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「あぁぁああああっ!!」
雄叫びを上げながらメットが左腕を地面に叩き付ける。ボゴンッ!!と地面が凹んだかと思うと、大岩が地面からせりあがって来た。土属性の魔法だろう。メットは腕を振りかぶり、力の限り大岩を殴りつける。砕けた岩の破片が散弾の様に僕に襲い掛かる。先程までは魔法発動までにタイムラグがあったがそれが無くなっている。怒りにより直感的に魔法を使っているのか?そうだとするとかなりの才能だ。これを使いこなせるようになれば強くなることは間違いないだろう。だが僕はそれにまじめに付き合う事もせず回り込むようにして回避する。しかし、読まれていたのかメットが僕に向かって走って来ている。僕は袋を取出しメットに向かって投げる。先程の事もあって警戒しているのか、メットにたどり着く前にそれは岩の礫によって破壊される。中のモノが煙の様に広がる。
「っ!?煙幕!?」
僕とメットの間に白い煙が立ち込める。
「メット君、粉じん爆発って知ってる?」
「マンガとかでよく見るアレの事?まさか!?」
「そう、可燃性の粉末と空気が一定の割合で混ざったところに火種があると爆発するってあれさ・・・」
メットは急いで白い煙の中より退散する。
「!?どこだ!?」
しかし、メットと同じように範囲の外に居るはずの僕の姿は見えない。
「あれって、殆ど起こり得ないんだよ。偶然にはね。ましてや屋外じゃ」
「何だって!?」
「ダメだよ、マンガとか簡単に信じちゃ」
当然だ。僕は中に居るのだから。投げたのは小麦粉だが、正真正銘煙幕として使用した。そして、僕にはメットの位置が丸分かり。巨体が煙の様に舞う粉の中を高速で移動したのだ。見えるようになった風の流れを追えばすぐに分かる。僕は剣を投げ、それと同時に駆ける。
突如飛んできた剣と僕に、メットは驚きながらも対応する。剣を弾き飛ばし、先程までよりも数段速くなっている僕に、負傷した右腕も扱い対応する。
観客はその戦闘に息を飲む。飛び散る閃光、吹きすさぶ暴風、唸る剛腕、鳴り響く地鳴り、災害の様なそれを繰り出す大鬼と、それにしがみつく様にして剣を振るう初心者。そして、誰かが呟く。
「あ、剣が・・・」
次の瞬間、メットの胸に剣が突き立った。
「な、なぁっ!!!?」
さて、小麦粉煙幕の中から僕の取った行動をもう少しだけ詳しく言おう。僕は剣を投げた。二本だ。剣を同時に投げられるのは二本までだが、まず一本を上空に投げた。そして、もう一本を投げると同時に駆け始めた。上空に投げたそれは、着弾までにかなりのタイムラグが生じる。それまでの時間稼ぎが先ほどのメットとの死闘だ。煙幕は上空に投げた剣に気付かれないためのブラフだ。
「う、わ、あああ!?あああああっ!?」
混乱に陥っているメットは出鱈目に腕を振るう。が、胸に突き刺さった剣はガリガリとHPを削っていく。当然、僕がそんな隙を見逃すはずもなく、安全な背後に回り込み『スラッシュ』を叩き込んだ。
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『しょ、勝者・・・ワカ!!』
一瞬の静寂の後、会場は怒号に包まれた。
「おい!!なんだ今のは!!」
「卑怯じゃない!!」
「許されるのか!!」
「なんだあいつは!!!」
ブーイングの雨あられだ。正直、僕もやり過ぎたかなと思っている。ううむ、どうも戦闘となると歯止めが効かなくなる。一体どうしたものか。
『皆さんお静かに!!今の試合に不正はありません!!』
「審議だろ、審議!!」
「そうよ!!反則よあんなの!!」
『ルールによってアイテムの使用は禁止されておりません!!』
かと言って、全員がブーイングをしている訳でもないらしい。だからと言って少なくないブーイングに晒され続けるのも精神衛生上良くない。僕は、そそくさと会場を後にした。その背に、罵声を浴びながら。
皆大好き粉じん爆発の巻。まぁ、爆発はしなかったけど。




