チラシ。
「いらっしゃーい……あらルイ、お友達連れてきたの?」
「うん……えっと──」
「ゲスと呼んでくださいっす!以前は最低なゲスでしたが今は心を入れ替えて善良なゲスを目指してるっす。」
「そ、そう。ゲス君ね、そっちの可愛い子は?」
「ハルです。ルイさんと仲良くさせてもらってます。」
なんかこの言い方だと恋人の家に上がりこんだ時みたいだな。
「へーアナタが。最近ルイがアナタの話をよくしてくれるのよ。」
「自分の話は無いっすか?」
「んー、無いかな。」
「ガーンっす……」
小ぢんまりとした店内だが、お洒落な感じがする。女性の店って感じだな。
見た所従業員はいないみたいだ。
「最近ルイが楽しそうにアナタの話するからどんな子か気になってたのよねー。」
「そうなの?ルイ。」
「えっ?あ、うん、何か頼も!ね?」
「?そうだなー……お姉さん、何がオススメ?」
……
……
学生だからという理由で、物凄い量を出してきた。
昔じゃ平らげたけど、この体じゃ全然入らない。
「いやー、もう食えないわ。」
「ハルさんも胃袋は人並なんすね。」
「これでもレディだからな。」
「所でさっき言ってた自分に頼みたい事ってなんすか?」
「あぁ、実はな……んで……こういう感じがいいんだけど、出来そう?」
「お任せっす!明日の朝には全生徒の端末に配信しとくっす。」
「おー頼むな。」
「じゃ、自分家帰ってやってくるっすー!」
そう言いながらゲスは店から出ていった。
「……アイツ無銭飲食だな。」
「ゲス君に何頼んだの?」
「同好会のチラシ的なやつをね。」
「へー、楽しみだね。」
「今日はゲスに任せて俺達はゆっくりするかー。」
するとルイの姉さんが片付けを終わりこちらにやってきた。
よく見るとルイに似て美人だ。
「ハルちゃんだっけ?転校してきたんでしょ?っていうか超可愛いねー。」
女に生まれ変わってからというもの、可愛いと言われるが未だにしっくりとこない。
「ははは……」
「それに首席になったんでしょ?凄いじゃない。」
「まぁそれは……成行で。」
「私なんかあまり成績よくなかったからこんな仕事しか出来ないし。」
「……でも自分のお店を持ってこんなに美味しいもの作れるなんて凄いですよ。いくら重たい物を持ち上げられても雷を落とせても、なんの役にも立ちませんから。」
「そう?そんな事言う人初めて。色々出来た方がいいじゃない?」
「この力も誰かの役立てればいいんですけど ね。自分にはこんな美味しい料理作れませんから。」
「そう言ってくれると嬉しいな。ありがと。」
俺の体に備わってる力、上手い事この世界の役に立てれば……
ゲスに頼んだのやつに期待しよう。
……
……
〜翌日〜
「ハルさんおはようございまっす!」
「なんだそのまっすてのは。」
「ますっすってのはどうかと思いましてっす。」
「なんでも語尾にすをつければいいもんじゃないぞ?」
「敬語は語尾にすをつけるって何かで習ったっす。」
「まぁいいや。昨日言ったのは?」
「もう配信済みっす!」
「……これどう使うんだっけ?」
このリストバンド型の端末、どうにも使い方が分からない。
サクラは声をかければ一発なのだが……
『ふふん、所詮量産型ですね。』
そう言うとサクラは端末にアクセスして画面を勝手に開いてくれた。
「サンキュー。えーっと……これか。」
ゲスの作ったページにはこう書いてあった。
“我が校初のAランク、雷帝こと新首席ハルがアナタのお悩み解決します!校舎東、離れた林の小屋にてお待ちします。”
やたらギラギラとしたレイアウト。
例えるならパチンコ屋の広告だ。
そして画面の下の方に小さく
“お茶でもどうぞ。”
「どうっすか?力作っす!しかもこれなんと音声付なんす!」
画面を押すとゲスの声でこのページの文が読まれている。
「……あのなぁ、これじゃなんの同好会か分かんないだろ?!なんでオマケ程度でお茶の事書いてあるんだよ。どっちがメインだ?大体、新首席ってあの生徒会長に喧嘩売ってるき満々じゃねーか……この記事見て誰が来るんだよ。」
「売られた喧嘩は買わないとっす!」
「買うな、そんなもん。」
「ハルちゃんおはよー、なんか凄い広告だね。」
「あぁおはよ。これで人が来るか不安なんだけどね……」
「ゲス君の広告を信じて待ってみよ?」
優しい子だな、ルイは。
「大丈夫っすよ、自信作っす。」
それに引き換えコイツは……
……
……
「おかしいっすね、なんで来ないんすか?」
「あれ見て来る方がおかしいだろ。」
「まだあと5日あるし、頑張ろ?」
「そうだな、とりあえずなんか飲むか。ルイは?」
「私紅茶で。」
「自分激甘コーヒーっす!」
そうして3人分のお湯を沸かしている時だった。
チリーン
「自分出るっす。」
もしかしてあのチラシを見て人が?
……んな訳ないな、あのパチンコ屋のチラシじゃあな。
「ハルさん、お客様っすよ!あのチラシのお陰っす!」
「ま、まじかよ……」
戸惑いつつ入り口に向かう。
「代表のハルです、どうしましたか?」
「……」
物言わぬ目の前の少女は目を瞑り杖のような物を持って訪ねてきた。




