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取り敢えず門の前に来てみたが、案の定閉まっている。門には車両が通る門とは別に人が通る小さな扉が付いている。そこは、門に詰める兵士たちの通用口でもあり、怪しい人物を通すための別通路でもある。
その扉をノックすると、一度目の高さにある小窓が開き閉じられたかと思うと生きよい良く扉が開き、その人物にこれまた勢いよく中に引きこまれた。
「な、何ですか一体!?」
「何ですかもこうですかもあるか!お前のせいでこちとら大忙しなんだよ!」
そう声を荒げるのは、先ほど僕がクイーンから預かった言伝を王の元に届けようとした際、ここを通してくれなかった兵士だ。っていうか、別に僕は悪くないんじゃ?
「僕の・・・?」
取り敢えずは聞いてみるが、僕の期待できる様な答えは得られないだろう。
「ドラゴンの軍勢連れてくるわ、その言伝を色んな過程をすっ飛ばして王様に会って伝えるわ、名乗らず帰るわで、しかもこっちは無茶振り喰らってんだよ。ま、でもここで確保出来ただけ良しとするか」
ふぅ、とその兵士は溜息を吐く。確かに、これは僕のせいかもしれない。そう言えば名乗ってなかったなぁ、いい加減ちゃんと名乗る癖を付けとかないといけないかな?
「いいか?勝手な行動はするんじゃないぞ?勝手に街を出られちゃ困るからな、お前に監視を付ける。表向きは違うが、監視だからな。いいか?くれぐれも面倒を起こすなよ?おいアレク!!アレーーーク!!」
「は、はぃ~」
そんな情けない声を出しながら来たのは、明るい茶髪にクリクリッとした大きなが印象的な少年だった。兵士の大きな声にビビっているのか、はたまたすぐそこまで来ているドラゴンに怯えているのか分からないが、プルプルと震えているその姿は小動物を連想させる。
「な、なんでしょうか隊長~」
身長差のせいで下から見上げるようにして隊長と呼ばれる兵士に問いかけるアレク。そんなアレクに対する兵士の目は非常に楽しげに歪んでいる。
「もっとしっかりするんだ。アレク、お前に任務だ。こいつを監視してろ」
「えぇっ!?何なんですかこの人!?」
「この騒動の犯人だ」
「ええぇええ!?そんな危険人物と僕を一緒にしとくんですか!?危険ですよ!主に僕の命が!!」
誰が犯人だ。人聞きの悪い。
「ちょっと待って下さいよ。僕だって好きでここに居る訳じゃないんですからね。半ば連れ去られる形でここまで来たんですから」
「な、なんだぁ~・・・あなたもこの騒動の被害者なんですね~・・・なら何で監視なんか付けるんですか隊長~」
「あぁ~それはだな・・・」
そう言って兵士は周りを見回す。そして、僕とアレク以外誰も居ない事を確認した後、アレクに耳を貸すように言った。
「くすぐったいです隊長~」
「アレク、ふざけるんじゃない。いいか?」
言った内容は、僕の位置からでは聞こえなかったが。アレクの顔の色がみるみると青くなっていったことからその内容は窺い知れる。恐らく、先ほど僕がクイーンに言われたような事をアレクも兵士にささやかれたのだろう。ちらちらと僕の方を見ながら何やら小声で言い合っている。こうして見ると、この二人は体格差はあるが非常に息が合っている様に見える。凸凹コンビだ。
最後に大きく頷いたアレクは僕の方へ歩み寄ってくる。そして、この国の兵士の敬礼をした。
「ででででは、今よりあなたの監視の命に付かせて頂きます。アレックス・カンドールです。以後、お見知り置きを」
「え、えーと。よろしく?」
何やら鬼気とした物すら漂わせているアレクに押され、僕もつい敬礼をして答えてしまった。
「何故、額に手を当てておられるんですか?まさか、体調が優れないのでしょうか?これは大変だ。すぐにお休みにならなければ!!」
さあ、行きましょう!!と僕の手を掴みアレクは歩き出す。そして、あれよあれよと言う内に。超豪華な宿屋の一室に放り込まれていた。
「・・・どうしてこうなった」
僕の呟きはフッカフカのベットに吸い込まれていった。




