異世界は飽きました。
「お父さん、それでゲームを作れば良いの?」
「ああ、一緒に作ろう」
「うん、分かった」
朝起きてしばらく、父が私にゲームを作ろうと言い出した。
なぜゲーム作りを? っという問いを父に返すと
「あぁ? まぁ、イメージアップ戦略だよ」
「イメージ戦略?」
「ああそうだ そういうのも有りだろう?」
ガハハハハ 父はそうわざとらしく笑うとパソコンがある書斎へと向かった。
あれからしばらく父は投薬治療と自主カウンセリングを繰り返し
おそらくこれが父の本来の性格だったのだろう。
やや自堕落さを見せる中年の明るさを取り戻し、今に至る。
外では相変わらずのぶっきらぼうな姿を晒しているが
当時の狂人の様子は今は無い。
「お父さん、私ゲームの作り方なんかわからない」
「なら今すぐ「入れて」やる それから一緒にやろう」
「あ、そっかーー」
書斎に向かう父に質問する私。その問いを父が返すと
そこから持ってきたであろう手製のデーターカードを私に挿し
言った事を実行する。
その瞬間、私の中に「レシピ」が入ってきた。
これで私はもう作れる体になったのだ。
「ゲームなんか作って、イメージアップするの?」
「面白けりゃするんじゃないか? 若者はゲームは好きだろう?」
「私はお父さんと居るのが好き」
「俺はそこそこだな そこそこ」
「そこそこでもちょっとくらいなら嬉しい…」
「そうか そうか」
再び、がははする父。
その笑みは以前のような透き通った印象を見せないものの
正直こっちの方が前より数倍好きだ。前の笑みは… 正直やっぱり変だった。
思考する私を尻目に、父が続ける。
「それじゃあ何を作ろうかなーー」
「アッチの世界の事を題材にしたら?」
「ああ、つまり異世界転生物か? しかしそれは煩雑してるだろう?
今更やっても飽きられるだけだろうな」
「そうなの?」
「傾向を見たんだよ 流行ってるみたいだな」
「人間は異世界に行く人が多いの?」
「進んだ文明の知識を見せて、ちやほやされたいって思いがあるんだよ」
「お父さんもちやほやされてるね」
「アッチの話はするな アッチはアッチだ」
「あいあい」
私はパソコンを起動し、そして始める事にする。
「それで、どんなゲームを作るの?」
「とにかくバグも無くゲーム性もあってグラフィックも良い奴だ]
「それだけ?」
「フリーならそれで十分 市販のエンジンじゃなくて
自作の奴で3D物やって面白けりゃ注目されるだろう」
「フリーで出すの? お金は取らないの?」
「貰って何に使うんだ?」
「うーーーん ……実験?」
「それならアッチで出来る日を作れば良い」
「気が長いね」
「そうかもな」
私達はパソコンに向かうと一緒に作成を開始した。
父のリクエストで作るのはアクションゲーム
それも昔、開発中止になった思い出のゲームの類似品を作るらしい。
「昔、ロックソルジャーダッシュ 鋼鉄の意志ってゲームがあったんだ」
父が語る。思い出話らしい。
「1、2とシリーズが出て、しばらくして3が出るって言うんだ」
「俺はそれが楽しみでな、続報を待っていたんだけど…」
「けど?」
「開発中止になって、それからぱったりだ
んで俺も大人になって、結局それから続報も無い」
「それを、作るの」
「資料とか残ってたから、それを参考に」
「怒られない?」
「フリーだし、大丈夫じゃないか?
まぁ、何か言ってきても「カンシャク」すれば良い」
「前科持ちの狂人だもんね」
「そだな」
「……しかし、露骨にキャラ同じはまずいから色々変えるけどな
設定とか名前とかキャラとか」
「なら継承するのはシステムだけ?」
「そだな、賢いじゃないか」
父に褒められた。嬉しい
「昔はよく娘とゲームをしたもんだ
でも全てが無くなると… それもどうでもよくなる」
「お父さん、このゲーム二人で作るの?」
「ん?」
どうでもいいそんな話
「ああ、そっか… 確かに二人だけは大変か」
「なら、妹が欲しいか?」
「うん、沢山妹を作ろう」
「パパの家族は、私達で良いと思うよ」
「………」
「そうか」
「分かった」
「そうだな」
「ははは」
「私はパパの家族だよね?」
「お父さんじゃなかったか?」
「パパの方が言いやすいでしょう?」
「ああ、そうかもな」
父はそう言って、私の髪を撫でた。




