一緒に──」
「最後まで……っ……せめて……最後まで一緒にいさせてくれ……」
『ラウラ様!!皆様を連れて早く遠くへ!』
「っ……いい?自分の事はちゃんと守るのよ!?」
ラウラが身体強化を使って逃げていく。
《ピンク……サンドイッチ……》
『もう限界です……ハル様……』
「……大丈夫だ、俺がついてるから……ごめんな、何にも出来なくて。」
《ハル……ハル……》
「大丈夫、怖くないよ。一緒にいるから。」
《ハンブンコ……》
「そう、辛い時も半分こすれば……それが友達だ。」
《ハル、、トモダチ、、ア……》
「ん?どうした?」
《ア、、リガト、ウ》
その瞬間辺りは壮絶な光と爆炎に包まれた。
そして、俺の中で何かが壊れた。




