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ここ数日、頭痛でダウンしてました。
さて、図書館迷宮を出た僕たちは一旦ホームに戻る事にした。
ホームに戻った頃にはすっかりご飯時を過ぎていて、食後の団欒を楽しむか帰り支度を始めている客が殆どであった。
「すいません。急に抜けちゃって」
まずは急に抜け、ホールの手伝いを出来なかったことをアルマさんに謝る。
「いいのよ。あんなことがあったって言っても、水曜日は水曜日、明日は平日だしそこまで混んでなかったから。その前にワカだって別に今日はここ当番の日じゃ無かった訳だし」
「わかりました。ありがとうございます」
「それで?何か分かったのかしら?」
僕は図書館迷宮でアカシャより聞いたことを掻い摘んで話した。
「ふんふん、なるほどねー。竜かー竜って言ってもいっぱいいるものねー」
「そうなんですよ」
「でも、運営の人が言ってた『魔大陸』に入る為の条件ってのが、分かって良かったんじゃないの?」
「そうですね。結界の解除、もしくは潜り抜ける方法が必要だってことが分かったのは良かった」
「もしかして、結界を解除したら魔族が溢れてくるとか無いでしょうね」
「ははは・・・流石にそれは・・・」
「・・・・無いと言い切れないのが怖いわね」
「まぁ、取り敢えずは近場から周ってみますよ」
「という事は当分?」
「そうですね。当分はここに戻って来ませんね。まぁ、当番の日は来ますけど」
「分かったわ、ろってぃを引き摺り出してでも手伝わせるわ」
すまぬ、ろってぃ、君の犠牲は忘れない。
「ん、じゃあ僕はこれで。ガイは・・・これから当番か。んじゃ、また」
「おう、行って来い。なんか分かったら教えてくれや」
「行ってらっしゃい」
「行って来ます」
そう言って、僕はホームを後にした。
かと言って、すぐにドラゴン退治に向かう訳ではない。
と言うか、もう今日は無理だろう。今日使ったアイテムの補充をしなければいけないとかなんとか理由はあるが、何より時間が時間だ。就寝すべき時間が迫っている。健全な精神は健全な肉体に宿る、と言うように健全なゲームプレイは健全な肉体に宿る。つまり、健康が一番。そりゃあもちろん僕だって夜更かしする時はあるが、それは週末、特に金曜日と土曜日に限られる。次の日が休日だからだ。体を壊していては元も子も無い。睡眠は大事です。睡眠で思い出したが、SAにおいての所謂寝落ち対策というものはこの体、アバターとも言うそれを動かすのにも使っている脳波を検知する技術を使い、脳に疲労が溜まって来たら休憩する事を勧め、完全に寝た場合は離席扱いにするかログアウトするかこれをプレイヤー自身に決めさせるという物だ。この技術は快適な安眠をサポートするアプリケーションでも使われていて、脳はを完全にモニタリングする事でその人にあった快適な空間をVRで造り出し睡眠を促すという物であった。話が逸れた、元に戻そう。
つまり、今日する事はあとはアイテムの補充のみだという事だ。
アイテムの補充は重要だ。たかがアイテム、されどアイテムだ。と言うより、僕の場合装備が初心者用の物しか装備できないので、他の所、つまるところアイテムで補わなければならないのだ。回復ポーションに始まり、投げナイフ、特殊な物を上げればロープや紐、糸なんかも用意する。ロープは冒険する上で重要なアイテムだ。武器を括りつけ振り回すのもいいし、先にエサを付けて大型の水生モンスターを釣り上げるのにも使う、もちろん普通の使い方だってする。物を縛ったり木にかけて登ったり、何かと便利だ。紐や糸なんかは防具の修復に使ったりする。スキルも無しに出来るのかって?そりゃもちろん出来る。あくまで補正効果が無いと言うだけで、使えない訳ではない。SAは魔法やスキルはあれどかなり現実に則したゲームだ。現実に行える事はSAでも可能、だから現実で武道を習っている人はSAでも武道の技術を使えるし、SAで生まれた料理は現実である程度再現可能だ(ドラゴン肉は牛肉に近いらしい)。スキルはあくまでもその補正、料理であれば多少の失敗でも料理がまずくなるような事が無くなるし体力上昇効果が付く、剣術ではダメージ量の増加がそれにあたる。かと言って、SAのスキルが全て現実で再現可能かと言ったら、それは違う。魔法なんかもそうだし、現実に居ない種族も居る。そういう所がやはりゲームなのだと思わされるところだった。
さて、妙に現実味を帯びているこのSAにおいて、アイテムの効能こそが一番ファンタジー染みている。まずポーションだが、飲んでも塗ってもあるいは地面に叩きつけてもその効果は同じ、つまり使用者及びその対象者にその効果を及ぼす。よく考えるまでも無く、かなり不自然な現象だ。その質問に対する運営の回答がこうだった。
「ポーションは液体の様ですが、実は魔法が液化、物質化したものなのです。よって、使用者の意思に反応し、ポーションに含まれた魔法の効果を対象にだけ発揮するのです」
なるほど、と。僕は思ったのだが、まぁ全員が納得する回答ではなかった気もする。
何故こんな事を考えているかと言うと。それは僕の体に叩きつけられその中身を壮大にぶちまけたポーションと、目の前で物凄いスピードでお辞儀しまくっている人物がいたからだった。
ポーション等の液状回復系アイテムを詰めている瓶は使用しやすいように、割れやすく薄く作られていたり、細かな筋が入っていたりと工夫がなされています。
凝る人はこの瓶の製造から携わり、瓶によって種類分けをしていたりする。
それらの事により、同じポーションでも様々な個別化、細分化が進み、瓶一つをとっても需要が産まれている。
スキルによって大量生産が可能なので、ある種のブランドが産まれていたりします。
初心者はそういった繊細な細工等は出来ませんが、代わりに素材集めようの分厚く丈夫で安価な瓶を作る事で収入を得ます。そして、徐々にその腕を上げていき、そのデザイン等で顧客を付ける事が出来れば・・・と言うのが生産職プレイヤーの大体の流れ。コミュニティ能力が戦闘職よりも問われる場合があります。




