昔話。
「ほらほら、そんなんじゃ当たらないぞ!」
「くーっ、なんで当たんないんすか!?」
放課後、ゲスと組手を行う。
かれこれ2ヶ月は続いているだろうか。
強くなりたい。
ゲスの一言で始めたことだ。
「これでどうっすか!」
電撃を帯びながらの回し蹴り……はフェイントで本命はスカートをめくってくる。
最早組手ではない。
デコピンで攻撃をはじく。
「そんなんじゃパンツは見えないぞー。」
「ハルさんのパンツ……!!」
それを聞いた隊長が興奮している。
「ハルさん強すぎっす。どうしたらそんなに強くなれるんすか?」
「よく食ってよく寝る事だ。」
「そんなの子供騙しっすよ……」
アンドロイドに転生しました、なんて言ったらどう思うだろか。
いつかは言わなきゃいけないのかな。
「俺は強さってのは腕っぷしじゃないと思ってるけどな。」
「じゃあ何なんすか?」
「そうだなー……ゲスはなんの為に強くなりたい?」
「負けたくないからっす!」
「つまり自分自身の為だよな。それもきっと大事なんだろうけど、それだといつか限界がくると思うんだ。」
「限界……」
「俺はな、この世界のみんなを守りたい。勿論俺自身の為でもあるけど……例えこの身が滅びようが必ず守る。特にお前達の事はな。」
「ハルさん……」
「それが俺の信念であり、愛だ。前に言ったろ?お前達は俺のかけがえのない宝物だって。誰かの為に戦えるから俺は拳を握る事が出来るんだよ。それが俺の強さだと思ってる。」
「まるで何か起きるみたいな言い方っすね。」
「……起きないように戦ってるんだ。もし起きたとしてもそれは俺一人で──」
「水くさいっすよハルさん!ハルさんが何かと戦ってるのは薄々感じてるっす。勿論みんなもっすよ。俺達じゃ力になれないのは分かってるっすけど……ハルさん一人に抱え込ませらんないっす!なぁみんな?」
「そうですよハルさん!アナタは俺達の……大切なボスであり友人。俺達にも何か出来る事があるはずです!」
男達みんなが同調する。
「これが俺達の愛っす。みんなハルさんラブっすから!」
俺の……俺のしてる事は間違っていないのかな。
みんなが俺についてきてくれる。
俺は幸せ者だ。
「よし、それじゃあ昔話でもするか。ラウラー!」
名前を呼ぶとどこからともなくやってくる。
「呼んだかしら?」
「すげー、飼いならしてるっすね。」
「殺されたいのかしら?」
「冗談っす……」
「例の件、こいつ等に話してくれ。」
「えっ!?いいの?巻き込みたくないって……」
「いいんだ、何かあっても俺が守る。」
「そう……貴方達、覚悟して聞きなさい?」
そう言ってラウラは口を開いた。
およそ70年前になにがあったのか。
今教えられている狩りはその時作られた偽りの習わしだと。
何の為に一般人を巻き込んでイクスを鍛錬しているのか。
この世界いる反乱軍の事。
各地域にいるアンドロイド。
その目的。
そして5年以内に起きる事。
全てを聞かされたみんなは呆然としていた。
当たり前だ。
「以上よ。何か質問はあるかしら?」
「そ、そんな事言われたって信じられないっすよ!じゃあなんすか!俺達が……この世界を作った俺達が悪いっていうんすか……」
「私はそう思っているわ。あなた達文明人を根絶やしにするのが私の目標だったから。」
「……言わせておけばこの野郎!俺達だってな──」
「大丈夫!お前達落ち着け。さっき俺が言ったこと忘れたのか?」
「ハルさん……」
「俺はこの世界のみんなを守りたいって言ったろ?大丈夫、俺がいる。ラウラも煽るな、分かったな?」
「ふんっ……」
「……俺はこの世界が好きだ。こんなにワクワク出来る世界を作ったお前達の先祖は凄いと思う。みんなその文明に肖って生活しているんだから。今も昔も悪い事をしている奴等は大勢いる。それはいけない事だよな?分かるだろ?だったらそれでいい、お前達が間違った道に進まなければ……それでいいんだよ。大切な事は今何をするのか、どんな未来を作っていくかだ。俺はな、みんなが笑って暮らせる世界を作りたい。馬鹿にされようが譲れない。俺はこの世界もこの世界の人達も、みんな大好きだから。大丈夫、どんな奴だってこのハルちゃんスマイルでイチコロだから……ねっ♪」
シェーナの所で身につけた笑顔。
男達は悩殺である。
「可愛ぇぇ……ハルさんチューして下さいっす!!」
「するかバカ!……もう大丈夫そうだな。みんな良い顔をしてる。」
芯のある、活きた表情。
「という訳で俺は政府と争う。争うけど戦いたくない。だけどみんなと仲良くしたい。どう?」
「矛盾もイイトコっすよ……ハルさんらしいっすけどね!」
「大丈夫だ、ハルさんなら出来るって!」
「……そうか!ハルさんがこの世界のボスになれば……お前達!ハルさんをこの世界のトップにさせるぞ!!」
男達の雄叫びが響き渡る。
「あのな、あんまり物騒な事はするなよ?」
[まずはセンターを占拠して…… いや、ここは一般人と連携をとってだな っていうかアンドロイドなんて本当にいるんだ…… 革命だ、革命 やっぱハルさん可愛い 俺達も鍛えておくか じゃあ目標はセンター占拠だな]
「お前らな……」
「ハルちゃーん、マクシルちゃんとケーキ作ったけど食べる?」
「おう食べる食べる。何ケーキかな──」
「……世界相手ってのに呑気っすね。」
「いいのよ、あれがあの人のやり方なんだから。」
「やり方ねぇ。」
「世界を変える事もケーキを食べる事も一緒。ね、あの人らしいでしょ?」
「……会長もハルさんラブっすね。」
「……そうね、ラブよ。あんな人、世界中探してもいないもの。あの人の為なら私は──」
カシャ
「会長のデレ顔頂いたっす!おーいみんな見てみろよいいもん撮れたぞー!」
「……殺す。」
「えっ?ヒャーー!殺気こもり過ぎっす!」
「やっぱりアンタ達なんか滅ぼしてやる!」
「へっ、逃げ足なら負けないっすよー!」
「ふん、あの世で後悔しなさい。これが私の……全力よ!」
「はっ?早っギャーーーーー!!!!」
遠くで爆発音が聞こえた。
「あいつらなにやってんだ……おーいラウラもこっちこいよ!」
「ふふっ、なんだかみんな楽しそうだね。」
「なっ、俺も楽しいよ。」




