23 閑話~VRが届いた日~
「あ、はい。どうも、ありがとうございます。・・・行ったか?行ったな。・・・いよっしゃー!!」
宅配業者が去るのを確認し、扉を閉じた僕は叫んだ。家には今、僕しか居ないから家族に冷たい目で見られる心配もない。心置きなく叫べる。
「きったーきったーきたきたきったー」
最高にハイになったテンションで妙な歌を口ずさむ。テンションは更に上がる事だろう。
部屋に重く大きな箱を運び込み、封を解く。そこに入っているのはヘッドギア型のVR端末とそれを動かすための黒い箱型の機械だ。
通称ブラックボックス、様々な機密が詰まっていて特殊な資格が無いと開くことすらできないとても高価な機械だ。と、言っても今は頑張れば(それでも結構な値段だ。バイク程度はする。)手に届く範囲になったと言えるだろう。懸賞のプレゼントなんかでも見かけるようになった。このブラックボックスと端末、二つが揃ってやっとVRが動かせるのだ。
まぁ一家に一台あれば何とかなる。端末をブラックボックス一台に付き4機繋ぐことが出来るからだ。後から端子穴を増設してもいい。まぁその分お金は掛かるが。
その端末とブラックボックスがウチに何故来たのか?別に対した理由じゃない、母が暇つぶしにやっていた数独の懸賞に応募した景品だった。ウチには懸賞で当たった物が幾つかある。皿であったり、掃除機であったりするが、大半はただスペースを占領する置物になっていたりするが・・・それはまぁいい。多くなり過ぎたらリサイクルショップやネットオークションに売ればいいのだ。
「ふんふん」
取扱説明書を見ながらパソコンとブラックボックスを接続して行く。コードが多くてちょっとしたパズルの様だ。難解だが今はそれすらも楽しい。
ようやく接続と設定を終えた頃には家族も帰ってきていた。
「あ、終わった?ご飯よ」
「ん」
食卓の自分の席に座る。
「接続とか色々終わったのか?」
と父。
「私たちには全く分からないからねー助かるわー」
と母。
「もう色々できるの?」
と姉。
「うん。お姉ちゃんも手伝ってくれたらよかったのに」
「嫌よ。私そういうの苦手だもの」
「でも分かるでしょ?」
「分かるけど嫌よ。めんどくさいもの」
姉はいつでも理不尽だ。
「はぁ、今度プリンね」
「まぁそれ位ならいいわよ」
「え、じゃあ弁天堂のプリンで」
弁天堂のプリンは一つ400円もする超高級プリンだ。
「それは無理」
「えーじゃあお姉ちゃんだけ使えないようにするー」
「はいはい、分かった分かった。いいわよ。いいじゃない弁天堂。買ってあげるわよ」
ふ、勝った。
「でも、私の使いたいソフトはすぐに使えるようにしといてよね」
「分かってるよ」
というかもうしてある。ちなみに、もう既に家族分の端末は用意している。父のはこの箱に入っていた端末で良しとされた。母のは子供やVR初心者向けの簡単な物。姉のはデザイン重視でアクセサリーのような物。僕のは性能重視の最新機種。父はこういう時いつも貧乏くじを引くことになる。
食事を終え、僕は自分の端末をブラックボックスに接続する。パソコンの画面で端末が接続されたのを確認する。VR端末は寝た姿勢、あるいは椅子に座った姿勢で使用する。生憎、ウチの今にはソファなんて洒落たものは無いので、座布団を引き布団代わりにする。
かつてのロボット刑事の様なヘルメットにバイザーが付いたようなそれを被る。折った座布団を枕にし寝転ぶ。これで準備は完了だ。
「じゃあ行って来るね」
「はいはーい。楽しんでらっしゃい」
母の声を背中に受け、僕はVRの世界へと飛び込んだ。
少し続きます。




