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本気を出す、と言ったメットは本当に速かった。装備が薄いのを速さでカバーするタイプの様だ。だが違和感がある。『オーラ』を使っていないのだ。『オーラ』はスキルレベルが上がると攻撃にオーラを乗せることが出来るようになる。しかし、さっきから繰り出される拳にはオーラは乗っていない。どういう事だ?拳を躱し、手首にナイフを突き立てる。
「っ!!」
腕が刺さったナイフを振り落すように腕が大きく振るわれる。それを後ろに飛んで躱す。
「むぅ、お兄さん結構強いね」
「それほどでも」
「あんまり使いたくなかったけど・・・」
と再び飛び込んでくるメット。その右腕は腰溜めにされている。・・・なんだ?波動か?右腕を誤魔化すように左腕が振るわれる。難なく避け、剣で腕を斬りつける。
「奥の手その一・・・」
そう呟いたメットの右手には火炎の球が握られている。
「ファイヤーパンチ!!」
「あつっ!?」
ボディブローの様に繰り出されるそれを躱す。なんだ今の技は?ファイヤーパンチなどと言う『スキル』は存在しない。それはつまりオリジナルの技だという事だ。SAは自由度が非常に高い、師匠が現実にある武術をSAで再現しているように、自分の考えた技を『スキル』などを使い使用する事も可能だ。マンガの技を再現し戦う人だっている。メットが今使った技はそれと同じものだという事だ。使用した『スキル』は魔法系の初期に覚える『ファイヤーボール』だろう。本来の使用法、発射して敵にぶつけるというものではなく、直接持って敵を殴るという使い方をしたという事か。
「まだまだっ!!」
つまり、それは発射可能だという事だ。火球が発射される。剣を防御に回そうとするが、駄目だ避けきれない!!
「ぐうぅっ!!」
火球を腹に受け堪らず吹っ飛ぶ。HPは二割削られてしまった。中々に高威力だ。初級の『スキル』でも、MPを込める事で威力が上がる。右手の溜めの動作はこのためだったのか。ゴロゴロと転がることで勢いを殺し、そのまま立ち上がる。
「ふふーん、どう?」
「魔剣士じゃなくて、魔拳士ってことね」
だから、『オーラ』を使用してこなかった・・・いや、使用できなかったのか。大鬼は魔力のステータスは上がりにくいだから、それを補うための『スキル』に回しているためだ。暴風の様な拳に、超至近距離で放たれる魔法。普通なら絶対に相手にしたくない相手だ。ミットが得意げに言う。
「降参する?」
「絶対にしないね!!」
だが、降参はしない。降参の文字は僕の辞書に・・・あるが、せっかくこんな所に来たんだ。やれるだけやってやる。
「なら、奥の手その二!!ツイスターパンチ!!」
小型の竜巻がメットの右腕を覆う。小さいが、その威力は伊達じゃないだろう。メットが再び僕の所に駆けてくる。
「じゃあ僕も真似をしよう・・・奥の手その一!!秘密のボトル!!」
瓶を取り出す。飲みはしない、自分の足元に叩きつける。割れたボトルから透明の液体が地面に広がる。
「何今の?」
「教えないよ!!更にマッチ!!」
火の付いたマッチを落として急いでその場から飛び退る。
「マッチ?・・・うわぁああっ!?」
メットの右腕には炎が張り付いていた。
「熱い!?何!?何をしたの!?アツイッ!!」
「・・・アルコールって知ってる?」
炎に包まれた腕を振り回すメットに問いかける。腕を振り回しているが、酸素を与える結果となり炎は更に広がる。
「知ってるよそれ位!!お酒とかに入ってるやつでしょ!?」
「そう。なら、よく燃えるのは知ってるよね?」
「じゃあさっきの瓶って!!」
「そう、アルコールの入った瓶だよ」
気化したアルコールが竜巻を纏うメットの右腕に吸い込まれたという訳だ。そこにマッチの火、別に投げなくたって良かった。気化したアルコールを辿ってメットの腕にまで至ったから。
「酷いよ・・・!!」
「僕も君の本気に動かされただけだよ」
「っ!!」
剣を構えなおす。メットは体に広がろうとする炎を水を発生させ消した。蒸気がメットを包み込む。少し時間が経ち、メットの姿が見え始める。その表情は怒りに満ちていた。
「もう怒った!!」
「これは戦いだからね。そういう事もあるさ」
「絶っっっっ対にやっつける!!奥の手その三っ!!サンダーパンチ!!!!!」
そう言って放たれる雷。僕はナイフを連なるようにして投げる。雷はナイフに誘導されるようにして彼方に飛んで行った。僕は剣をメットに投げつけて言う。
「さぁ、勉強の時間だ!!!」
主人公が悪役っぽくなっていますが、仕様です。戦闘の際は見境が無くなります。
最後一文の「剣を投げつけて言う」も、誤字ではありません。実際に投げてます。
誤字修正
(誤)使用した『スキル』は魔法系の初期に覚える『ファイヤーボール』がか。
(正)使用した『スキル』は魔法系の初期に覚える『ファイヤーボール』だろう。




