25
感想でご指摘を受けた点を書き直す作業に入るため次回の更新が遅くなります.。更に、就職活動の為に遅くなります。恐らく次回更新は一か月程先になると思われます。
翌日、チャンピオンになれなかったものの、コロシアムで優勝した僕は一躍有名人になっていた。
いや、正確には違うらしい。アルマの言う所によると、どうも僕はちょくちょく噂には上がっていたものの、数名いる有名だが正体の分からない『正体不明』と呼ばれる者の一人として扱われていたようだ。
なんだそれ、と思ったがどうやらリーダーが情報を潰して回っていたらしい。リーダーは戦闘になるとこのクランの中では弱い方の部類だが、こと情報戦になるとその能力を発揮する。今回のコロシアムで僕の名前が結局出ることが無かったのもリーダーの力によるものだそうだ。
攻略サイトとかの類をあまり見る事の無い僕にとっては初耳も良い所だった。グランにウィスパーチャットで聞いたところ、「お前、自分の事なのに知らなかったのか?」と返されてしまった。
まぁそのアンノウンがノウンになったので、かなりそっちの方では荒れているらしい。と、自分のことながら他人行儀に思っている僕は多分自覚が足りないのだろう。
「しかしだ。リーダーは何を考えているんだろう?いや、何をするつもりだろう?か」
と、そう思うのは自然な事だ。今まで隠してきた僕をこうして表舞台に立たせるという事は、何か思惑があっての事だろう。そう考えはするが、てんで思いつかない。
「さあね」
と、興味もない風にアルマに返された。
「そんな事より、これから忙しくなるわね」
「・・・僕の優勝はそんな事なんだ」
「だって分かってたし」
「えー」
「えーじゃないわよ。チャンピオンに会える店として元々有名だったけどね、今回のワカの優勝で更に人が増えるでしょうね。ま、私としては収益が増えるのは嬉しいけど」
「うへー・・・そんな他人行儀な。じゃあ今師匠が居ないのって?」
「そりゃ他人だもの。そう、食材集め」
「じゃあ僕も・・・」
「だめ。ワカはここで私を手伝って」
「えー」
「えーじゃない。ほら、テーブル拭いて」
アルマは姉に通じる理不尽さを持っている。でも、姉と同じくそこまで不愉快でないのが不思議だ。
■■■■■
死ぬほど忙しい。それが第一の感想だった。忙しすぎて小学生並みの感想しか出てこない程だ。
「死ぬ!!死んでしまう!!」
「はいこれ5番テーブルに持って行って」
「スルー!?僕の心の叫びはスルー!?」
「これも追加で。後これは10番テーブルに」
「増えた!?」
「そりゃ増えるわよ時間が経てば。ほらこうしている間にも増えるわよ」
「はひぃ~」
ヒーコラ言いながら追加された皿も持ち、5番テーブルへと向かう。今日はメイドさんズもフル動員だ。ついでに引きこもり娘であるろってぃもメイド服を着せて引きずり出してきた。「これは着るものじゃない。見るものだ」との反論は無視した。ブラックな職場で働かされている僕はどうやら心までブラックになってしまったようだ。
「お、ありがとうなワカ。見てたぜ昨日のコロシアム。良くやったな」
「ありがとうございます」
ウチの常連はこういう気の良い人たちが多いので楽だが、試合を見てウチに来たような人はそうはいかない。
「ビール四つお待たせしました」
「おい、お前が昨日の奴だな。チート使ってるんじゃないだろうな?ああん?」
四人連れのパーティーの内の一人の男性がそう言ってきた。
「使ってる訳ないじゃないですか。使ってたら運営が止めるでしょう?」
正直、こういうのが多すぎて僕の対応も雑になってきている。
「・・・ぐ」
「ほら、だから言ったじゃない。無駄だって。ごめんなさいね?忙しいのに」
姉御肌な女性が男性を諭すように言う。
「いえ、慣れてますんで。・・・慣れましたんで」
「そう・・・気の毒ね」
「分かってくれる人が居るならそれでいいです」
「達観してるわね」
そりゃ達観もする。ホールを歩くたびに高確率でこういった輩に当たるのだから。
「いーや信じられないね。勝負しろ勝負!!」
「忙しいんで腕相撲でもいいですか?」
「おう、上等だ!!アニータ、合図してくれ!!」
「はいはい」
姉御肌な女性はアニータと言うらしい。アニータはやれやれと言った目で男性を見る。そして腕を組んだ僕と男性の手を包むようにして持つ。
「よーい・・・・・・はじめ!!」
掛け声とほぼ同時にスパァアアン!!子気味の良い音がホールに響いた。なんだ?と言う視線がこちらに集まり、常連はまたかと顔を戻し、他の者は殺伐とした表情をし、また他の者は見定めるような視線をしている。
「な・・・!?」
「もういいですか?いいですよね。忙しいんでこれで」
「え?ちょ、おい!!」
「まぁまぁまぁまぁ・・・悪かったわね。時間取らせて」
「いえ、ご注文は他に御座いますか?」
「そうねぇ、じゃあおススメメニューを頂戴、三つ・・・これ、あんたのおごりね」
「え!?何でだよ!?」
「みんなの貴重な食事の時間を取ってるんだからこれぐらい当然でしょ?この人にも迷惑かけてるんだし」
ね?と言う風にアニータはこちらを見てくる。そうだそうだ!!と此方も目で訴えかける。後の二人もマンガのような肉に齧り付きながらコクコクと頷く。あ、双子なんだ。
「ちっ、分かったよ。俺の負けだ」
「じゃあそういう事で。お願いしますねウェイターさん?」
その目は獲物を見つけた肉食獣のような眼だった。恐るべし、肉食系女子。




