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今後ともよろしくお願いします。
控室に向かう通路、そこに僕を待ち構えてる人が居た。
「こんにちは。そしてお疲れ様・・・粉まみれだね」
急所やひじや肩といった所を部分的に守るように作られた防具を身につけた男性だ。
「よくも僕の弟を倒してくれたね」
弟・・・そう言われれば、メット君にどことなく似てなくもない。
「えぇと、すいません?」
「あ、いやいや!!言い方が悪かった。君には感謝したかったんだよ」
恨み言の一つでも言われるのかと思ったがどうもそうではないらしい。
「あぁ申し遅れました。私、メットの兄でヘルと言います」
姿勢を正しお辞儀してくる。ヘルとメットでヘルメットか。どうでもいいな。ヘル兄さんはスピード型らしく猫系の獣人族だ。男に猫耳・・・と思うだろうが、それが意外と似合っている。
「どうも、私は・・・」
「ワカさんですよね。あなたの事は存じ上げております。レストランの方でも度々お見かけしました」
「は、はぁ」
「それで、感謝と言うのは・・・話し方、戻しますね。感謝というのは、メットはああ見えてガキなんだ」
「まぁそれは、分かります」
「うん。それにあの形、あの強さ、調子に乗ってたんだ。なまじ強くて、負ける事なんか殆ど無い。俺よりも強くなっちまった。ますます調子に乗るわな。それを今回、ワカさんが叩きのめしてくれた。その事に感謝したかったんだ」
確かにメット君は強かった。キレてからなんか正直普段あったら逃げるレベルだ。大鬼と言う種族、レアな種族は成長補正も高い。兄と同時期に始めたとしても、兄より強くなる事など自明の理だ。兄弟は産まれた時から比べられる事を宿命付けられている。ましてや、年の離れた兄弟なんかじゃ特にそうだ。兄が優しくても、自分が兄の事が好きでも、親にそのつもりが無くても、少なからずコンプレックスを抱える事になる。その兄にゲームとはいえ勝てたのだ。幼いメット君が調子に乗らない方がおかしい。
「今回コロシアム出場を進めたのは俺なんだ。予選突破した時と、ワカさんの初心者装備を見たときは正直駄目かもと思ったが、いやはや外見に騙されちゃいけないね。ともかく、弟を倒してくれてありがとう・・・お、おーいメット!!こっちだ!!」
敗者用通路から出て来たメット君にヘル兄さんが声を掛ける。メット君は僕の姿を捉え少し表情を強張らせるが、兄に呼ばれているので来ない訳にはいかない。
「あ、ありがとうございました」
ぎこちないながらも僕に頭を下げるメット君。いい子だ。
「お、よく言えたなー!!偉いぞ、メット!!」
そう言いつつ、ヘル兄さんはメット君の頭を撫でようとして手が空中を彷徨い、手が届かずに結局背中を撫でる。
「こちらこそありがとうメット君。とはいえ、今思えばちょっとやり過ぎたかな、と思ってる。ごめんね?」
「ううん。いい、たたかいだから」
「そう。良かった」
やはりいい子だ。普段は素直な子なんだろう。僕は手を差しだす。メット君は僕の手を見て首を傾げる。
「なに?」
「君と僕は戦ったんだ。そしたらもう、僕らは友達だ。戦友というやつだ」
「せんゆう・・・」
言葉を噛み締めるようにして呟くメット君。
「そう、戦友だ」
「戦友!!」
僕の言葉に強く頷き返し、手を握るメット君。手がミシミシといって痛い。だが、これくらい我慢せねば示しがつかない。誤魔化すように腕をブンブンと振る。よほど嬉しかったのか、メット君もブンブンと腕を振る。腕の長さと筋力ステータスも相まって、僕の体が振り回される。
「ちょ、うわっ、まって!!酔う!!ヘルさん、止めて!!メット君を止めて!!」
「無理だ。さっき言っただろう?」
絶対に違う!!顔が笑っている。やはり、口でああ言ってたものの、弟がコテンパンにされた事を根に持ってたのか。
解放されてグッタリする僕に、僕だけに聞こえる声で、ヘルが語りかけてくる。
「ざまぁ見ろ」
「お前!!」
「ん?どうしたの兄さん、ワカさん?」
「いや、何も」
「何もないよメット君」
「なー?」
「ねー?」
コイツ!!でも、まぁいいかこれぐらい。今度店に来たとき変な物を入れるぐらいで。
「なになに?ひみつのお話とかずるい!!僕もいれて!!」
「そうだ。メット君」
慌てて話を逸らす。
「なに?」
「もっと強くなりたい?」
「うん!!」
「よしよし、いい返事だ。ならウチに来ると良いよ。僕より強いお爺さんが居てね。そのお爺さんは教えたがりだから」
「ホント!?」
「うん」
「じゃあ、お兄さんと今度一緒に来なよ。なんか奢るから」
「えっ!?いいの!?」
「ホントか!?」
「お前は別」
「なんでだ!!」
ヘルメット兄弟と雑談する事で次の試合まで時間を潰した。
地味に仕返しの機会を作る主人公でした。




