ノスタルジック。
「くっ!なんで当たんないのよ!」
「会長邪魔っす!おりゃーっ!」
イクス世界大会まで何にもしないのもアレなのでゲスと会長二人を相手にしている。
二人には俺の力を貸して身体強化させてある。
「もっと早く動けないの?俺まだ1割くらいしか力出してないんだけど。」
「これだけ動けてるのにまだ1割なの?どうなってるのよ……」
「ハァハァ、自分ちょっと休憩っす。」
「ゲスだらしない。」
「会長さん、またハルちゃんと戦ってる……」
「次席と3席の違い。ゲスは根性がない。」
「いや、あるっすよ!あるけど……次元が違うっす。俺もハルさんと毎日組手やってるのに……何でだ?住む世界が違うっす……」
【──普通じゃないわ。ちょっと違う世界に住んでる様なものよ、勿論あの人も──】
「……」
「ルイさん?そっち行ったら危ないっすよ!」
「ちょっと……貴女──」
激しい攻撃の中ルイが淡々と俺たちの間に入ってくる。
「ルイ?」
そのままルイが俺の口にキスをする。
「はい、私の勝ち。休憩しよ?」
「う、うん……」
「どうなってんすか?今の……」
「完全に意識の外。ルイの勝ち。」
……
……
「みなさんお疲れ様っす!じゃあまた明日!」
学校も終わり皆家路につく。
「よし、じゃあ俺たちも帰るか。」
「……ハルちゃん、ちょっと時間あるかな?」
「ん?どうした?」
「……ちょっとね。」
少し困ったような顔をしてルイは答えた。
「とりあえずラウラだけ送ってくよ。行くぞ。」
シュンッ
「……」
シュンッ
「お待たせ。」
「ふふっ、ニ秒くらいしか待ってないよ?」
「ははっ。何かあったの?」
「……私の部屋までいいかな?」
……
……
ルイの部屋につく。
相変わらず整理されて綺麗な部屋だ。
変わった事と言えば俺の電子ポスターやら雑誌やらが置いてある事だ。
「何か嫌な事でもあった?」
「……」
そのままベッドまで連れて行かれ押し倒される。
もう慣れたものだ……
「ルイ?」
ルイは何も言わずに俺の胸に耳を当ててきた。
「……」
「どうした?ちゃんと鳴ってるだろ?」
「うん……今ちょっと速くなった。」
「緊張してるからな。」
言葉には出さないが何か心配事でもあったのかもしれない。
俺に出来る事は何だろう……
「実は渡したいものがあって……」
「渡したいもの?」
ルイは部屋の奥からあるものを取り出してきた。
よく見た形。慣れ親しんだこれは……
「ギターだ!えっ!?なんで?この世界にもあるの!?」
「ふふっ、夢の中のハルちゃんがこれをよく弾いてたのを思い出して……70年くらい前に急にこの楽器が現れたんだって。不思議だよね……もしかしたらハルちゃんのいた世界から来たのかも、なんてね。」
70年前……
平行世界を侵略した時か。
この世界にも何となく似たような物があるのは知っていたけど……
これは俺がよく知っているギターと同じ。
弦が6本。
チューニングは……だいぶ狂ってるな。
♪ ♪
昔からよく弾いていた。
弾く前のチューニングは俺の中でのルーティン。
自然と指が動き出す。
手の大きさが違い指先も硬くはない。
それでも体は覚えている。
「〜♪」
口笛を吹きながら弾く。
昔はよく練習してたっけな……
この世界に来て初めての感覚。
そう……ノスタルジック。
自然と涙が溢れてくる。
弾き終わるとルイが拍手をしてくれた。
「素敵……ずっと聴いてられる。」
「そ、そうかな?照れちゃうよ。」
「……少しでもハルちゃんがハルちゃんらしくこの世界で暮らせるようにって思って……買っちゃいました♪」
「ルイ……」
上手く言葉が出てこない。
俺の為に……
何かが少しずつ満たされていく。
俺の中にある、足りない何か。
当たり前だったのに、いつしか忘れていた大切な物。
「ふふっ、良かった。ハルちゃんらしい顔してる。」
「えっ?」
そのまま押し倒される。
「虫も殺せないハルちゃんなんだから……あなたには拳を握るのは似合わない。」
そう言いながら唇を唇で塞がれた。
「せめて今だけは……私と同じなんでもない、どこにでもいる女の子。いい?」
「で──」
何か言う前に塞がれる。
「分かった?」
「うん……ってちょっとルイ?そういうのはせめて体を洗ってから……」
「ダメ、言う事聞きなさい。ここでは私の方が強いんだから。」
世界最強のアンドロイドも、たった一人の女の子の前には敵わない。
『さぁルイ様!録画の準備は出来ました!ハル様の麗しき鳴き声を!!』
「よーし!鳴かせちゃうぞー。」
恥ずかしくも満たされる夜だった。




