素直。
「ハルさんこのお菓子どうですか?」
「お、ありがとな。」
「いや、ハルさん俺が持ってきた方を食ってくれよ。」
「さんきゅー。」
「ハルさーん、お菓子持ってきたっすよ!」
「……そんなに食えるかー!」
超大型のバスに乗って第6地域に向かっている。
なにせ人数が60人近くいるからまとめるにも一苦労する。
文化祭の後、ヴィンスター派だった連中はそのまま俺の所に居着いてる。
今日は2泊3日の祝賀旅行だ。
「しかしハルさんよくこんな豪華なバス呼べましたね。」
「あぁ、運営委員会にお願いしたら追加予算くれてな。」
(絶対に揺すりましたね……)
「ハルさん、元ヴィンスターの連中は分かるんすけどなんでアイツもいるんですか?」
そう言うゲスが指をさしている方向には会長ラウラが座っていた。
「功労者だし人数多いほうが楽しいだろ?」
「自分苦手っす……」
会長がこちらに気づいた。
ゲスを睨みつけている。
「ハルさん機嫌取ってきて下さいっす……」
とりあえず会長の隣に座る。
近寄りがたいのか周りにはマクシル以外誰もいない。
「楽しんでくれてる?」
「……これが楽しんでるように見えるのかしら?」
「はは……ほらお菓子いっぱい貰ったんだ、一緒に食べようよ。」
「いらないわ。」
「固いこと言わずに、はい、あーん。」
「……あーん。」
照れくさそうにしながら口を開けお菓子を食べる。
「バスの中で食べるお菓子っていつもより美味しいよな。」
「……そうね。」
「ハル、あーん。」
マクシルが隣に座り口を開けてきた。
「はい、どうぞ。」
「美味しい。」
「なっ、美味しいよな。」
「ハルちゃん私もあーん。」
……
「うちの派閥は偏差値高いっすね。」
「うむ、皆可愛いからな。」
「しかしあれだな、付け入る隙が無いな。」
「そりゃハルさん相手っすから。俺らはこうやって見守ってるんすよ。」
「うむ、こう微笑ましくなるよな。」
「お前達、達観してるな……」
第6地域、場所は俺達の世界でいうと九州地方になる。
ヤマト地区最大の観光地。
ワクワクするなー。
途中休憩エリアに入る。
「よーし1時間散策していいぞー。ここに集合だからな。」
会長だけつまらなそうにしていたので誘い出す。
「一緒にいこうよ、ホラ。」
「いいわよ私は……」
「いいから、来いっ。」
そう言って強引に手を繋いで引っ張る。
会長は強めに言うと素直になる癖がある。
「分かったから……手を……」
「手がどうした?」
「……恥ずかしいから……」
「なに言ってんだよ、ほらデートデート。」
「デート……」
様々な屋台が並んでいる、観光客目当のスポットなのだろう。
「会長はこういう所来たことあるの?」
「ないわよ……その、手を離してくれないかしら……」
「嫌なの?」
「嫌じゃないわよ……」
色々と買食いをする。
すると会長がある店の前で立ち止まった。
「どうした?……ふーん、これ欲しいの?おっちゃん、2つ頂戴。」
「はいよ、切れたら願いが叶うからね。」
「だってさ、ほらお揃いだな。」
この世界にもミサンガがあるんだな。
こんなに文化が発達していても、こういったオカルトチックなのは変わらないのかな。
ミサンガをつけた会長は少しだけ微笑んでいた。
「……ありがとう、大事にするわ。」
「どういたしまして。」
「ハルさーん、なにしてるんすかー?」
「おう会長とデートだ。」
「ハルさん!これ美味しいですよ!」
「いやいやハルさんこっちの方が美味いから食ってくれよ。」
「ハルちゃんあっちに可愛いお店あるよ!行こ?」
「……愛されてるのね、彼女は。」
「ハル、みんなを好きになってくれる。だからみんな好きになる。」
「不思議な人ね……」
「アナタも今日は素直になる。じゃないとハルが困る。」
「……そうね。」
「おーいマクシルと会長もこっち来なよ、一緒に行こうぜ。」
「今行く。ほら、アナタも来る。」
「……」
会長が走って俺の前に来る。
俺の目を見て動かない。
「ん?どうした?」
「……名前で呼んでちょうだい。アナタだけよ?他の人には呼ばせないから。」
「……ラウラ、ほらあっち行こうぜ。」
「自分も呼ぶっすーラウラー!!」
その瞬間ラウラの回し蹴りがゲスにクリーンヒットする。
身体強化を加えていたのかゲスは遥か彼方へと飛んでいった。
「ふん、気安く呼ばないで頂戴。」
この件で俺以外誰もラウラと呼ぼうとはしなくなった。
楽しい旅行の始まりだ。




