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機械じかけの私とお父さん  作者: ブラックサレナ
姉妹1 宗教好き
39/40

増殖する信徒


「いや、だからね。別におたくらを責めてる訳じゃなく」


「はい、それはわかってますよ。本当に警察官って大変なお仕事ですよね。毎日本当に、ご苦労様です」


「いや、だから……あぁ、もう」


 最近少しベルトの紐がキツくなってきたか。

 そう思うようになった年代に差し掛かった中年の警察官。

 彼は最近地元で噂になっているシロガネ教と呼ばれる宗教が勢力を拡大しつつある地域に配置されている警官の一人である。そして反するシロガネ教と呼ばれた宗教に属する一人の少年。

 彼は背も高く、容姿も整っており、声もハキハキしている。そんな青年がなぜ警官に呼び止められているのか。

 それは彼が警官が駐在する地域の駅前で、シロガネ教に関するビラを通行人に大量に配布していたからだ。

 別に駅前でそういった行為をする事は違法ではない。青年はしっかりとなぜか許可を持っているし、それ故警官である彼がそれを咎める理由は無いのだが。

 だが、駅前で最近勢力を拡大している新興宗教がビラを配っていると知った地域住人から、何とかして欲しいという願いがあったのだ。

 本来であればしっかりと許可を取っている以上、それを停止させる事は出来ないのだが、だがせめて警告をするくらいとは、警官の彼は青年に忠告を申し入れに来たのだ。

 地域の人が怖がるから。

 それをお題目にして。

 そう、昨今拡大しつつあるこの宗教に、地域住人は震えあがっている。3年程前はおかしなシスターが越してきた、程度の話だったらしいが、彼女はそれから爆発的に地域にシロガネ教と呼ばれる宗教を布教し始め、そして今現在に至っては、地域の多くの住人がその教団の信徒となり、住宅を取り壊し畑に変え、そして大きな共同住宅をこさえて、そこで夜な夜な何かを行っている。

 マスコミなどのメディアも最初こそそれを面白がり、記事を書こうとしていたようだが、最近はそんな動きはまったく見せていない。

 なんでも噂では取材を行った記者の頭が属する新聞社の社内で爆発したのだとか。

 何とも厄介な噂だが、しかしそれを報じようとした他社の記者の頭も爆発し、そしてそれは連鎖して、異なる数社の新聞社の内部で清掃員が忙しく働いていたという、噂らしい。

  そしてそれを不審に思った警察幹部。また政治家も同じように爆発し、っとまあ真偽不明な厄介な噂が飛び交い、それに対して周辺住民は恐怖している。

 それにより引っ越しなどで地域を去る住人も多く、そしてその開いた土地を教団が買い取って、また畑にしてしまう。

 まさに負の連鎖の如くの症状でシロガネ教と呼ばれる宗教の病魔は地区に侵食しつつある。

 そして、その癌にも似た病魔は警官が居る地域にも、こうしてビラ配りという初期症状からどんどんとそれを広げようとしている。 なぜこのような怪しい宗教がひろがった?

 噂では人を若返らせる事が出来るだの、病気を治す事が出来るだの、まことしやかなな噂で彩られているが、本当の事は何も分からない。

 病気が治る。実に調子が良い噂だ。

 だが、もしそれが本当の話だったのなら。

 そこで警官である彼は少し不安になる。

 彼には妻が居る。そして不妊治療の末、二人の間にやっと出来た子、今10の年齢を迎えたその息子は今、難しい病魔に侵され治療中なのだ。

 もし、最近広がるこの宗教を妻が知ったなら……

 そこで彼は不安になる。


「どうしました?おまわりさん?」


 警官の彼に声が掛かる。ビラ配りの青年が声を掛けた。警官は考え事で少し頭が飛んでいたのだ。

 青年の声でハッと我に返ると、彼は青年に

適当な警告を伝えて、その場を後にする。

 ともかく、やれと言われた事はやった。

 しっかりと許可証を持ち、法律を違反していない者に、自分が伝える言葉は既に無い。

 ならば、立ち去るだけである。

 自分の言った言葉にどれだけの効力があるかは分からないが、伝えると言った行為を行った事で、それを要請した市民への言い訳にもなるだろう。

 だが、もっと言うべきだったか?

 何を?

 警官は属する駐在所に帰る際、考えを過らせる。

 だが、結局そこに帰結するのは妻の事。

 仕事が終わり、すっかり日も傾いた頃、自宅へと帰る彼は、妻にしっかり伝えておかなければ、などと考えうつむきながら、家路へと向かう。

 頭は心配事で一杯だ。それでなくても最近妻は息子の事で頭を悩ませているのに。

 警官は家路へと向かう。その片手には妻が大好きなチーズケーキ。勿論家族分ある、このケーキを皆で食べながら、酒の席という形にして、この怪しい宗教の話を持ち出そう。


「ただいま」


 彼は集合住宅の階段を上がり、妻と息子が待つ部屋へ、ドアを開けて入って行った。


 それから彼は居なくなった。

 翌日、欠勤に気づいた上司が電話しても出ず、訪問しても家には誰も居なくなった。

 病気だった息子共々、どこかへ消えたのだ。

 警官一家が一夜にして消えた。

 それは紛れもなく事件ではあっただろう。

 だが、それを報じる放送も報道も無かった。 それを不審に思う者も居た。

 しかし、居た所で何になると言うのか。

 警官の一家は消えた。それは変わらない。

 居なくなった一家、ならばどこに行ったのか。

 そして、これは噂の話だが。


「なぁ、例の警官失踪って噂になった一家、例の宗教施設に居る所で、見た奴が居るんだってな」


「それも、異常に若くなって、スリムになってさ」


「その警官一家の息子って病気だったみたいじゃん」


「それも、元気に治って走り回ってたって」


 通りすがりの高校生達が、登校中にそんな事を話している。

 彼等の話は真実なのだろうか?

 いや、違う。

 これはあくまで噂の話。


「ところで、例の失踪した生徒達もあそこにいるんだってな。なんでも教団に囚われて、子供を産ませられてるらしいぜ」


 それもあくまで噂の話。





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