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「すいませんすいませんすいませんっ・・・!!」
「うんうん・・・取り敢えず片付けようか?」
謝るのもいいが、公衆の場で瓶の欠片をぶちまけているのは良くない。僕は、片付けるのを促した。当然僕も手伝う。
「すいません・・・」
片付け終わって改めて謝罪される。
「うん、別にいいんだけどね?大丈夫?怪我は無い?」
「いえそんな!!こちらこそ!!怪我はありませんか?」
正直な話、非戦闘区域である街の中では怪我、というかダメージを受ける事はない。
かと言って、当然のマナーなのでそういう会話がなされる。
「うん、こっちは大丈夫。そっちは?」
「大丈夫ですけど・・・あなたは服が」
「ん?あぁ、これも含めたつもりだったんだけどなぁ。どうせ渇くし。それより、そっちは大丈夫なの?このポーションお届け物だったんでしょ?」
「・・・あ、あああああっ!!そうでした!!他のはっ・・・全滅だ・・・」
がっくりと項垂れる彼女。そう、彼女だ。兎系の獣人で、足と耳と手首から先(と言っても指の関節は多い)が兎の様な物になっている。お届け物・・・と、そう称したのは彼女がギルド所属の配達員の出で立ちだったからだ。
「どどどどうしましょう?」
「それを僕に言われても・・・見た所、僕の持ってるポーションと同じ所のだから立て替える事も出来るけど・・・どうする?」
「お願いします!!」
うむ。なかなかに頭の回転の速い娘だ。大変よろしい。
「取り敢えず、ギルドに行こうか」
「え?なんでです?」
「立て替えて、逃げられたら嫌だから。大丈夫、これ位経費から落ちるさ」
「・・・ちっ」
「今舌打ちしたっ!?舌打ちしたよねっ!?」
「・・・してません」
うむ、なかなかに狡賢い娘だったようだ。
「お帰りリンコちゃん・・・ん?ワカさんじゃないか。どうしたんです?」
「ちょっと配達中の彼女とぶつかってしまいましてね。ポーションを浴びせられましたよ」
何故知り合いなのか、みたいな顔をしているな。甘かったな、僕はこんな恰好をしていてもかなりの古参なのだよ!!当然、ギルド職員の人とも付き合いが長い。ふむ、リンコと言うのかこの娘は。ちなみに受け答えをしているギルド職員の人は結構偉い人で名をカペラと言う。
「そうかい・・・リンコ、後で事務所に来い」
「・・・はい」
「それで?ポーションはどうしたんだ?リンコ」
「は、はい。それが・・・全滅です」
「何だって!?困ったな・・・今日中に届けてくれって言う依頼なのに」
「そこで僕ですよ。カペラさん」
「ん、まさか・・・」
「そう、そのまさかです」
「・・・まさかただでポーションを譲ってくれると言うのか!?」
「それはない」
「・・・ちっ」
あ、リンコちゃんの反応と同じだー。・・・じゃない。
「僕は迷惑を掛けられてるんですよ。タダな訳ないじゃないですか。そこはほら、お金が発生するわけですよ」
「ちっ、分かったよ。リンコ、お前の給料から差っ引いとくからな」
「え!?何でですか!?」
「そりゃ、当たり前だろうお前のミスなんだから」
「えぇ!?・・・うんうん、ってあなたのさっきの言葉は嘘だったんですか!?」
「うん・・・だってああでも言わないと逃げそうだったし。文字通り脱兎の如く」
「・・・くっ!」
「それで、幾らだ?」
「そうですね・・・低級ポーション一ダースですから・・・売値一つ50マネ・・・まぁ、迷惑料一本5マネで考えて、1320マネでいいですよ」
「そうらしいぞ、良かったなリンコ」
「くそぅ、結構高いよ、くそぅ」
「ほら、さっさと払え」
カペラに促され、1320マネを渋々差し出すリンコ。
「確かに、毎度あり。良かったね、僕で」
と追い打ちを掛けるのを忘れない。
「くそぅ、くそぅ」
リンコは苦渋に満ちた表情を変えない。これで、今後このような間違いを犯すことは無いだろう。
「しかし、良かったな。ぶつかった相手がワカで」
「・・・え?」
「変な奴だったらもっと要求されてたぞ」
「そうなんですか?」
「まぁ、お前はいつもその足で逃げてたから知らないだろうけどな。面倒な奴も居るもんだ。対応がめんどくさかったぜ」
「そう、だったんですか。・・・今まで、ありがとうございました」
「いいんだよ。その分、お前の給料から引いてるから」
「そうだったんですか・・・道理で」
またがっくりと項垂れるリンコ。てか、常習犯だったのか。可愛い顔してなかなか抜け目のない奴。まぁ、結局絞られている様だったが。
まぁ、取り敢えず問題が解決したので気になっていた事を聞くことにした。
「しかしカペルさんや」
「ん?」
「この子は正職員じゃないんで?」
「おう。一応冒険者なんだがな、その攻撃力の低さからなかなかパーティに入れて貰えないんで、ウチで使う事にした。そんで、ギルドの仕事任せるからには制服を、ってな」
「なるほど、だから社員証は無いんですか。一応、冒険者だから」
「そうだ」
そこまで聞いて、ふと、有ることを思いつく。
「そうだリンコちゃん」
「・・・なんですか?」
キッ、という効果音が付きそうな勢いで睨んでくるリンコちゃん。まぁ、面白い子だ。この子だったら馴染めるだろう。そう思い、僕は提案した。
「ウチで働かない?」
そう言う訳で、兎系腹黒少女リンコが加わりました。




