初めての「街」 準備
「ガッ…」
朝目覚めた。森の中だ。
そこで彼が持ち寄った体をすっぽり覆う寝袋に包まれ、私は朝を迎えた。
とても暖かくて気持ちよかった。手足もあるし、最高に良い気分なのだ。
「グ…?」
そして起きて、彼が笑って立っていった。彼は何かを持っている。
それは…
(ボロボロの服だなぁ…)
彼が持っていたのは非常にくたびれた様な衣類だった。
体のあちこちには綻びが生じ穴が開き、表面には黄色いシミがこびり付いている。
(潜入用の衣類… なんだろうなーー)
なぜこんな衣類を持っているのか? それは考えない。聞けないから
だから考える事は彼がそれを持っている意味
(街に入る為に用意したんだろうなぁ 彼が持ってる服、奇妙で上等だし)
つまりそういう事。彼はそれに着替えろと言うのだ。
正直気が進まない。今着てる彼から貰った服が良いんだけど…
(でも、こんなデザインの服、やっぱり目立つだろうなぁ)
例の関所から歩いてきて三日 ようやく辿り着いた街
最初の関所で懲りたのか、彼がまず行ったのは街付近の偵察
いつの間にか持っていた遠くの物を見渡せる道具で彼は街を見る。
私も見たいと手振りでねだると彼も見せてくれた。
それはとても遠くの物がよく見れて、街の様子を近くまで眺める事が出来た。
見た街。それは城塞に囲まれていて一見堅牢そうだが
見張り兵の数は少数で検問も無かった。
検問が無いのは、やはりこの地が完全に占領されてしまったからだろう。
おそらく付近で街を狙う勢力が居なくなった為だ。
そこで一抹の悲しみを感じたが… それはもう済んだ事だ。
とにかく私が今考えている事は帝国の勢力範囲内を抜ける事
私の故郷「グラストラ」を抜け、そこへ向かう。
どこが範囲内でどこかその外なのか、今の私には分からない。
だが、街に入ってしまえば情報を揃える事が出来る。
この地の地図なども手に入れば、それに越した事はない。
(うん… 彼と、ここを抜けるんだ それで、一緒に…)
カタン 思考に耽る私を覚醒される食器の音 あ、彼が食事の
いや、彼ではない「彼女」だ。彼女が食事の準備は始めている。
私にどことなく似ている謎の「彼女」
彼女はこうして朝になったら料理を作ってくれる。
カチリと何かを捻る音と共に火が付く道具 それで色々作るのだ。
昨夜なんて色々凄かった。
それは柔らかい肉が沢山入ったドロッとしたシチューだった。
肉、見た事が無い野菜 そして最後に四角い固形物をゴロゴロ入れて
それは出来上がったのだ。それの美味しい事、美味しい事!!
おそらく何らかの香辛料も入っているのだろう。
それは普段食べていた料理とは一味も二味も違い、私の舌を楽しませてくれた。
そして最後に食べた。あの黄色いプルプルした物…
彼から聞き取れた言葉は「プリー」 そして最初に食べたもの「ビーフシィー」
どちらもとても美味しかった!! その前の日は「グラダン」を食べた!!
どれもこれも美味で美味しい!! 今日の朝食は何だろうか?
前の朝食は卵の目玉焼きと肉の燻製とふわふわの白パン
里の中でも私は上級の食にありつけていたが、そちらで食べる朝食は
「豆のスープ」 そして時々魚 これくらいなもん
白いパン類などは夕食に食べる物だ。 しかしそれでもかなり上等な部類だ。
だが、彼が提供してくれる料理はそれよりどれも上等 パンなども柔らかさが違う
普段私が食べていたパンは所詮固い何かだった。
パンも何か加えられているのか香ばしく、フワフワして美味しかった。
しかもそのパンの表面を何かの道具でまた焼くのだ。
それに何か黄色い物を塗り食べる。それがとても美味しいのだ。
でもパンを焼く道具は形が大きく持ち運びがしにくそうだな、とは思う。
あ、今も彼女がその道具でパンを焼いている。
中で赤い棒のような物が発光して、ブーンという音を立てている。
その道具は色々と発動には手間が居るようだが
美味しく焼けたパンが数分で出来るのでやっぱり便利だと思う。
彼がなんでこんな物を持っている? そんなの知らない。
でもあるんだから仕方ない。なら利用するだけ。
それで良い。 それで良いのだ。
(でも、内心ではちょっと気になるけど…)
そんな事を思いながら、私は彼女が作ってくれた朝食にありつく。
今日のメニューは… あ、また昨日とは違うメニューがある
どんな味だろう? 楽しみだなーー
そして私達は朝食を楽しんだ後
「ペトボル」の水で顔を洗い、歯を磨いて街へ向かう。
(あ、裏地は着心地良い… みすぼらしいのは表面だけか…)
そして例のみすぼらしい「風」の服に着替えた後、街へと向かう。
占領されてしまったとはいえ、あそこは結構憧れの街だったのだ。
今どうなっていうのが不安だが… でも彼が居る。
私はワクワクした面持ちで彼と彼女、そして私。三人でそこに向かっていった。
あ、彼から飴も貰った。それを舐めながらの移動
微かに口に広がる蜂蜜の味 「ノドメ」と言う物らしい
へへへ、美味しい




