メールクリオルス。
この世界に7体しかいないアンドロイドの1つ。
その姿は俺達となんら変わらない。
青白い髪をした男。
ただ1つ違う事、その目には生気がない。
「いきなりボスかよ……逃げるか?」
『……少し戦ってみましょう。あの者の力がどれほどか調べたいので。』
「えー、大丈夫かよ──」
言葉を言い終わる前に奴は攻めてきた。
というか、
「早っ!」
奴とは5メートルほど離れていたがコンマ何秒かで俺の目の前まで来た。
シュンッ
お互いが目視できる距離までなるべく離れる。
「サクラ、アイツ早すぎだろ。」
『ここまで早いとは……来ます!』
100メートルは離れていたがやはり一瞬で移動してくる。
そのスピードと共に拳が飛んでくる。
が、防壁でガードする。
「やべーな、防壁が壊れるギリギリだぞこれ。」
シュンッ
「市街地だとやり辛いな……」
『ハル様、こちらから攻めてみましょう。』
「簡単に言いよるな……よしっ!」
全力で奴に向かってダッシュする。
「うわっ!早っ!」
奴が来たスピードよりも格段に早い。
これがプロトタイプの力か。
「ようメルちゃん、今度はこっちの番だぜ!」
渾身の力でぶん殴る。
奴も防壁を張っていたが一瞬で崩れ落ちる。
拳は顔面にヒットし遥か先のビルまで吹っ飛んだ。
「やべー大丈夫かあれ?」
『どうでしょう……この程度でやられる相手ではないと思いますが。』
その時遠くのビルで爆発音が聞こえた。
「まだ来るな、これ。」
雄叫びと共に奴がきた。
なんだ、全身が赤く見える……
「アイツ、炎を纏ってる?」
『分子の運動を早くし発火させているのでしょう。熱そうですね。』
「冷静だなおい。まぁ同感だけど……」
奴は先程よりも激しく攻撃してきた。
纏っている炎をこちらに射出させ動きが止まった所に近接戦闘を仕掛けてくる。
「熱っ、たまんねーなこれ。」
しかし奴の攻撃を全て見切る事が出来る。
どうなってんだこの身体は……
シュンッ
一旦距離を置く。
「どうだ、データは取れたか?」
『まだ全力を引き出せていません。もう少しやってみましょう。』
「かえりてー……」
すると遠くから大量の炎の粒がこちらに飛んできた。
「なんだこれっ、数が多いな。」
避けるだけで精一杯だ。
背後にある建物はその粒が当たると粉々に砕け燃えていった。
「え……なにこの威力……」
『この粒の威力は使用者の力そのもの。奴の力はそれ程までに凄まじいという事です、気をつけて下さい。』
当たったら一溜りもない。
こんなもの人に向かってやったらどうなる?
「面倒だな、ちょっと全力出すぞ!」
手袋を外し大気が乱れる。
「炎にはこれだろ?」
一帯に大雨を降らし更に暴風を呼ぶ。
奴の動きが一瞬止まった。
「こんにゃろー!」
全力で雷を叩き落とす。
その大きさは周囲のビルをも凌駕する。
落雷の影響で辺り一帯は停電した。
「どうかな……うわぁ大丈夫かこれ?」
雷をまともに受けた奴は黒焦げた塊になっていた。
しかしよく見ると微かに動いている。
『自己修復を始めたようです。この様子だと相当な時間が掛かりそうですね。停電している今がチャンスです、帰りましょう。』
「じゃあな、メルちゃん。」
シュンッ
……
……
「なに君?ビショ濡れじゃないの。」
帰るとヒロが驚きながらタオルを渡してくれた。
「あぁ、ちょっとな……店なんだけどさ──」
「無くなっていたろう?大丈夫、彼女は先に逃げてるさ。」
「だといいんだけど……あー疲れた。」
『ヒロ様、メールクリオルスとの戦闘データです。』
「あぁありがと──えっ?!何だって?!」
ヒロがコーヒーカップを落とし驚いている。
「大した事なかったな、アイツ。」
『ハル様の初陣大勝利ですね!』
「えっ?アンドロイドでしょ!?何ともなかったの!?」
「ちょっと熱かったな。」
『夏にはまだ早いですからね。』
「……はっはっは、大したもんだよ君達は。」
嬉しそうにヒロが笑う。
奴はまだ本気を出してはいなかったと思う。
それでもこの身体とサクラがいればなんとかなる、そう思える気がした。
っていうかなんで俺狙われてたのかな?
……
……
同時刻、各地域に伝達される。
アンドロイド破壊。
この出来事により世界情勢は一転する事になる。




