憧れ。
『ハル様、寝れないのですか?』
第6地域を下に見て空を歩く。
まさに空中散歩だ。
「最近色々な事がありすぎてな。ちょっと頭の中整理しないと……」
『夜風が冷えますよ?上着を……』
「ラーシャ地区に比べればどうって事ないさ。その気になれば炎だって纏えるし。」
『あれは中々の雷と炎でしたね。』
「焦げたカレーだもんな……」
ラーシャ地区でオルヴィニエーラを壊した際、炎と雷の複合技を試してみた。
改めて、この体と力がとんでもない事を認識させられた。
「いい景色だな。俺のいた世界とは大違いだ。」
『……戻りたいですか?』
「まさか、選んでくれて感謝してるよ。」
『ダーリン……』
「ははっ、やっぱりサクラと話すと楽しいな。」
『私も幸せです。最近邪魔者が増えてきましたから。』
「……ごめんな。こうやって二人だけの時間作るからさ。」
『ま、私がハル様の一番ですから。ね、ダーリン。』
「そうだな、帰るかハニー。」
『キャーキャー!!』
……
……
『というわけで二日目ですね!』
今日は各自自由行動の時間だ。
女子グループは街を散策する事にした。
何となく、行き交う人の視線が気になる。
何だろう、そう思っていたら目の前の女性に声をかけられた。
「あのー、もしかしてモデルやってます?」
「えっ?あぁ、やってるよ。」
「私あなたに憧れてて……握手してもらってもいいですか……?」
俺なんかに憧れてくれるなんて……
モデルやってて良かった……
その後何人もの人に声をかけられた。
知名度なんて第2地域だけ、と思っていたけど結構知られてるのかな……?
「ハル、有名人。」
「そうみたいだな。ゆっくり散策したいんだけど……昨日は声かけられなかったのに。」
「喧しい連中がいないからじゃないかしら?」
確かにいつもより静かだ。
あいつらといると退屈しないもんな。
「おっ、ここだここ。朝予約しといたんだよ。ちょっと待ってて。」
「ここってケーキ屋さんかな?ハルちゃん甘いの好きだね。」
「お待たせー、どこかで食べれる所ないかな?」
「あっちに公園がある。」
……
……
「何のケーキ買ったの?」
「見てろよー、じゃーん。」
猫の手の形で肉球も再現されてるケーキ。
おめでとうメッセージもつけてもらった。
「はい、ラウラ誕生日おめでとう!」
「えー、会長さん誕生日だったの?」
「昨日だけど……わざわざ私に?」
「1日遅れでごめんな。おめでとう。」
「……ありがとう。嬉しいわ。」
喜んでもらえて良かった。
にしても何か視線を感じるな。
あの木の裏か?
「なぁ、あそこに誰かいない?」
「隊長さんだよ?ねっ、隊長さん。」
ルイが呼ぶと木の裏からスーッと隊長が現れた。
「どうした?一緒に食べるか?」
するとスーッと木の裏に戻っていった。
「あいつどうしたのかな?」
「昨日も私達の事見守ってくれてたよね。」
……全然気が付かなかった。
「ハル危機感なさ過ぎる。」
「……にしてもなんで隠れてるのかな?おい隊長出てこいよ。」
そう呼ぶと俊敏にこちらに来た。
「何か御用でしょうか?」
「なんでこそこそしてるんだ?」
「ハルさんは大切なボスですから。影からお守りするのが役目かと。」
「俺がやられると思うか?」
「思えません。しかし……可憐な女性ですので……」
ナルホドな。
可愛い所あるな、コイツめ。
「ほら、一緒にケーキ食べようぜ?」
「では……」
みんなで仲良く分け合う。
この緩い時間が大好きだ。
「隊長さん、いつもハルちゃんの事遠くで見守ってるよね。」
「へー、そうなんだ。ありがと。」
「……初めは罪悪感があったんです。俺はハルさんに何十発と拳を入れた……それなのにハルさんは笑顔で俺を迎えてくれたんです。この人の為に何かしないと、そう思っていました。」
「そんな事気にすんなって。」
「そういう訳にはいきません。ハルさんと一緒にいると思うんです。可憐で強く、心の底が見えない程優しい。この人の下にいれて幸せだ、この人は俺の憧れだと。」
憧れ……
「少しでも側にいたいんです、と言っても先程の距離感が俺には丁度いいのかと思いまして……」
「俺なんかが憧れの対象でいいの?」
「卑下しないで下さい。俺の世界を180度変えてしまったんです。それ程アナタは魅力的なんです。」
「なんだか照れちゃうな、ありがと。」
「……俺には夢があるんです。いつか、いつの日かアナタに勝つ。そして……」
「そして?」
「……ホッペにキスをしてもらう、それが俺の夢です。」
誰かに慕われ想われる、こんなにも幸せな事なんだと改めて思わせてくれる。
「その日を待ってるからさ、頑張れよ?」
ウィンクをして可愛らしく微笑む。
「隊長さん!鼻血が!」
「立ったまま気絶してるわね。」
「可愛いやつだな。」




