距離感。
距離感っていうのは人によって違う。
それこそ日によっても。
ある日突然近くなったり、その逆も然り。
「ほら、寝癖付きっぱなしじゃない……ハンカチ持った?まだ眠たい?もう、じゃあ一緒に行ってあげるから。ヒロ博士、今日は研究休みます。マクシル、家の事頼んだわよ。」
「行ってきまーす……zzz」
シュンッ
「……なんだか母親みたいだね、彼女。」
「初めて名前呼ばれた。」
……
……
「ふー、終わった終わったー。」
『今日もリテイク無しでしたね!』
「お疲れ様、はい紅茶。」
「お、ありが……」
「……?どうしたの?」
『蟻が食べたいんですね?ラウラ様、蟻塚ごと持ってきて下さい!』
「そんな訳ないでしょ!もう……熱でもあるの?疲れた?」
ラウラがペタペタと顔を触ってくる。
おでこで熱を確認してくれる。
「ラウラ……」
思わずその豊潤な胸に顔をうずめてしまった。
女の子特有のいい匂いがする。
「あらあら、甘えん坊さんね。」
『あらぁ〜いいシチュエーション……ちょっとカメラ回しときますね。』
このむずむずとした気持ちは一体何なんだろう。
それなりに生きてきた人生だが、感じたことがない。
「……ここじゃ落ち着かないんじゃない?どこか静かな所にでも──」
シュンッ
「……よしよし、この部屋はどこかしら?」
「第4地域の別荘。お金が貯まったから買ったんだよ。緑に囲まれてて落ち着くし……全部終わったらここで喫茶店でもしようかと思ってて……」
「ふふっ、あなたらしいわね……私のそこ、居心地良いかしら?」
「うん……良い。」
顔が吸い付いて離れない。
魔力だな……
ラウラはずっと頭を撫でてくれている。
「……この世界の事、あなたに全部押し付けちゃってごめんなさい。あなただってやりたい事たくさんあるものね。」
「いや……それがこの世界にいる理由だから──」
ふと不安になる。
俺が存在する理由。
全てを解決した時、俺は……
「……もし、もし二択を迫られる事になったら……絶対にあなただけで決めちゃダメ。いい?」
「……でも──」
「でもじゃない。あなたがいなくなったら……私、嫌だから。」
ラウラが強く抱きしめる。
「私もあなたも……やらなきゃいけない大切な事がある、あるんだけど……そんな事どうでもよくなっちゃうくらいあなたが好き。今も甘えてくるあなたが凄く愛おしい。」
そう言ってラウラはキスをしてきた。
「私があなたに言った事、覚えてる?」
「……いっぱいあるからな、どれだろう。」
「もう……あなたとなら幾つになっても幸せ、それに私が動けなくなるまであなたに料理を作ってあげる、って。」
「……プロポーズみたいだな。」
「そういうつもりで言ったのよ……どういう意味だか分かるかしら?」
「……こういう意味だろ?」
ラウラを押し倒してそのまま深いキスをする。
お互いを確認するように、何回も。
距離感っていうのは人によって違う。
気付かないうちにお互いが近づいていて。
いつしかそれは一つに重なる。
もっと深く交われば、この胸のむずむずとした正体は分かるのだろうか。
「キス、好きなのね。」
「ご、ごめん……」
「ふふ、もっと来て。でも何か言う事あるんじゃない?」
「……いただきます?」
「もう……あなたの気持ち、まだ聞いてないんだけど?」
「す……」
「す?」
「……愛してるよ。」
「……」
「なんか言ってよ、恥ずかしい。」
「ふふっ……召し上がれ。」
確かに……どうでもよくなってしまう程溢れ出る感情。
今はただ、重なり合った距離感を味わって……
世界平和はその後で。




