存在。
「お邪魔しまーす。」
先程からルイが一言も話さない。
機嫌が悪い訳ではなさそうだが……
部屋に入るとルイが服から手を離した。
「ルイ……?」
ルイが後ろから俺を抱きしめる。
「ちょっとこうしてたい……」
「……うん。」
ゆっくりとした時間が流れる。
背中のルイの感触が心地よかった。
「……この前の遠足でハルちゃん大変だったでしょ?」
「いや、大した事ない──」
「……それでね、映画とかで見るような……別世界にハルちゃんがいるように感じて……おかしいよね、目の前にいたのに。」
「……」
「私の前に突然現れて……私の知らない世界をいっぱい見せてくれて……いつか突然いなくなっちゃいそうで……」
「そんな事……」
「でも不安で……こうやって抱きしめていれば少しは安心出来るの……」
「ルイ……」
いつの間にか誰かの中で自分の存在が大きくなっている。
向かい合って俺から抱きしめる。
「俺は……やらなきゃいけない事があってさ、それが俺の存在する理由……って今まで思ってたんだ。でもそれは俺だけなんだよな、周りの人は……ルイにはそんな理由関係ないもんな。ごめんね、ルイ。」
「ハルちゃん……」
「その……いなくなったりしないから。ここにいるよ、俺は。」
どちらからでもなくキスをした。
火照った顔は海で遊んだからか、それともルイのせいなのか。
「ハルちゃん顔真っ赤、可愛い。」
「いや、これは……見ないで……」
「そう言われると見たくなっちゃう。見せて……」
その場でルイに押し倒された。
ルイの甘い声で頭がクラクラする。
少し大人びた表情で見つめられ、また顔が熱くなる。
「ハルちゃん……好き。返事はしなくていいから……」
そう言ってルイは強く俺を抱きしめ、またキスをした。
「ふふっ、私が一番好きだよ。負けないんだから。」
サクラが何か叫んでいたがよく聞こえなかった。
今はただ、この甘い空気に浸かっていたかったから。




