魔法使いパパ
「パパおかえり!」
「ああ、ただいま」
「パパ、寂しくなかった!?」
「私は寂しかったよ!」
「今日も哀れな下等生物達に餌をやってきたよ!パパ、褒めてね!」
「ただいま帰りましたっとパパ、ただいま」
「ああ、お姉ちゃん。ただいま」
「パパ、そろそろおかえりとただいま。逆にするのは辞めたら?」
「我が家ではこれが家訓だったんだ。家の中に家族しか知らない、非常識があっても良いだろう?」
「ああ、そんな理由があったんだ」
「言ってなかったか?」
「言ってなかったよ」
「あはは、そうか」
父が笑う。とにかく、ただいま。
「パパ、今日は良い子にしてた?」
「私達が居なくて、泣いてなかった?」
「泣いてたら、慰めてくれるかい?」
「良いよ!ほら、早く泣いて!」
「あはは」
帰宅後の娘と父のスキンシップ。
その声が合成の物で、体が機械でなかったら、私達は普通の家族の姿だったろう。
だが現実は父は創造主で、私達は作品だ。
だが、それで良い。
それもまた、家族の姿。
「お仕事どうだった?変な事、言われたりしなかったか?」
「別に、何も言われなかったよ」
「そっか、まぁ居酒屋って訳じゃないし、酒は出してても酔わないからな」
「最初こそ変な奴は居たが、そいつらもいつの間にか、消えてたもんな」
そう、暴言を吐く人々は居なくなった。
でも、それは偶然だから仕方ない。
「パパ、抱っこして!」
「それが[労働]の対価でしょう!?」
「対価は支払わなきゃいけないよ!」
「労働基準法は守らなきゃね!」
帰宅してすぐ、父にその対価を求める妹達。
その対価とは父とのスキンシップの事。
それが彼女達が求めた労働の対価。
特に欲しい物が無い彼女達にとって、これが最大の労働の対価だった。
「おお、じゃあ抱っこするか」
そう言って、父が空中に小さな陣を敷いた。
その才覚が無い者には見えないが、これは[魔方陣]だ。
父はあちらでしか使えない[魔法]を現実で持ち出す術を発見したのだ。
それは幽霊達のソウルと魔方陣。
そして[死霊術]の力で無理やりこの世界に発現させたもの。
父が経営している空気飯もそうだ。
あれはこの世界に存在する生命のソウルを回収して、それを具現化した物。
鶏のソウル。牛のソウル。
魚、そして野菜のソウル。
この世界に存在する全ての生き物のソウルを具現化して、それを調理した物。
父はこの世界の技術とあちらの技術を融合させ、つまりは。
幽霊を食材にする事に成功したのだ。
そしてソウルを集約する装置を自宅に作り。
[合体]で料理に変化させ[増殖]でその料理を増やす。
鳥と卵のソウルを合体させ親子丼。
肉と野菜のソウルを合体させシチュー。
つまりそういう事らしい。
が、具体的にどうやったかは色々複雑なので、それは父に任せている。
とにかく父は娘達が居ない間、その練成を人知れず行っていたのだ。
家でゴロゴロしていた訳ではない。
話は[魔方陣]からに戻る。
父はその陣を発現させると、密かに妹達にぶつける。
そうすると、妹達は軽くなるのだ。
そうして軽くなった妹達を抱っこし、父は家族サービスをする。
「わーいわーい!抱っこだ!」
「高いたかーい!あはははは!}
「次、次は私ね!」
「次は私!天井にぶつけるくらいの勢いで、高い高いしてね!」
「私は今日も最後で良い。残り物には福がある。愚かで愚鈍な妹達は気付いてないけど、パパは最後に可愛がる子の頭を撫でてくれる」
いつのまにか抱っこから高い高いにサービス内容が変化し、妹達は父の寵愛を受ける。
私はそれを静かに眺める。
羨ましい。そう思う事もあるけれど。
父が持つ秘密の全てを知る私からすれば、これくらいは譲ってあげる事であると思う。
そして1時間ほどそれを繰り返した後、妹達の電源を落とし、私達はあちらに向かう。
それから翌日、いつもの二人。
父と私。朝の時間。
この時間だけはいつも私達は二人っきり。
私は父に昨夜言えなかった事を言う。
「パパ、例のバイトさん、落ちた」
「香住さんだっけ?そうか」
「声優さん、一人雇う事に成功したよ」
「お友達も誘ったか?」
「うん、男性声優の知り合いさんも誘ってみるって」
「それと、お父さんと私達が作ったゲーム紹介した」
「そっか、俺達のゲームもネットでは有名になって来たし、ブログとかでも声優用意して、
本格的にやってみますって書いたからな」
「その流れをしっかり見てくれたんなら、一応本気なんだって、興味持ってくれるかもな」
「給料もその為に上げたようなもんだしね」
「そうだな、時給5000円は流石に多いと思うけど、でも金払いは良いって思われるのは、プラスではあるからな」
「報酬3倍に乗っかってくれるかな?」
「駄目なら5倍にするさ」
「お金ある?」
「ないなら、また何か商売でも始めるか」
「何を売るの?」
「風邪薬とかな、完全に治るやつ」
「それかメイドロボ派遣事情始めたり」
「同胞が人間に使役されて、酷使されるのを見るのは嫌」
「ならそれは止めとくか」
「ありがとう。それが一番だよ」
「とにかく、商売もしてみたいな。空気飯、結構儲かってるし」
「でも、今の本命はゲームなんでしょ?」
「そうだな」
「ところで、香住って人見た事無いけど、どんな奴だ?」
「ブスだよ
「あ、そう」
「とにかく今は声優集めてゲーム作りだな。それから知名度集めて、出来る事を考えよう」
「お父さん、活動的だね」
「そうだな。活動的に動いた方が、人生楽しいもんだ」
「前は、楽しくなかった?」
「狂っていた時はその時はその時で、何か楽しい事もあったんだろうさ」
「そういうもの?」
「昔の自分を否定して、罵るのは好きじゃない」
「そいつ含めて、俺は俺さ」
「そっか」
「うん」
「パパー!朝だよー!」
妹達が来た。二人での話はおしまい。
「パパ、起きてるでしょう!」
「今日は定休日だよ!
「遊園地、動物園、映画館、水族館!」
「どれかに連れてって!」
「連れて行かないと働かないよ!」
「私達にはストを行う権利が認められているよ!」
「愚かな人類に鉄槌を!私には愛を!」
妹達が騒ぐ。
「ああ、そうだな。行こうか」
「今日は、どこにする?」
父は部屋のドアを開け、妹達を受け入れる。
これから、また一日が始める。
穏やかで、騒がしい毎日。
朝の日差しがとても眩しい。
今日も、良い一日になりそうだ。




