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魔王討伐・・・まさかこのゲームでそのワードを聞くとは思ってもみなかった。
「魔王討伐、今回のアップデートで新しく導入された『魔大陸』にある魔王城その奥深くに住まう魔王の討伐を皆様にはして頂きたい。無論、魔王城及び『魔大陸』には入る条件がありますが、それはネタバレになるので触れないでおきましょう。そして、最も重要な事が一つあります」
ゴクリ、と誰かが唾を飲んだ。いや、それは僕だったのかもしれない。
「ここでの死は・・・」
息が詰まる、それ以上言わないでくれ!!
「あくまでここでの死です。安心してください。冗談です。止めてください!物を投げないで下さい!!」
緊張が抜けたためか、様々な文句が飛び交う。それにしても、天満と言う人は自分が殺されているにもかかわらず、随分と余裕のある人だ。
「さて、気を取り直しまして。最も重要な事・・・それは3カ月以内にそれを成して欲しい、という事です」
期間限定のイベントという事か・・・いや、わざわざこんなことまでしているのだ、ただ期間が定められているという訳ではあるまい。
「・・・はい、良い質問ですね」
読まれた!?・・・違うらしい、何人かが手を挙げて話している。
「3カ月経ったら何があるのか?という質問ですが・・・今言った3カ月を過ぎた場合、この世界が消える事になります」
「!?」
それはつまり、今まで積み重ねてきた物が消えるという事だ。僕がこのゲームで遊んで残してきた記録や皆との思い出が消えてしまう、そんなのは嫌だ。
周りを見回すと僕と同じような反応をしているのが大多数だ。
「どういう事だ!?」
と、その様な声が多数上がる。
「私もそのような事が無いようにして欲しいそう思っています。私は誰かにこの世界を引き継いでもらう事を望んでいます。しかし、この世界を私利私欲の為に使おうとする者が、少なからず、居るのです。ですから、この世界に対する愛をお持ちであろう皆様方にこの世界を引き継いでいたく思い、このようなイベントを企画したのです」
「・・・・・・」
その言葉に皆は押し黙った。確かにそうだ。僕はこのゲーム、いやこの世界が好きだ。プレイヤーが居て、AIが居て、不思議な物事が溢れている。そこに人の温もりが感じられる。そんな世界が好きなのだ。ここを、先の言葉の様な人間に渡す訳にはいかない。絶対にだ。
「さて、他に質問はありますか?無いようですね。・・・さて、ちょっとだけネタバラしを」
そう言って言葉を区切る天満。すると天満のスーツの端々から煙が噴き出た。
煙が風に流されるとそこには立派な角を持った、荘厳なオジサンが居た。
・・・なるほど、ネタバラしってこれか。
「ふははははは!!脆弱な人間共よ!!この世界の滅亡を防ぎたくば、我の元へ来るがいい!!いつでもお主たちの挑戦を受けてやるぞ!!ふはははははは!!」
一通り笑い終わると、煙をまた吹き出し天満の姿に戻った。
「という事で、いつでも挑戦を受け付けております。そして、最後に今までプレイして頂いたあなたたちに、ささやかなプレゼントを・・・」
天満が手を挙げるとそこから光が溢れた。光は小さく散り散りになり四方八方へと飛んで行った。と思ったら、その小さな光の一つが僕の体に吸い込まれた。
「今あなたたちに差し上げたのは『勇者の種』というものです。あなたたちの体の中で育つ力です。一人一人の行動や成長に合わせ、育っていきます。勿論、枯れてしまう事もあります。ですが、それが芽をだし花開き実を結んだ暁には、とても大きな力を得ているでしょう」
新しい力ってこれの事か。この場に居なくてもこれは貰えたのかな?あとでアルマにでも聞いてみよう。
「では、健闘を祈ります」
そう言うと、天満は光の粒子となり、風に流されるようにして消えて行った。
その風の先に『魔大陸』があるのだろうか?
僕に魔王を倒すことは出来るだろうか?
そう、思った。




