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『さぁさぁさぁ!!本選準決勝第一試合です!!宵闇の暗黒騎士対ワカ!!どちらも予選、本選第一試合を勝ち抜いて来た猛者です!!』
『宵闇の暗黒騎士は闇属性魔法と黒く艶消しが施された刀を扱う剣士、対してワカは大量のアイテムを消費して戦うトリッキーな選手です』
そう言った所で、実況者席に向かって僕の反対側にいる人物がその黒く艶消しの施された刀を向けこう言った。
「そこの語り部よ、我は宵闇の暗黒騎士などと言う名前ではない。我は、ダークネスナイトオブトワイライトだ。何度も言わせるんじゃない」
更にその切っ先を僕の方に向け言う。
「悪に染まりし穢れた魂よ。我が刀、烏丸の錆びにしてくれようぞ!!」
「は、はぁ」
あいたたたたた。戦う前からこちらにダメージを与えてくるとは、なかなかやるな。実況が気を取り直して再開する。
『言動はアレですが実力は折り紙つきです!!そして事実上の宣戦布告!!』
さっきまで僕にブーイングを垂れていた人たちも微妙な顔をしている。分かる、分かるよその気持ち。しかし、それと僕は今から戦わなければいけないのだ。面倒くさい。
■■■■■
『では!!これよりスタートです!!』
3・・・
2・・・
1・・・
Fight!!
「闇の炎よ穢れた魂を焼き尽くせ『ダークバーニング』!!」
黒い色をした、現実ではまずありえない炎がダークネスナイト(以下略)の手より放たれる。闇属性の魔法だ。闇属性、並びに光属性の魔法はレアな『スキル』だ。
レアと言っても取得方法は分かっているので、そこまでレアでもない。種族として元々適正を持っているものも居るし、修行の末手に入れることも出来る。
魔族や不死者、吸血鬼と言った種族は闇属性と親和性が高く、下手すれば最初から使う事が出来る場合もある。吸血鬼ならば初めから使えると思った方が良いくらいだ。ちなみに、光属性の魔法の簡単な手に入れ方は神官になり光の神に仕える事だ。要は、光の神官系の依頼をクリアせよという事だ。
それはさて置き、『ダークバーニング』は中々に厄介だ。扇状に広がるそれは、そのもののダメージこそ高くないが、効果範囲が広く火炎系の継続ダメージもある。
だからこそ僕は真ん中を突っ切る事にした。アツイ!!チリチリと服が燃えているのを感じる。
「んなっ!?」
火炎の中を突っ切って来た僕にダーク(以下略)は驚愕の表情を浮かべる。未だその手からは黒い炎が放出されている。つまり片手が完全にお留守だという事だ。
ナイフを投げ強制的に魔法の行使を終了させる。
「痛ぅっ!!」
継続ダメージはまだ続いている。視界の端に映るHPバーは時間経過と共に削られていっている。水を被るか転げまわって消火しない限り、時間に余裕はない。
「ふふふ・・・ふふふははははははっ!!!!とうとう本性を現したな悪魔め!!漆黒の炎ではなく、私が手ずから引導を渡してくれようぞ!!」
悪魔ねぇ、どっちかって言うとそのセリフはこっちのセリフじゃないかな?見た目的に。
「まぁいいけど」
と、呟きながらダ(以下略)に斬りかかる。僕の剣に合わせるようにして振られる刀、インパクトの直前僕は体を逆回転させる。
掛かるはずだった力が無く、(以下略)の刀は振り切られる。敵を斬った感触も、硬い物に当たった感触も無い。その事で自分が決定的な隙を作ってしまった事に(略)は気付く。
「ぐっ!!」
僕は(略)の刀を躱し、遠心力を得た拳でアッパー気味に(略)の腹を殴る。この距離まで詰めてしまえば刀は届かない。僕は剣を捨て更に腹を殴る。
「うぐっ!!かはっ!!」
突き放そうと手が出されたのに合わせ後ろに下がる。
「何故だ!?何故剣を持たない!?」
「冒険者だから」
勝つためには何でも使うのが冒険者だろう。
「これだから蛮族は」
もう、訳分からんコイツ!!剣を薙ぐようにして横に振るってくる。それを僕はバトルハンマーで叩き落とす。
ここで初心者職の特性を話そう、初心者職は端的に言うと全て使える職業だ。数多にある武器、職業の基本が詰まっている職業だ。色々な物に触れ今後進む道を決める。そんな職業なのだ。
だから、それぞれの職業の様な武器ダメージ補正は無いが、武器を使用する際のシステムによる補助がある。僕ら素人でも、ある程度使う事が出来るようになるのだ。
「がっ!?貴様よくも!!」
横に振っていた所に掛かる、急な縦の力。保持できるはずもなく、刀を取り落す(略)。再び僕は間合いに入り、ハンマーを振り上げる。
「だぶっ!!」
(略)の体が斜めに吹き飛ぶ。どうやら舌を噛んだようだ。飛んで行く(略)追い打ちで、槍を投げつける。『投擲』により強化されたそれは(略)の体を貫いた。それでも威力は死ぬ事無く、壁に(略)ごと突き刺さったところで動きを止めた。
「べはぁっ!!ま、まだだ・・・」
まだHPは残っているらしい、かなりタフだ。という事はこいつは魔族ではなく、不死者か吸血鬼だったという事だろう。まぁ、どっちでもいい。僕はゆっくりと落ちた剣を拾う。
「我が・・・悪に・・・まけ・・・どぉぉおお!!」
「煩い、黙れ悪魔」
僕はただ剣を突き刺した。




