24 閑話~SAと出会った日~
僕とSAの出会いは他人から見るとそう劇的ではなかっただろう。だが、僕にとってはそうでも無い。なんせそれから五年はやっているのだから。
VRにも慣れ、文字通りの意味でネットサーフィン(ネット専門サーフショップのVRサーフ体験)をしていると、その広告が僕の目に飛び込んできた。
『誰でも強くなれる!!』
『VRMMO「Second Age」 クローズドβテスター募集!!』
キャッチコピーとして、何かが明確に欠けているはずのそれは僕の頭に異様にこびり付いた。ともすると、この物足りなさこそがこの広告の効果なのかもしれないと思うほどだった。
結果その広告に引っかかった僕はサーフ体験を中止し早速SAを調べた。そのVRHM(Virtual Reality Home Map 今で言うHPの事、VRである事を生かし、企業であれば社の雰囲気を出したり商品を陳列したりする。単にホームと言う場合もある)は外国にある図書館のような歴史を感じせせる風貌をした場所であった。
『ようこそSecond Ageのホームへ!!』
真ん中に陣取るカウンターには受付嬢|(中の人が居るタイプだろう、ホームでは中の人が居る場合が多い)が居る。周りの本棚には『世界』『理』『種族』といった板が下げられていた。僕は『世界』の本を一冊取り、開いた。
すると、本から溢れ出た光と共に風景が切り替わった。VRムービーだ。VR技術が一般にも深く浸透してきている現在、テレビや映画、ネット動画と言った既存の映像配信方法に変わる新しい方式として新たに出来た技術だ。周囲360度の映像と音声、まるでそこに自分が本当に居るかのような体験が出来るのだ。
草原と青い空、遠くには巨大な防壁を構えた都市が見える。すると映像は空高く飛び上がり、風に乗るようにして街の方へと飛んで行く。
眼下の草原では羊のようなモンスターの群れが走り、それを囲むように狼型のモンスターが走っている。砂利で整えられた道には六本足の馬が引く馬車が物凄いスピードで走り、恐竜のような二足歩行のトカゲに騎乗する人影も居る。
馬車に続く様にして門を抜ける。石畳で舗装された広い道、多くの人や物が行き交い非常に賑わっている。中には獣のような耳を生やした者も居れば、体の一部が機械ので出来たものも居る。多種多様な種族、人種が居れどその顔はどれも充実感に満ち溢れたいい表情をしている。一部、表情が分かり辛い者|(トカゲ顔であったり、兜で隠れていたりしていて分からない)も居るが。
街の中心部であると思われる噴水のある広場をグルリと一回りすると映像は再び空高く飛び上がる。僕を連れていた風は破裂するようにして様々な方角へと飛び去った。この街で得た活力の塊のような光を乗せて。
次々と切り替わる映像、砂漠や雪山、火山、ジャングル、大海原、天空に浮かぶ大陸や地底国、機械であふれる国。様々な環境とそこで暮らす人々の営み。風はそれらの所を通り抜け、更に光を集める。そしてその光は深い深い闇が覆う大陸へと向かう・・・。
そこで映像は終わった。テロップも何もない、ただその世界だけを映した映像だったが僕は心を打たれた。理由など無い。ただの感動がそこにあった。
僕は本を閉じるとカウンターへと向かった。他の本棚を見る事もせず。
「ベータテスターの応募を申し込みたいんですけど・・・」
本でも映画でもゲームでも、一部を見て、「絶対にこれは見なくて(やらなく)は!!」って思う時がありますよね。




