表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械じかけの私とお父さん  作者: ブラックサレナ
姉妹1 宗教好き
36/40

シスターと私

 バッタン星人と呼ばれる。


 何の話か。


 それは、それである。例の宇宙人。

 それの話、世界は最近、それに少し注目している。


 最近ではぱったりと見なくなったが、それは確かに居た。

 アメリカの地で、それは初めて現われた。

 そしてそれは人々を誘拐し、理由も分からぬ悪戯で人々を困らせ、不安、または期待させるのだ。


 例のファーストコンタクトから始まった、一連の騒動。

 世界は、それに少し注目していた。

 今は収まってはいるものの、少し前まではちょっとした特集を組まれ、話題になった。

 

 連続失踪事件。

 集団的な夢遊病状態。

 模倣犯的ないたずら、騒ぎ。


 それに反対する者達の言葉は、それ。

 が現代、一般的に考えられる、それの言葉は。


 宇宙人の連続誘拐事件。


 であろう。

 それも、日本の特撮の着ぐるみを利用した、意図不明な何か。

 犯人日本人説が、いの一番に流れた。


 しかし事件がアメリカ全土、それもかなりの距離が離れても起きている事から、否定される事となる。

 アメリカ全土に渡り起きた、一連の誘拐、だと思われる事象。


 だが、誘拐だと言われてはいるものの、現実に失踪した者は一人も居ない。

 故に、それを集団的な模倣犯的いたずらだと見る動きがあった。


 しかし、その誘拐が医者、または政治家など、地位の高い者にも及んだ事で、事態はまた少し動く。

 それから芸術家、アーティスト、様々な有名人も、その誘拐の洗礼を受ける事になり、事態は更に湧いた。

 挙句の果てに、それに誘拐されるのが一種のステータスとなり、我も我もと誘拐されたとされる人物が現われる始末。

 そんな事がしばらく続いた後、誘拐は徐々に起きなくなり。世界はまたそれを忘れた。


 だが、その残り香だけはしっかり世界の残った為、もしかしたら、っという期待が世界に広がり、宇宙人という物に対しての議論が、少し盛り上がっていく事となる。

 だが、そうなっても最後は言われてしまうのだ。


 なら、その宇宙人はなぜ姿を現さないのか。


 様々な議論が為されても、それが出れば自然と止まる。

 そう、姿を現さないのなら。

 結局はそれは今までの流れと同じような。

 いたずら、で全てが終わってしまうのだ。


 宇宙人という存在を信じる一部の者達は、それがまた新たな動きをしてくれるのを祈った。

 だがいくら待っても、それは現われる事は無かった。

 故に、世界は流れる。続報が無い噂など、もはや語る価値は無い。


 世界はその事をまた忘れていき。世界は、また正常になる。


 そんな正常になった世界。

 その世界の、日本という国で、とある女子高生が居た。


 ごく普通の、何の変的もない女子高生。

 そんな彼女が住む街、そして彼女が住む家の隣に、女性が引越して来た。


 だが、その女性、少し変であった。 彼女は、成人しているだろう。

 顔は、かなりの美形であると感じた。

 背は、170センチくらい、かなりの長身だ。

 そして彼女は長い髪を持っており、それは足まで届く程ある。


 そしてそこまで普通だろうが、重要なのはその先、彼女は白い白装束、おそらくキリスト教だろう。

 彼女はシスターの格好をしており、つまり、あまり普通の人ではなかったのだ。

 おそらく彼女は宗教上の問題でその格好をしていのだろうが、女子高生である彼女は、それが少し不安だった。


 ネットの意見を見る限り、宗教という物に、あまり良いイメージは無い。

 しかも彼女はシスター衣装を常に身に纏い、洋服を着ている様子が見られないのだ。


 つまり、明らかに異端者。

 そもそも引越しをしても挨拶すら寄越さない。


 故に、そのシスターはあっと言う間に近所のコミュニティから孤立し、避けられるようになる。

 女子高生である彼女の両親も、そのシスターに話しかけるな。目を合わせるなと言及する。


 ごく普通の一般家庭においては、宗教の勧誘ほど、疎ましい物はない。

 彼女が引っ越してきてしばらく、周囲はシスターの動向を見守った。


 だが、一年も過ぎた頃には、周囲も彼女に慣れた。

 彼女は挨拶こそしないもの、特に問題w起こす事もなく、ゴミだしの日は守り、のんべりだらりと暮らしている。


 近所の噂好きのおばさんの話によれば、どうやら働いていないらしい。

 故に毎日ブラブラと近辺を散歩して、毎日を過ごしているようだ。


 そんな彼女であるから、周囲の人々は彼女を避け、そして相手にしない。

 だが、みなそれを当たり前だとして流し、特には深く考えなくなっていった。


 特に問題もなく過ぎる日々。それが一年続いた。先程も言った言葉。

 だが、一年して、しばらく。


 母が、病気になった。


 非常に進行が早いタイプの、厄介な癌であると言われた。

 母は余命を宣告された。治る見込みは?


 それを聞く家族。

 医者は、はっきりと言った。無いと。


 それから、時間が流れる。

 だが、女子高生である彼女の心中は、前ほど順調には流れない。


 自分の母が死ぬかもしれない。その思いに感情を支配され。

 毎日を不安に過ごしている。


 いつも一緒だった筈の肉親の、死が宣告されたのだ。

 それは年頃の彼女には非常に荷が重い事。

 彼女はそれをなんとかしたかった。


 だが、医者がさじを投げた。

 それで、医者ではない自分に何が出来るというのだろうか。


 彼女は母に、民間療法を薦めた事がある。

 だが、そういった部類の物を、彼女の母は信じなかった。


 故に、黙って死にいく母。なんとかしたかった。

 母を救いたかった。なんとかしたい。

 そして、そういう思いから。

 彼女はあの、シスターにそれを言ってみる事にした。


 特に理由がある訳ではない。

 しかし、彼女の衣装は間違いなくシスター。


 であるならば、何かしらの解決策があるのではと思ったのだ。

 なんでそんな事を思ったのかは分からない。

 でも、何かをしたかった。


 そうしなければ、自分の心が潰れてしまうのではと、彼女は考えたのだ。

 そして休日の昼、見かけた彼女に言ってみた。

 母を救う術は無いか、と。


 見ず知らずの女子高生にそんな事を言われ、キョトンする彼女。

 だがそれも一瞬の物で、シスターは彼女の言葉を聞いてにやりと笑い。


「ならば我が神の教えを受け入れなさい」


 そう、静かに言った。その教えとは何か、彼女は尋ねる。


 それは世界唯一の[神]である[父]を称えよという教えであり、そしてその教えの神は人であるようだ。


 彼女がそれはキリストかと尋ねると、シスターはそれはシロガネだと答えた。

 シロガネとは何かと尋ねると、銀の意思を持つ神なのだと答えた。


 銀の意思とは何かと答えると。それは適当だ、っと答えた。

 宗教において、適当な教義などあるのだろうか?


 その適当な教義という言葉から、既にシスターの言葉には醒めていたが、切り上げて立ち去る勇気も無く、仕方なしに彼女は言葉の続きを聞く。


 そしてしばらく教義内容を話した後、シスターは。


 それを信じるのならば、救われる。


 と言った。


 母を思う彼女は問う。信じれば救われるのかと。


 信じ、入信すれば救う。シスターの答えだ。


 彼女はなぜかそこで食い下がり、答える。


 救われる保障が欲しい。


 そう訴えた。シスターは答える。


 ならば、貴方の母を救ってやる。救われたら、入信なさい。


 そして救われて、なお入信しなかったら。

 母は再び死に。もう生き返らないと。


 シスターは言った。


 その言葉を聞いて、彼女は入信すると答えた。

 彼女はたとえそれが嘘でも、何か安心する言葉が欲しかった。


 専門家である医者が治らない。そう断言した事柄を、否定する言葉が欲しかった。

 だからシスターがそれを否定する言葉を言った時、内心それを訝しげなら、了承した。


 それで、少しの間でも良い。母が治るのだと言う保障があるのなら。

 彼女にはそれで満足だった。


 シスターはそれから満足そうに笑うと、その場を後にした。




 それから家に帰ったら、母が吐いていた。



 寝台で眠っていた筈の母が、風呂場のバスタブの中に、何かを吐いているのだ。


 心配そうに駈け寄る彼女。

 そして、彼女は光景を見る事になる。

 その光景とは、母の口から何か肉の塊のような物がドボドボと吐き出されている光景だ。

 母の嘔吐は止まらない。


 母が出した嘔吐物。

 それはかなりの量で、母がそれを全て吐き出し終えた後は、バスタブの中には吐き出した肉の塊が、ゴロゴロと転がっていた。


 そしてそれは不思議な事に、血の一滴も流れておらず、母の体の中から、その肉塊は綺麗な形で吐き出されたのだ。


 それから、病院で医師の診察を受けた。結果は、母の体から癌は消えていた。


 母は健康になったのだ。医者が不思議がる。

 父も、母も、付き添いの人々も不思議がる。

 そして口々に言うのだ


 奇跡が起きたと。


 奇跡、そう、奇跡が起きたのだ。

 ならば、その奇跡を起こしたのは?


 彼女は考える。そして彼女は先程見た、あの母の嘔吐を考える。

 そして次に思うのが、シスターの言葉。


 その瞬間、サーッと血の気が引く。もしや、あのシスターは本当に…

 それを思った瞬間、急に世界が暗くなる。

 そして、再び目を開けた瞬間に。


「これで、貴方は信者だよ」


 彼女が居た。

 彼女は笑っている。

 私を見て、笑っている。


 私はそれから、何かしらの弁解の言葉を述べる。

 やっぱり、宗教は嫌だと。

 はっきりと、伝えた。


 そして、彼女はその言葉を聞いて。


「じゃあ死ね」


 それからしばらくして、とある一家が変死したというニュースが流れた。

 その家族は、バスタブの中でぐちゃぐちゃになって発見されたらしい。

 その件に関して地元住民は例のシスターを疑ったが、その証拠がついに出る事は無かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ