お伽話。
「悪いな、みんなお待たせ。」
「主役が来たっすよー!遅かったっすね!」
宴会場に戻ると輪をかけて盛り上がっていた。
ん?このニオイ……
「みんな酒飲んでるのか?サクラ、酒って……」
『15歳からです。ハル様は来年からですね。』
……来年の文化祭は酒を出してみるか。
「みんな楽しそうでいいよね、私達も早く飲みたいなー。」
「そうだな、そしたら一緒に飲もうな。」
「ふふっ、約束だよ?」
1年後、一体どんな世界になってるのかな。
「ハルさーんお願いがあるっすー!」
「おっ、なんだ?」
「腕相撲で勝ったらホッペにチューして欲しいっす!ここにいる全員の総意っす!」
酔っ払い達め……
「よーしいいだろう!誰でもかかってこい。」
男共が雄叫びをあげる。
単純な奴らだな。
「じゃあ自分からやるっす!ハルさんのチューっす!」
秒殺。
「はい、次の人。」
「自分がやらせてもらいます。」
隊長か。
「ハルさんの唇……うぉぉおおお!」
瞬殺。
「面倒だな、何人でもいいからまとめてかかってこい。」
50対1。
数人のほうが効率良くないか?
「お前達!ハルさんの唇だ!やるぞ!!」
隊長が音頭を取る。
皆が鼓舞される。
が、ピクリとも動かない。
腕のひと振りが男達の夢を打ち砕く。
「私もやってみようかな……」
「ルイ?」
ルイが上目で俺を見てくる。
これは……空気を読めって事か?
「ハルさん、インチキは無しっすよ!」
そうは言ってもな……
ルイが全力で倒しに来る。
「んーっ!倒れろー!」
可愛いな……
「ルイ、後でな。」
「えっ?……」
パタン
顔を赤くして俯いている。
「マクシルはやんないんすか?」
「さっきしたからいい。」
「そうっすかー……へっ!?」
マクシルの一言でやいのやいのと盛り上がる。
まったく……
「会長もやるっすよ。」
「いいわよ私は……」
「負けるのが怖いんすね?」
「なんですって?」
煽るなよ……
そして乗るなよ……
「真剣勝負よ、手抜いたら許さないんだから。」
えー……
真面目にやったら瞬殺だし……
かと言って手を抜いたら怒られるし……
おっ、結構強いな。
これは身体強化してるのか。
でもまぁ……
「そんなんじゃ俺には勝てないぞ?」
「くっ、なんて力なの?ビクともしない……」
「……ラウラが勝ったらキスしなきゃいけないんだけど、良いの?」
「そっ、それは……」
「それは?」
「……好きにすればいいじゃない……」
顔を赤らめてラウラが言った。
こんな顔もするんだな。
少し力が入ってしまい、俺が勝ってしまった。
「あっ、勝っちゃった。」
……
……
あれから2時間が経った。
みんなはというと……
「見事に全員寝たな。」
「どうしよっか……お部屋に連れてく?」
「いや、ここ朝まで借りてるし寝かしといてやるか。女子達は部屋に戻ろ。」
……
『と言う訳で部屋に来ました!』
「ラウラと相部屋なんだな、宜しく。」
「そうね……」
なんか機嫌が悪い気がする。
困ったな……
「お、夜景が綺麗だよ?見て見て。」
「はぁ……」
間が持たない。
どうしよう、何か話題を……
「ラウラって誕生日いつ?」
「えっ?」
いかん、適当に質問してしまった……
「……今日よ。」
「あぁそうなんだ……今日!?」
今日って……あと15分で終わっちゃうぞ?
「……ラウラ、ちょっと目瞑って。」
「何よ……?」
「いいから、なっ?」
「……はい、これでいいかしら?」
「そのまま10秒たったら目を開けて。」
「?……9、10。えっ?」
「誕生日おめでとう。」
第6地域上空。
都市の夜景を一望出来る場所だ。
「凄い……綺麗ね……」
「……この前さ、ごめんな。」
「何の事かしら?」
「ラウラの仲間が大勢殺されたっていうのに、俺はラウラの気持ちを考えてなかった。ごめん……」
「……いいのよ、もう。みんな覚悟はしてたから。」
「俺もさ、不安なんだ。一歩間違えば俺はただの化け物。自分の行いが正しいのかも分からない。」
「……」
「でもさ、俺の仲間の笑顔を見てると……なんて言えばいいかな……」
「そんなに困った顔しないで。大丈夫よ、アナタはアナタの信じた道を進めば良い。その結果がその笑顔なんでしょ?」
「ラウラ……」
「私も分からなくなったのよ。アナタのお友達が余りにも変わりすぎてしまったから。それはアナタのせいなんでしょうけど……アナタならこの世界を本当にひっくり返せるんじゃないかって、そう思えるの。もう少し近くで見届けたい……アナタが作るお伽話を。」
「ありがとう、ラウラ。」
「……アナタの世界ではジャンケンっていうのがあるんでしょ?私と勝負しない?」
「えっ?いいけど……」
「私が勝ったら……欲しいものを頂くわ。誕生日ですから。」
「欲しいもの?まぁいいや、ルールは分かるんだな?いくぞ、ジャンケン──」
……
……
「あっ、二人ともどこに行ってたの?部屋開きっぱなしだったよ?」
「ごめんごめん、ちょっとな。」
「会長さん、なんだか嬉しそうだけど何かあったの?」
「ちょっと運が良かっただけよ。」
会長の照れた顔とホッペの感触を思い出し、俺まで少し照れてしまった。




