センター。
宙に浮くバスのような乗り物に乗る事30分、センターが見えてきた。
パッと見て分かるスケールの大きさに只々驚くばかりだ。
どこまでも伸びる摩天楼、空を行き交う人々。俺達が思い描いている未来都市そのものだ。
「そこのゲートから入るんすよ、端末持ってれば弾かれないんでそのまま入りましょうっす。」
レーザーのような赤い光のカーテン。
これが検問みたいなものだろう。
センターは塀に囲まれているがそれほどの高さはない。
これだと簡単に侵入出来るのでは……
「ハル、泥棒?」
「いや違うよ、セキュリティが気になってさ。」
「……この都市全体に強力な防壁が張られている。どんな攻撃も通しそうもないくらい厚い。」
「へー、流石マクシル。そんな事まで分かるんだな。」
「別に……」
相変わらず褒めると照れる。
可愛い奴だな。
赤いカーテンを抜けたその先は想像以上だった。
「す、すげぇ……」
往来の数。
賑わい。
華やかさ。
全てが桁違い。
こんな文明に適うわけない、そう思わせる程だ。
「なぁあれなんだ?空にでっかい島みたいのが浮かんでる──あっちは?あの乗り物なんだろう──動かないで空を移動してるけどあれなんだ?」
「……ハルさんって──」
「ふふっ、ほらハルちゃん端末にパンフレット入ってるよ?一緒に見てみよ?」
「お、そうなんだ。へーどれどれ……」
「……ああいう包容力が大事なんすね。」
「ゲス、ハルは子供っぽいんじゃない。純粋なだけ。ゲスみたいに歪んでない。」
「自分だってピュアっす!」
「…………ふっ。」
「なっ、鼻で笑うことないじゃないっすか。」
……
……
「とりあえずどうするか。みんなどこに行きたい?」
「自分は庭みたいなもんすから、どこへでも。」
「私は服とか見たい……かな。」
「……機械。」
「なるほどなー、じゃあ──」
「ハルとルイ、私とゲスで分かれる。これでいい、じゃあ行ってくる。」
「えっ、なんすかちょっと……」
そう言ってゲスはマクシルに引きずられていった。
すごい力だな……
「んじゃあ行くか、服だっけ?」
「えっと……うん。」
……
……
女の子ってのは難しい。
買い物をするにも男と違う。
目的もなくただ見て回る。
特に買うわけでもなく……
「ハルちゃんこれどうかな?」
「あぁ、可愛いよ。」
「これは?」
「うん、可愛い。」
……
……
「どっちがいいかな?」
「両方可愛いんじゃないかな。」
かれこれもう2時間これである。
可愛いのは本当だけど。
「ハルちゃん選んで?」
「えっ、俺が?ルイの好きな方でいいんじゃない?」
「いいから選んで?」
「うーん……これかな?」
「うん!じゃあこれ買ってくるね。」
そんなんでいいのか……?
……
……
「〜♪」
ルイが鼻歌を歌っている。
服を買ったのが嬉しかったのかな。
「ハルちゃんは何か買わないの?」
「うーん、そうだなー……」
ふと横の路地裏を見ると、大都市には似つかない程汚らしい、ガチャガチャとした店があった。
「なんだここ?“あなたにピッタリの掘り出し物”……へー、ここ行ってみようよ。」
「なんだか怪しいお店だね……」
「大丈夫、俺がいるから。」
俺から手を繋ぐ。
こんな時男だったらといつも思う。
「うん、頼りにしてる。」
でも女の子じゃなきゃルイと知り会えなかったかもしれない。
幸せに思おう。
……
……
店内に入るとそこはジャンクショップのように様々な機械やらパーツやらが売っていた。
「おー面白いな。」
一通り見ていると奥の老人に声をかけられた。
「もし、そこの人。」
「……俺?」
「そう、その変な髪の色をした方じゃ。こっちこい。」
変な髪の色……なんか傷つくな。
声からするに女性だろう。
スカーフを頭にしていて、民族衣装のようなものを着ている。
「……うん、やっぱりそうじゃ。アンタじゃな。」
俺をジロジロみて納得している。
「あのなにか?」
「ちょっと待っておれ……」
そう言って老婆は店の奥へと行ってしまった。
「ハルちゃん何か買ったの?」
「いや、店員に声かけられてさ。」
すると老婆が戻ってきた。
何やら色々と荷物をかかえている。
「これ、全部アンタにやる。使いなさい。」
山のような荷物だ。
よく分からない機械やら薬のようなものやら。
「いやいや、こんなに貰えないんですけど……」
「まずはこの機械じゃがな……」
聞いてないし……
一体何なんだ。
「これは自分の力を隠す事ができる。アンタの手袋みたいにの。」
……この婆さん何者だ?
「そしてこのベルトじゃが反重力装置と補助装置がついておる。使用者の意思をスムーズに反映させる事によって空中での高速戦闘が可能になる。テレポートだけでは意識が散漫して近接戦闘は出来まい。」
「ちょ、ちょっと待って。アンタは一体……」
「それからこれは時が来るまで開けない事。いいわね?」
そう言って渡してきた箱はかなり古ぼけている。
っていうか人の話聞かないのね……
「そこの彼女、アナタにはこれ。」
「えっ?私に……?」
ルイにこれまた古臭い指輪を渡す。
ん?2つ?
「二人でつけなさい。大事な時に役に立つ。」
「あのー、それでアナタは……」
「ヒロは元気かしら?」
「えっ、ヒロの事知ってるんですか?」
「その様子じゃ元気そうね。さ、行きなされ。お友達が困っておるようじゃぞ。」
友達……ゲスとマクシルか?
「あの……ありがとうございました。」
「隣のお嬢さん、ソイツの事頼むの。」
「えっ?……はい!」
腑に落ちないまま店を後にする。
「なんだか不思議な人だったね。」
「な、会話が噛み合わないし。とりあえずアイツらの所に行くか。」
「ね、気になるもんね。端末で───」
……
……
……
「くっ、ちょっとピンチっすね……」
「ゲス、ちょっとじゃない。」




