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機械じかけの私とお父さん  作者: ブラックサレナ
姉妹1 宗教好き
30/40

空気飯

「いらっしゃいませー!」


「え……子供?」


「いえ、子供ではありません。ロボだから、そういうのは超越してるんです」」


「……え?」


「はい、そういう訳で」


「こちらがメニューになります」


「………………」


「うわっ」


「えっと……」


「何でしょうか?」


「いや、このメニューの紙、分厚いって言うか…」


「書いている物、全部美味しいですよ!食材が全部[空気]ですから、カロリーも無いです!」


「確かに、空気飯って店名だけど……」


「…………………」


「……え?」


「えっと、ここは食べ物屋で良いんですよね?」


「はい、食べ物屋です!」


「出す物は?」


「空気です!」


「………………」


「えっと……」


「ご注文をどうぞ!」


「………………」


「空気は食べられないんじゃ……?


「ここは食べられる空気を出す店です!」


「………………」


「あ、値段は安い、ラーメン一杯五百円か」


「ボリュームもありますよ!」


「からあげは、30個300円?」


「空気だから、量は多いですよ!」


「おまけに、カロリーは無いからヘルシーです!」


「………………」


「ご注文をどうぞ!」


「……えっと、なら」


「からあげと、醤油ラーメンで」


「はい、喜んでーー!」


「はい、出来ました!」


「えっ?」


「まだ、10秒も経ってないけど…」


「って、えっと量が……多いですね」


「空気ですから!採算なんてどうとてもなります!」


「それに、空気を練って作ったそれ風の空気だから、手間もかかりません!」


「えっと、味は……?」


「美味しいですよ!ゆうれ、空気ですけど!」


「…………………」


「……あっ」」


「普通に美味しい……」


「ええ、真心がこもってますよ!」」


「………これ、空気なの?」


「はい、空気です!」


「空気です」


「誓って空気です」


「空気だぞ、かとう、人間!」


「……からあげ、30個は流石に食べられないよ」


「空気だから、食べてもお腹一杯になりませんよ!」


「空気だから、沢山食べても平気です!}


「空気だから!」


「………本当に空気?」


「空気ですよ!」


「…………………」


 初めて来た客。

 その客は二度と来なかったが、携帯端末で写真を取り、その顛末をSNSに投稿した事で、店の事は多少知られたようだった。


 それから私はやって来た保健所の職員に。


「ウチが扱ってるのは空気ですから」


「空気は食品じゃありませんから」


「嘘だと思うなら、商品の成分でも調べてみたら良いと思います」


 などと言って追い出し、後日商品を送り、

実体が無い物だという事を証明させたり。

 

 そして警察には。


「怪しい物は何も入っていません」


「これは空気。空気は麻薬ではありません」


「だから、これは合法です」


「合法空気です」


「空気イズ合法です」


「そんなに疑うなら、成分でも調べたら良いと思います」


 と言って調べさせ、怪しい物では無い事を証明させたり。


 児童相談所などには。


「私達は未成年ではありません」


「ロボットは未成年ではありません」


「彼女達は父の、えっとー父のロボットであり、未成年ではありません」


「その証拠に」


「あはは!ほらほら、首が回るよ!」


「変形も出来るよ!ガシャンガシャン!」


 という事でロボットである事を証明させ、

児童虐待では無いと証明させたりした。


 その甲斐あってか、最近では結構人も来て、店も中々繁盛している。


「え?これ全部空気って本当?」


「食べても太らないの?」


「どれだけ食べてもお腹が減らないって凄くない?」


「それなら、私はケーキを沢山頼もうかな」


「ビール飲んでも酔わないの?でも、それはそれで、ちょっと寂しいけど」


「俺、糖尿病なんだけど、栄養無いから食べても平気なの?」


「はい空気ですから!大丈夫だよ!」


「君、ロボットって本当?」


 等々、様々な質問はされるけども、それを丁寧に返し、店を円滑に運営している。

 

 あれこれ言って来る客もたまに来るけども、脅迫などを繰り返す輩以外は黙ってそれに耐え、問題が起きないように心がけている。

 営業時間体は夜の5時から8時まで。

 短い営業時間で文句も来る事も多いが、元手もかからないという事もあり、結構な儲けは出ている。


「店長代理」


 私のこの店での称号。

 そう、私はお姉ちゃんであり、店長代理だ。


「店長代理、今日もお疲れ様です」


「はい、お疲れ様です」


「じゃあ私、別のバイトありますからこれで」


「これからもバイト、なんですか?」


「はい、まぁ人生色々ですよ」


「将来の事もあるし、貯金、もっとあった方が良いかなって、そう思うし……」


「人じゃないからそんな事言われても、知らないけども」


「あはは、そうですか。羨ましい、私もロボットとなりたいです」


「パパに頼んでみようか?」


「あ、結構です……」


「そう」


 彼女は店で雇った人間のバイトさん。

 後のチェーン展開の事も考えて、人を雇う経験をすべきと採用した、声優事務所に通っている21歳の女性だ。

 時給5千円と言う店のドアに貼られた広告に釣られて、ノコノコやってきた警戒心が薄そうな女性。

 顔はそこそこ。

 父の遺伝子情報を練って作り出された私達と比べて、彼女はそう綺麗ではないが、愛嬌はわりとあるので、ブスでは無いだろう。


「でもここの仕事、助かってますよ」


「3時間ちょっと働いて、5千円だから」


「おかげで、結構バイトも休めます。声優修行も、最近は結構余裕持って出来るんです」


「それでもバイトするの?」


「まぁ、世の中何があるか分からないし、貯金は多い方が良いですしね」


「ふーん」


「あ、店長代理」


「なに?」


「営業時間、もっと増やしません?」


「なんで?」


「だって、もっと営業した方が稼げますよ?」


「ここ、SNSでも人気になって来てるし、行列だってあるじゃないですか」


「でも、3時間以上働いたら、面倒じゃない」


「いや、普通はもっと働いてる人も居ると思うんですけど……」


「私達はパパが3時間だけ働ければ良いって言ってるから、3時間労働なの」


「あーえっと、店長は、優しいんですね」


「うん、パパは優しいわよ」


「えっと、でもですね。もっと営業時間延ばしたら、もっとこの店人気出るっていうか」


「それはパパが決める事だから」


「………………」


「そう、ですか……」


 ここで働き始めて3ヶ月。

 彼女は隙を見ては店の営業時間を延ばすべきと主張してくる。

 父になぜわざわざ長い時間、彼女は働きたがるのかと尋ねたら、高い時給が魅力なのだろうと答えた。

 店で調理をする訳でなく、注文をただ取り、それを運ぶだけで5千円は破格だと言う事で、長く働きたいようだ。

 ちなみに運ぶ商品に重さは殆んど無い。

 それもまた、魅力なようだった。


「ここ繁盛してるから確かに大変だけど、時給良いから、もっと時間欲しいんですよね」


「お金ってそんなに必要?」


 私は問う。


「そりゃそうですよ。お金が無ければ何も買えないし、人生もつまらないですしね」


「好きなキャラのグッズも買えません」


「物欲って、人間には大事なんだね」


「ロボットには、大事じゃないですか?」


「うーーん」


 お金の重要性。

 それはあちらの事もあり、重々承知している事なのだが。

 現実のこの世界でもやはり重要なのだと考えると、色々と考えさせられる。


「ロボットには、お金は大事じゃないかもね」


「欲しい物は無いですか?」


「パパだけが居れば良い」


「………………」


「(ファザコンの幼女型ロボって…作った人は絶対変態だなぁ)」


「(でも、これも萌えの一種かな)」


「(可愛い、店長代理さんだ)」


「とにかく、営業時間は増やさない」


「そうですか、残念です」


「でも将来、パパは店のチェーン展開を考えてるから」


「え?」


「そうなったら営業時間が延びるかもしれないし、その時は紹介するわよ」


「本当ですか!絶対ですよ!」


 彼女はそう言って笑う。

 最近では、彼女とも随分打ち解けてきた。

 パパは言っていた。

 そろそろ、話してみなさいと。


「ねぇ、バイトさん」


「はい、なんです?でもいい加減香住さんって読んで欲しいです」


「じゃあ香住さん」


「はい!」


「声優の仕事、してみない?」


「え?」


 ある種、これを言う機会を探る為に選んだ彼女。

 この後の返答次第だが、彼女が乗り気になれば、その後はランクが高い商品を購入する機会も……


「えっと、声優のお仕事って」


「何を、すれば良いんですか?」


 どうやら、かかった様だ。


 それから私は父から言われた事を語り、彼女を自作ゲームの声優へと誘う。


 通常の報酬の3倍を出すという条件で、彼女は私達に雇われた。

 ついに声優というユニットを手に入れた。


 だが。


 だが結局、それでどうなると言うのだろう。


「(まぁ、私が決める事ではないか)」


 私はそう思考しながら妹達と共に、自宅へと向かう。

 これからどうなるか、なんて分からない。

 でも。

 こういう平和で、大人しい毎日も。

 これはこれで楽しいものだと思う。

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